第14話 決勝
「大江さん。すごかったです。」
「おう!兄ちゃん!ありがとよ!」
「いいものが見れました。わざわざ時間を待っていただいて。ありがとうございます。」
「そうだな!いい勝負をしような!」
「はい。」
「須佐野、今の戦いをみてどうだ?勝てそうか?」
「そりゃあもちろん、勝てるよ。」
「しかし、あの人はあの速さの矢を避けているんだぞ。そんな人になかなか有効な攻撃ができるとは思えないが。」
「わからなかったのか?あの人は矢を避けていたんじゃないよ。」
「どういうことだ?」
「まあ、結果的に矢を避けてはいるんだけどあの人がやってるのは軌道をずらすってこと。賀喜さんは普段、というかさっきの試合だって狙いを外すことはほとんどない。それは弓を引く動作の再現性に由来する。毎回同じフォームでやるからこそ正確性が増す。しかしそれは相手からすればフォームで軌道までわかってしまうってことなんだ。さらに今回は賀喜さんを煽って怒らせた。動きが単調になったんだ。それかわかってしまえばもう当たることはない。もちろん、わかってもそれをさばききる身のこなしがあってこそだけどね。」
「なるほど。」
「そういうふうに考えると弓はこのトーナメントに不向きな武器だと言える。」
「相性がわるいのか。」
「その点僕は日本刀。負けるわけがないよ。」
虚実は自信満々に意気込む。
「浜田、もう次決勝やで。」
「早いな。」
「早いなて、全然見てへんやん。」
「見てるよ。」
「そう?うーん。まあ、空手が上がってくるとは思わんかったな。」
「そらそうやな。」
「普通に考えたら刀のほうが強いけど、これわからんなあ。」
「空手の人も相当強いからな。」
コロッセオに熱気。ヒトが失いかけたものが湧く。
東京コロッセオ決勝
日本刀代表須佐野虚実 vs 空手道代表大江藤一郎
「見合ってええええええ、始めいいいいいいっ!!」
ドパァン!
「兄ちゃん、やっとだな。」
「なぜ僕にこだわってたんですか?」
「それは日本刀に俺が張り合ってるからだ。空手も日本刀も土俵は同じ近接。その中で最強は日本刀と言われる。それを空手でぶちのめしたいんだよ。」
「そうですか。探りをいれる暇はありません。最初から全力で行きます。」
ストン…。
ザッ。
両者構える。
バッ!!!
虚実が斬りかかる。
シャッ。
シャッ。シャッ。シャッ。
大江は間合いを間違えないよう後ろに躱す。
ドッ、シャッ。
地面を蹴って大江が方向転換し、加速。
ボッ。
キンッ。
バチィンッッッ!
とっさに放った突きを跳ね除け、顎めがけた蹴りが完全に入った。
虚実は脳震盪をおこす。
グラ……
ザシッ。
「危なかった。」
「倒れないのか。やるな。」
「虚を使ってるから。変な力が入らず、衝撃を流せる。」
「便利だな。」
ストン…。
「またそれか。」
そう言うと大江はてくてく歩いて虚実に向かっていった。
「ここまでくれば5分以上だ。」
大江は殺気を出さないまま、懐まで近づくことで攻撃されずに間合いを詰めた。
シャッ。
慌てて虚実が刀を振ろうとするが間に合わない。
ドッッ。ドッッ。ドンッッ!!!
重たそうな攻撃が入った。
フラフラッ。
タタタッ。
しかし虚実は立ったままだ。
「その技をどうにかしねえとちっともダメージが入らねえな。」
虚実は焦っていた。虚を使っていたのに大江が近づいてきたときに反応できず、一方的に攻撃を受けてしまった。
「ハアッッ!」
ドッッ ドッッ ドッッ!!!!
大江の攻撃は絶え間なく虚実を襲う。
「クソッ。」
集中力を保つのは簡単なことではない。そろそろ『虚』が時間切れだ。
「スウッーー。ハァーーー。」虚実が深呼吸をする。
ストン…。
「よし。来い。」
「その状態でも喋れるんだな。」
「シャアッッッ!!!!」大江がまた仕掛ける。
「ここだッッッ!!」
ズドンッッッッッ!!!!
ザクッ。
大江の左手首が宙に舞った。




