第七話 あれ、俺やばくない?
今回も少し長めになっています。
俺はオオヤマダに、知っていることを教えあうことを提案された。
この提案は俺にとって非常に都合の良いものだった。だから、当然、俺は二つ返事で了承した。
しかし、この選択は間違いだったのかもしれない。
「じゃあ、それで決まりだな!」
「おう、よろしく頼む! で、何を教えてくれるんだ?」
現状ではわからないことが多すぎる。少しでも情報は得たいが、まずは能力というものについて知るのが先決だろう。そもそも、能力の話から始まったわけだしな。それに、現状において一番の謎、そして違いともいえるからな。
「ちょっと、アオキ、あなた教えてもらうだけみたいな言い方をしているけど教えあうんだからね。もちろん、分かっているのよね?」
正直言って、教えてもらおうとばかり思っていたからそんなことは考えていなかった。が、話の腰を折るべきではないだろう。
「ああ、もちろんだ! 西宮さん!」
「あら、ずいぶん良い返事ね。何か隠し事があるのかと思っていたわ。じゃあ、まずは質問からいいかしら」
「いや、それはダメです」とはさすがに言えず、どうしようかと考えていたのだが、どうやら、西宮さんは沈黙は肯定とみなすタイプであったらしく、質問を始めてしまった。
「あなたは教えあいをしたいみたいだから、能力のことは言いたくないわけじゃないのよね。まずはあなたから改めてあなたの能力について教えてもらおうかしら」
お、おお、終わった……
それに関しては何を聞かれても、知らないとしか言いようがないんだよなあ。まず、俺のこの世界に対する知識は初めてプレイするRPG並みだしな……。
むしろ、俺が聞きたいんだがな……。
いや、これならいけるのでは?
「そういえばさ、西宮さんってゲームやる?」
「誤魔化そうとしているのがバレバレだわ。もう少しましな話題を考えてちょうだい。やっぱり、あなたには後ろめたい何かがあるのね。本当のことを自分からいえない以上、あなたを背中を預けて共に戦う仲間として、このパーティに置いておくことはできないわ」
オオヤマダ、頼む助けてくれ! そう思い、オオヤマダに視線を送ったが、オオヤマダは西宮さんが怖いのか何も言わなかった。そして、なぜか俺の目を見てなぜか微笑んでいた。おい、オオヤマダ、このチキンめ!
「い、いや、待ってくださいよ。僕は本当に何も知らないんですよ。」
俺も大概チキンだった。
「今度はわかりやすいウソね。この学校に入学した時点で――」
「待って! アオキ君は、きっと本当に何も知らないんだよ!」
何も知らないっていうのは何か引っ掛かるものがあるが、いいぞ! 言ってやってくれ! ヤマモトさん、いや、シズカちゃん! 君はチキンじゃない、ネコだ!
「どうしてそう言い切れるの、ヤマモトさん」
「それは……それは、その……」
シズカちゃん……? なんでそこで詰まってるの? ほら、俺っていいところめっちゃあるじゃん。例えば、例えば……あれ? 俺、今のところいいところ全くなくないか?
「理由はないのね、だったら――」
「ア、アオキ君は私に付き合ってくれた! ひどいこと言っても、アオキ君から謝ってくれた! アオキ君はわるいひとじゃないよ……」
シズカちゃん……
「おーい、みんな鑑定石に着いたぞー」
オオヤマダ、お前いいところで邪魔しやがって、間が悪い奴だ。というかお前、怖くて何も言えないチキンじゃなくて、ただのハトだったのかよ!
