第2話 森の太鼓
森の中は薄暗く、茜色の空はほとんど見えなくなっていた。
枝葉が擦れ合い、風の音がどこか遠くから響く。太鼓の音は次第に大きくなり、地面まで震わせるほどだ。
「嫌な音だな……」
仲間が眉をひそめる。彼は普段あまり表情を変えないが、こういうときはわずかに苛立ちが滲む。
「祭りじゃないよね」
「だったらこんな時間にやらない」
短い言葉を交わしながら、足を止めずに進む。
足元の落ち葉がかさりと音を立てるたび、心臓の鼓動が早くなる。
やがて木々が途切れ、小さな広場に出た。
その中央では、黒い仮面をつけた者たちが円陣を組み、太鼓を叩いていた。
足元には奇妙な文様が描かれている。血のように赤い線が、地面を這うように広がっていた。
「儀式か……」
仲間が低くつぶやく。
そのとき、仮面の一人がこちらを振り返った。
目が合った瞬間、背筋に冷たいものが走る。
彼らは一斉に立ち上がり、腰から刀を抜いた。刃は黒く、まるで闇そのものを凝縮したように見えた。
「来るぞ!」
仲間が叫び、紫と金の刃を抜き放つ。金の稲妻が走り、広場を一瞬照らす。
私も瑠璃色と桃色の刀を抜き、前に出た。
次の瞬間、仮面の者たちが一斉に飛びかかってくる。
青と桃、紫と金、そして闇の黒。
広場の真ん中で、三色の光と影がぶつかり合った。
火花が散るたび、太鼓の音は狂ったように速くなる。
まるで森全体が、戦いを望んでいるかのようだった——。




