第六話:因果の開示と不敬の発見
王都グランへと続く街道は、見渡す限りのなだらかな丘陵地帯を貫いていた。
東方伯爵家が提供した特別仕立ての大型馬車は、サスペンション代わりに組み込まれた極上の車軸構造と、容子がアパートから持ち込んで座席に敷き詰めた低反発クッションのおかげで、舗装されていない石畳の街道の上でも驚くほど快適な乗り心地を保っていた。
車内には、ほのかにラベンダーの精油の香りが漂っている。
ガタゴトと規則的な揺れが続く中、容子はノートパソコンのキーボードを軽快に叩く手を止め、向かいのシートに座る宥子へ冷ややかな視線を向けた。
「そういえば、宥子」
「ふぇ? なに、容子?」
膝の上で『紅白』と『赤白』を交互に撫で回していた宥子が、のんびりとした声を上げた。
「いまさら基本的なことを確認するけれど……あんた、そもそも何で最初のあの日、路地裏で異世界サイエスに飛ばされたの?」
「えっ? ああ……それ言ってなかったっけ?」
「聞いてないわよ。あの時はとにかく生き延びることと兵站の確保で手一杯だったからね。あんたは『急に空間の穴に落ちた』としか言ってなかったはずよ」
容子はノートパソコンの画面を閉じ、腕を組んで背もたれに深く腰掛けた。
「私たちは日本とサイエスを二十四倍の時間倍率で行き来できる固有スキル『境界渡り』を得て、現代兵器とクラフト品で莫大な資金と地位を手に入れた。……でも、すべての現象には必ず『起因』と『物理的あるいは魔術的な法則』が存在するの。あんたがサイエスに引きずり込まれた根本的な原因は何なの?」
宥子は白蛇を撫でる手を止め、少し気まずそうに指先で頬を掻いた。
「えーっとね……実は、サイエスに来てすぐの時に、頭の中に直接変な声が響いてたんだよね……」
「変な声?」
「うん。『我は超越なる天上の理、このサイエスを統べる絶対なる唯一神アーラマンユなり!』みたいな、すっごく上から目線の、ちょっと安っぽいエコーがかかった声」
「……続発しなさい」
容子の眉間にしわが寄った。
「でね、その声が言うには……『異界の乙女よ、世界の歪みを正し、我に仇なす邪神を討伐するため、汝を勇者として召喚せしめた! 感謝し、我に仕えるのだ!』……って言ってたの」
「……は?」
容子の声のトーンが一段低くなった。
「『勇者召喚』……? あんたみたいな、料理を作らせればスパイスカレーで妹を致死寸前まで追い込み、原付の整備もロクにできない手作り石鹸オタクのポンコツを、勇者として召喚したっていうの?」
「ちょっと容子!? ポンコツは余計でしょ! 料理は失敗しただけだし!」
「失敗のレベルが致死量なのよ。……で、その自称『唯一神アーラマンユ』とやらは、召喚の儀式とやらで何をしたの?」
宥子は遠い目をして、当時の記憶を思い出すように天井を見上げた。
「えっとね、向こうの神様――アーラマンユがサイエスで『勇者召喚の超絶大魔法』ってのを発動させたらしいんだけど……その時、たまたま私が原付でドラッグストアに向かってて、近くの路地裏を走ってたんだよね」
「ええ」
「で、私の家系ってさ……琴陵の『縁結び』の血筋じゃない?」
「それがどうかしたの?」
「私の持ってる超絶な『運:300(極)』と、琴陵の『あらゆる幸運と因縁を引き寄せる体質』が、アーラマンユの大雑把すぎる召喚魔法のターゲット精度とバチーンッ!って強力に結びついちゃったらしくて……」
宥子は両手をポンと叩いた。
「本来ならサイエスの召喚陣の中にだけ現れるはずだった空間の亀裂が、私の『縁結びの力』に引き寄せられて、日本のドラッグストア前の路地裏までニュキッと伸びてきて……私と原付ごと、まるごとズボッと吸い込んじゃったんだって!」
「……」
容子は無言のまま、静かにメガネのブリッジを指で押し上げた。
「ちょっと待ちなさい。整理するわよ」
容子の声から完全に感情が消え去り、極度に冷徹な「理系思考モード」へと切り替わった。
「つまり、その自称『唯一神アーラマンユ』とやらは――」
徹底した安全管理も対象の事前スクリーニングも行わず、大雑把で粗悪な『次元穿孔魔法』を発動させた。
その結果、たまたま強い霊的因縁(縁結び)を持っていた日本の民間人である宥子を、危険な原付バイクごと異世界の危険地帯(オークの徘徊する森)へ力ずくで巻き込んだ。
しかも、まともな初期装備も初期資金も身の安全の保障も与えず、ただレベル1のまま放り出し、『感謝して戦え』と身勝手な命令を下した。