「そう、ヤマモトさんの言いたいことはわかったわ。あなたがそんなに信頼しているなら、アオキが自分から何も言わなかったことはもういいわ。どうせ、今から何を隠していたのかはっきりするわけだしね。さあ、鑑定しましょう。当然、アオキからだけどね」
いやあ、鑑定するのはいいんですけどね。
「あのう、本当に申し訳ないんですけど、鑑定石ってどうやって使うんですか?」
「そんなことまで知らないふりして何がしたいのよ……はあ、ヤマモトさん、あなたが教えてあげて。私はもう疲れたわ」
西宮は俺にはもううんざりといった感じだったが、それも仕方ないことだ。一般的に考えて、小中学校で習うようなことも知らず、高校は専門の科にもかかわらずその分野のことも一ミリも知らないっていうんだからそれこそ無理がある。そんな奴は、記憶喪失のふりをしたい中二病か、本当に後ろめたいことがあるやつくらいだ。
「わかった!」
「じゃあ、シズカちゃん頼む」
「シズカちゃん? アオキって結構積極的なんだな」
「いや、俺のことをこのパーティに引き留めてくれようとしたからな、お前と違って。もう一度言うぞ、お前と違って」
「……? よくわからないけど、そうなのか?」
間接的にオオヤマダを批判してやったつもりだったんだが、全く効いた様子がない。というか理解している様子すらない。やっぱり、人って性格は変えられても、頭の構造までは変えられないんだな。
「で、鑑定石ってどうやって使うんだ?」
「えっとね、まず鑑定石に手をかざして」
鑑定石はタブレット型で、名前のわりにハイテクな見た目をしている。俺は鑑定石にまっすぐ手をかざした。
「おう、こんな感じか?」
「うん、そうしたら鑑定石に魔力を込めようとしてみて。それでできるはずだから」
魔力を込める、というのが分からないが魔力を込めようと思えばいけるだろうか。とりあえず、やってみるか。魔力魔力魔力……
「どうだ、できてるか?」
「うん! できてるよ! みんなのこと呼んでくるからちょっと待っててね!」
なんかできた。俺ってもしかして魔法に適正あったりする? なんだかワクワクしてきたんだが。
「さすがに、魔力の込め方が分からないとかヤマモトさんに言わなかったわよね?」
俺の調子に乗った様子を見たからか、西宮は少しイラついているように見えた。
「まさか、さすがにそんなことは聞いてないですよ。ハハハ……」
やばい、怖くてため口で話せない。実は聞こうと思ってましたとか、怖すぎて言えない。まあ、何はともあれこの結果をもって俺の白は証明された、はず……。これでやっと、能力に関する情報やこの世界の知識難化を教えてくれるようになるだろう。長かったぜ。で、俺の能力って何なんだ?
「じゃあ、さっそく見させてもらうわよ」
「なにかしら、初めて見る能力ね」
「そうだね、私も初めて見た!」
「そうだな……漢字で表記されている能力か、俺はほかにそんな能力知らないぞ」
この反応はもしかして、俺って結構すごい能力を持ってたりするの?
「えっと、みんなはどんな能力を持っているんだ?」
「ああ、そうだな。じゃあ、まず俺から言わせてもらうぞ。俺の能力は固有能力で『肉壁』だ。能力の名前からわかる通り、俺はこのパーティでは前衛を担当する予定だ。あと、一応パーティリーダーも務めているから、よろしく」
うん、オオヤマダさすがだ。いろいろと突っ込みどころが多いな。
まず、お前の能力も明らかに漢字じゃねえか! 俺の喜びを返せ! だから、お前が漢字の能力は初めて見ると言ったときに、他のメンバーが驚いていたのかよ。俺の能力に驚いたわけじゃなかったのかよ!
あと、お前その能力名でパーティリーダーなのかよ! 普通そういう扱いをされるのは、そのパーティの中で最も地位が低くて、使い捨てにされるようなやつじゃないのか、少なくともパーティリーダーではない。俺のラノベ知識だとそうだぞ!
