表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/15

タイトル未定2026/07/02 02:46

 携帯のアラームでマスターは目が覚め、起き出した。

 寝室を出ると、洗面台で歯を磨いている大門を見かけた。

 ノースリーブに短パンのマスターに対して、大門はティーシャツジーパン姿だった。

 髪の毛も整っていて、寝癖などなかった。

 マスターはリビングに行き、台所に入って行った。

 大門は既に朝食をとったのか、大門が使った食器が洗ってあり、食器カゴの中に置いてあった。

 マスターは、冷蔵庫の扉を開けた。

 少し前なら、大門はちょっとしたマスターの朝食を作って、冷蔵庫の中に入れていた。

 しかし今は、冷蔵庫に大した食材は入っていなかった。

 マスターは、冷蔵庫から牛乳を取り出した。

 

 洗面所から大門が、リビングに入って来た。

「おはようございます」

「おはよう」

 マスターは台所に立ったまま、牛乳を飲んでいた。

 少し前の大門は、立ったまま牛乳を飲むマスターを注意していた。

 しかし今は、挨拶をしながらマスターをチラリと見ただけで、何も言わなかった。

 リビングのソファーに座ってテレビをつけ、朝の報道番組を観ていた。

 すぐ学校に行けるように、足元にはランドセルと水筒と横断バックが置いてあった。

 リビングで立ったまま牛乳を飲んでいたマスターは、会話一つしない大門を淋しい目で見つめていた。

 

 朝だけでは、なかった。

 夜、マスターが診療所から戻ってくると、大門は既に日課のジョギングを終えていた。

「お帰りなさい」

「ただいま。あれっ、もうジョギングに行ってきたんですか?」

「うん」

 大門はそう言っただけで、浴室に行ってしまった。


 翌日、診療所の昼休み。

 マスターと看護師長の紫野緑は、行きつけの和食の店「和み」の店内のテーブル席で向き合っていた。

 マスターは、冷たい出汁が入った魚の茶漬け。

 緑は対照的に、暖かい魚の茶漬けを食べていた。

 マスターは茶漬けを食べながら、それまでの大門の行動を緑に話していた。

「こんな感じで、急にボクを避けるようになったんです。何か、理由があるのかなぁ」

「大門君、今何年生?」

「五年生です」

「五年生!そんなに、大きくなったんだ」

 緑が大門に初めて出会ったのは、大門がまだ園児の時だった。

 その大門が五年生に成長し、緑は驚いていた。

「大門君、五年生かぁ。これは、遂に親離れかなぁ」

「親離れ……」

「先生も、子離れをする時が来たんじゃないんですか?」

「わかっては、いるんですけどね」

「淋しい?」

「淋しいですよ。急に、相手にされなくなったんだから」

「先生と大門君は、いつも一緒だったもんね」


 マスターと緑が「和み」の店で話をしていた頃大門は、小学校の昼休み運動場でクラスの男子数名とサッカーをやっていた。

 大門はゴールキーパーをやっていたが、気がついた時にはボールを入れられていた。

 大門の友人の游太が、心配して走ってきた。

「大門君、どうしたの?」

「ちょっと、抜ける」

 そう言った大門は、ゴールから離れた。

 游太は一緒にサッカーをやっていたクラスメイトの方に行き、大門と自分が抜けることを伝え、游太は大門の側に行った。

 大門は、運動場の砂場の隅に座っていた。

 游太が大門の隣に座ると、大門は游太に聞いてきた。

「游太君は、お父さんと話をする?」

「最近はあんまりしないけど、でも話はするよ」

「そっかぁ」

「大門君は、お父さんと話をしないの?」

「うん……あんまり喋らない」

「えぇ~大門君のお父さんって、あんなにかっこよくて、やさしいのに」

 羨ましげに言う游太を見て、大門は胸の中でつぶやいた。

 ……かっこよくて、やさしいお父さんが、(一緒に暮らしている大門です)なんて言う?

 そこは(息子の大門です)って言うんじゃないの?

 あの一言で大門は、マスターに違和感を感じていた。

 ……七海は、本当に僕のお父さんなの?


 「和み」の店で昼食を済ませたマスターと緑は、緑が運転する車で、診療所に戻った。

 その頃休憩室でお昼のお弁当を食べ終えた亜美が、休憩室から出てきた。

 マスターを見かけると「先生」と言いながら、マスターの方へ行こうとした。


 診療所に戻ったマスターと緑は、待合室の長ベンチに並んで座っていた。

 マスターは、相変わらず落ち込んでいた。

「いつまで、落ち込んでいるの」

「落ち込みますよ……」

 言いながらマスターは、緑の肩にもたれた。

「親離れしないと、大門君成長しないわよ」

「親離れ……か。そうかなぁ。避けられているだけのような感じだけど」

 すっかり自信をなくしているマスターの頭を、緑はなぐさめるようにやさしく撫でた。


 休憩室から出てきた亜美はマスターに声をかけようとしたが、マスターが緑の肩にもたれ、マスターの頭をなでている緑を目撃した。

 亜美は、固まったようにその場から動けなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