第13話 当たらねえ
ピコン。ピコン。ピコン。
「あー。起きたね。喋らないでよ。」
―SICU。柊は?とりあえず指さしてみるか。
「ん?なに?ああ、相手の人?」
―そうそう。
手を握って合図をする。
「先に回復してもうでてったよ。」
―うそ?
「君は肺には穴空いてたんだよね。あの人は内蔵が傷ついてなくて、大丈夫だったんだよ。」
―いいなぁっ!俺も早くでたい!
「あと1時間くらいだから、寝ときな。」
―くそー。
ピー。ピー。ピー。
「はい起きていいよ。」
―うーーーーん。
起き上がって伸びをする。
「ありがとうございました。」
「はい。」
「須佐野さーん!起きましたか?ちょっと急いでこっちまで来てくださーい!」
「え?どうしたんですか?」
「いいから、いいから。」
そうして連れてこられたのは観客席の1番前だった。
「おぉー!兄ちゃん!起きたかぁ!」
「大江さん!?」
「兄ちゃんがぁ!起きるまで!待ってもらってたんだよ!」
「どういうことですか?」
「だって決勝でやるんだからみときたいだろ?」
「それはそうですけど。」
「須佐野、あの人お前に見てもらいたくて試合を伸ばしてもらってたんだよ。」
「そうなの?ありがたいけど」
大江のおかげで試合が見れるらしい。
決勝トーナメントセミファイナル第2試合
弓代表賀喜炎 vs 空手道代表大江藤一郎
「見合ってええええええ、始めいいいいい!」
ドパァン!
「弓の兄ちゃん。またして悪かった。」大江は会釈をした。
「あなた、さっき決勝で彼とあたると言っていましたが、それは私を倒さないとできませんよ。そして私はあなたに負けません。」
「兄ちゃんちょっと勘違いしてないか?」
「なにがですか?」
「俺が兄ちゃんに勝てないってのはかなりの勘違いじゃねえのか?どうやったって負ける気はしないんだけどな。」
「なるほど。あなたはそう思うんですね。」
「そうだ。」
「わかりました。」
ギリッ
賀喜が弓を引く。
ピュッ
大江がさっと身をかわす。
「さっきのデカいのだって避けられたんだ。俺が避けれないわけないだろ。」
ピュッ。ピュッ。
「当たらねえよ。」
「もしよければ教えていただけませんか?なぜあなたが私の矢を避けられるのか。先程の男は私は当てようとせずにいましたが、今度はちゃんと狙いました。私の矢は時速200キロを超えます。ヒトの反応速度ではなかなか追いつかないと思いますが。」
「わからねえのか?馬鹿だな兄ちゃん。それでその頭良さそうな喋り方してて恥ずかしくねえのか?」
そう言うと大江はおもむろに歩き始めた。賀喜との距離はおよそ5メートル。
「ここでも怖くないぜ。」
「知りませんよ。」
ピュッ。ピュッ。ピュッ。
飛んできた矢はかすりもしない。
「ほらな。」
チッ!
賀喜が舌打ちをする。
「分かるか?勝てねえんだよ、兄ちゃん。」
ギリッ。
ビュッ。ビュッ。ビュッ。
歯を食いしばって矢を放つ。
それをすべてかわされる。
「なんで当たらない。」
「下手なんじゃねえの?」
「そんなことはない。私は狙った場所にすべて打っている。」
「狙いがズレてなきゃ外さねえだろ。」
「ズレていない!」
「そうか?」
ビュッ。ビュッ。ビュッ。
賀喜はまた矢を放つ。
またすべてかわされる。
しかし今度は今までと違う。大江が賀喜の目の前まで来ている。矢が苦手とする近接の領域に入っている。
「なに!?」
「へっ!まだまだだな。兄ちゃん。」
ドッッ。ドッッ。ドドドッッッ。
グラ。
大江の目にも止まらない攻撃が賀喜に襲いかかった。もちろんそれを防ぐ事などできず、賀喜はダウンした。
「すまんな。」
ひとこと言って大江は立ち去った。決着である。
「決着ううううう!!!勝者空手道代表大江ええええええ!!!」




