タイトル未定2026/07/02 02:42
日課の夜のジョギングを終えたマスターと大門は、大門が先に風呂に入り、マスターが後から風呂に入った。
マスターが風呂から上がりリビングに入って行くと、大門はソファーに座って眠っていた。
マスターは手を伸ばし、大門の頭を軽く押した。
その反動で大門の身体が横に動き、大門は目を覚ました。
「……あっ、寝ちゃった」
「起きましたか?」
「ずっと、七海を待っていたのに。ねぇ、流花お姉ちゃんとたきさんからラインが来た?」
ジョギングに行く前に、大門はマスターに「たきさんに、レシピのお礼をしたい。もっと料理を教わりたい。流花お姉ちゃんに会いたい」と言った。
マスターはたきこに、大門がたきこに会いたがっていることや、五月の連休中の昼間bar「ジェシカ」で、会ってくれませんか?と言う、ラインを送った。
その時、流花にも誘いのラインを送った。
大門はその返事を、待ちわびていた。
マスターはリビングから、台所に行った。
食卓のテーブルの上には、携帯が置きっぱなしになっていた。
マスターは携帯を掴むと、ラインを開いた。
「大門、たきさんから返事が来ていました」
「本当?」
大門はソファーから起き出し、マスターがいる食卓のテーブルの方へ行った。
マスターは携帯を大門に渡し、大門はたきこが送ったラインを読んだ。
読み終えた大門は、声を上げた。
「一緒に料理を作りましょう。会えるのを楽しみに、しています……だって!ねぇ、たきさんって、どんな人?」
「おまちさんの後輩だから、年は六十過ぎかな。やさしくて、おだやかな方ですよ」
マスターの言葉を聞いた大門は、安心をした表情になった。
その時大門が手にしていた、マスターの携帯のラインの着信音が鳴った。
「七海!流花お姉ちゃんからだ!」
「なんて、書いてありますか?」
「資格の勉強をしたいので、その日は行けません。誘ってくれたのに、ごめんなさい。……なんだぁ。流花お姉ちゃん、来ないんだ。流花お姉ちゃんに、会えると思ったのに」
「仕方がありませんね。せっかくの連休だから、やりたいことがたくさんあるんでしょう」
「連休だから、七海の病院だって休みでしょ。七海は、流花お姉ちゃんに会えなくて平気?」
「病院は休みだけど、やりたいことがあるし、店の整理もしたいし。ボクも、やりたいことがたくさんあります」
睨みつけるように、大門はマスターを見つめていた。
まるで、マスターを見透かしていたように。
無垢な大門に、嘘はつけない。
マスターは懺悔をするように、大門の頭をそっと撫でながら本音を言った。
「流花に会えなくて、ボクも淋しいです」
流花は自分の部屋のテーブルの前に座っていた。
テーブルの上には、一級建築士の資格を取るテキストや過去問題集やノートがあった。
流花の手の中には携帯があり、マスターに送ったばかりのラインが開いたままだった。
(五月連休、会いませんか?)
マスターの誘いを、流花は断ってしまった。
……マスターに、会えるのに……。
流花はマスターより、田中と野田との誘いを、選んでいた。