「そうか、オオヤマダ、いい能力だな。でも、本当にお前がパーティリーダーなのか? あと固有能力ってなんだ?」
「お前するどいな、確かに名義上では俺がパーティリーダーだが、実質的には西宮がパーティリーダーだ」
そういう意味でいったわけではないのだが、どうやら本当にオオヤマダの役割は肉壁らしい。そうか、可哀そうにな、俺はお前のことを忘れないぞ。
「で、固有能力っていうのはな、世界で一人しか持たない能力だ。まあ、正確に言うと現時点で一件しか確認されていない能力だな。先人が所有していた固有能力だったらラッキーって感じだ」
つまり、オオヤマダは死ぬまで『肉壁』ってことになるのか……。ドンマイ。
「そうか、悪いな、つらいことを言わせてしまって」
「……? 別につらくはないが? まあ、いいか、じゃあ次は西宮の能力か。西宮、頼む」
「ええ、私の能力は『雷魔法』よ。私はこのパーティでは後衛で魔法使いとして主に火力を担当するわ。ちなみに、私はオオヤマダが言った通りだけど、戦闘中に指示を出したり、パーティのまとめ役をしたりするからなるべく隠し事はしないでほしいわ」
なるほど、だから俺の能力を聞きたがったのか。西宮って怖いやつだと思ってたけど、実は責任感が強いだけだったんだな。
雷魔法って言うからには魔法だよな、氷結魔法に雷魔法、定番といえば定番ではあるが入学式の件も含めて人間があんな力を発揮できるというのは、なかなかに信じがたいものがある。
「分かった、善処する」
「善処って、あなた……」
西宮には申し訳ないが、本当に知らないことばかりだから、確約はできないんだよな。
「で、俺から一つ言いたいことがあるんだが、なんかパーティの役割のバランス悪くないか?」
「どうしてかしら? 確かに中衛はまだいないけど、タンクに火力に回復役って、むしろバランスが取れているんじゃないかしら」
回復役? 誰が? オオヤマダはタンクだし、西宮は火力担当、シズカちゃんは魔王とか言ってたし、明らかに攻撃魔法関係だろ。じゃあ、残るは俺か?
「じゃあ、俺って回復系の能力なのか?」
「多分だけど、違うわよ。あなたは全く別系統の能力なんじゃないかしら」
「そうすると、誰が回復系の能力を持っているんだ?」
「ヤマモトさんよ」
「え?」
自分のことを魔王とか言っていたあの子が? 回復系の能力? いや、確かにめっちゃいい子ではあったけど、魔王だよ魔王。
「そうだよ、アオキ君。私の能力は『光魔法』だよ」
マジか、いや魔王と光魔法って明らかに対極的だろ。本当に大丈夫なのか、そんなに設定が甘くて。
「いやいや、魔王様要素ゼロじゃん! むしろ、勇者とか聖女とかじゃないの?」
「も、もう、そのことは忘れてよ! あの時のことは反省してるんだから、あんまりいじめないでよ!」
「そういうつもりはなかったんだけど、なんかごめん」
あれは確かに黒歴史的な感じだもんな、そりゃそうだ。というか、自己紹介のとき魔王とか言ってる奴いなかったよな?
いや、そんなことよりも話題を変えないとなあ、オオヤマダ、頼む!
「まあ、それはそれとして、この能力ってなんだと思う?」
さすがだオオヤマダ、お前は頭の構造までは変えられなかったみたいだが、本当にいいやつになったよ。
「まだ何の能力か確定的なことは言えないけど『式典』という能力の名前からして、礼儀とかそういうものにかかわってくる能力なんじゃないかしら。どうなの、アオキ?」
「いや、知らん。そもそも、どうやって能力って使うんだ?」
『式典』という能力が何なのかということ以前に、能力というもの自体が何なのかいまいち分からない。むしろ、能力の使い方から一般常識に至るまで講義していただいたうえで、一緒に能力を検証していきたいぐらいだ。
「はあ、もういいわ。私はもうあなたには多くを求めないわ。どうせ、明日からの授業でダンジョンに入るのだし、その時に全部教えてあげるわ」
その時の西宮の言葉には怒りがこもっているように思えた、いや、間違いなくこもっていた。
俺、これからどうなっちゃうんだろう。
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