「……そういうことかしら?」
「うん、大体そんな感じ! あとね、『召喚してやったのだから我が与えし天命に感謝せよ(笑)』みたいなノリで、すごくドヤ顔っぽい声だったよ!」
ポン、と容子の頭の中で何かが切れる音がした。
「……ふざけるのも大概にしなさいよ」
「ひっ! 容子、目が……目がマジの殺し屋の目になってるよ!?」
容子はゆっくりと立ち上がり、馬車の小さな窓からサイエスの青空を見上げた。
「一歩間違えれば、あんたは原付ごとオークの群れに引き裂かれて死んでいたのよ? 日本の私の元へ二度と戻れず、身元不明のまま見知らぬ異世界の森で骨になっていたかもしれないのよ?」
容子の拳が、ミシリと音を立てて握りしめられた。
「勝手に人の身体と人生を巻き込んでおいて『勇者召喚(笑)』? 『感謝せよ』? ……笑わせないで。次元の境界を跨ぐ技術の安全性すら確保できない欠欠魔法を垂れ流す奴が、『神』を名乗るなんて片腹痛いわ」
「よ、容子……?」
「決めたわ」
容子は静かに振り返り、殺気すら孕んだ冷徹な笑みを浮かべた。
「その『自称神アーラマンユ』……いずれ必ず潰す」
「つ……潰す!? 神様を!?」
「当たり前でしょ。原因を作った元凶を放置しておいたら、いつまた不完全な次元穿孔で私たちの生活や兵站が脅かされるかわかったもんじゃないわ。ただし――相手は世界そのものを管理気取りしている超次元生命体か、大がかりな神話級アーラマンユ結界の本体よ。無策で突っ込むような無謀な真似はしないわ」
容子は腰の『HK416C・魔導極』のグリップを力強く叩いた。
「まずは十分な資金、技術、兵力、そして『構造解析』のレベルを極限まで引き上げる。焦る必要はないわ。向こう側(日本)との時間の猶予は二十四倍……こちらでじっくりと数年分のお金と装備と情報を溜め込みながら、逃げ場のない完璧な包囲網を組み上げてから……引導を渡してやるわ」
宥子はひえぇぇ……と小さく悲鳴を上げ、白蛇たちとともにシートの隅へと縮こまった。
「自称神様……ごめんなさい。うちの妹、理系で合理主義者だけど、家族のことになると一番容赦ない悪魔になっちゃうんだ……」
グラン・ルシア王国の王都グラン到着と広がる「不敬」の影
馬車が丘を越えると、目の前に果てしない地平線を埋め尽くす巨大な城塞都市が姿を現した。
――異世界サイエス最大の強国、『グラン・ルシア王国』の王都・グラン。
ウルフェンの砦町など比較にならないほどの広大な石造りの二重城壁。中央には天を突くように聳え立つ白亜の王城と、青く輝く『大錬金術タワー』の尖塔が陽光を浴びて煌めいていた。
「す、すごーい……! ウルフェンより十倍くらい大きいよ、容子!」
「規模の大きさは認めるわ。……でも、人口密度が高いということは、それだけ衛生環境の悪化と、消費財の需要が爆発的だということね」
容子は車内で手早く持ち出し用のダッフルバッグを整理した。
王都グランの正門には、東方伯爵家(シルフィード公爵家)の紋章を掲げた馬車をひと目見ようと、大勢の兵士や町民が集まっていた。
「公爵家のお馬車だ!」「ウルフェンから例の『奇跡の調合師』様が来られたぞ!」という歓声が周囲から巻き起こる。
馬車は人込みをかき分け、王都グランの超高級住宅街に建つ『シルフィード公爵邸』へとスムーズに滑り込んだ。
出迎えたのは、エレノア令嬢の父親であり、この国の軍政と財政を牛耳る重要人物――シルフィード公爵本人だった。
「おお……! お前たちが、愛娘エレノアの命を救い、我が家に至高の栄誉をもたらしてくれた琴陵容子殿と、宥子殿か!」
公爵は鷲鼻の威厳ある顔立ちを崩し、容子と宥子の手を熱心に握りしめた。
「エレノアから送られてきた『精霊の涙(ハーブ美容液ミスト)』と『極上ハーブ石鹸』……あれは実に素晴らしかった! 宮廷の妃殿下方や王妃様までもが『もっと寄越せ』と大騒ぎでな! ひと瓶に金貨二十枚の値がついているほどだ!」
金貨二十枚――日本円にして約二百万円。
原価数百円の手作り化粧水と、日本から持ち込んだポータブルアランビックで精製したハーブの試供品が、グラン・ルシア王国の社交界で恐ろしいほどのバブルを引き起こしていたのだ。
「公爵閣下、お褒めいただき光栄ですわ」
容子は完璧な貴族風の挨拶をこなしつつ、冷静に本題へと切り込んだ。
「ですが、私たちが王都グランへ参りましたのは、単に化粧水を売りさばくためだけではありません」
「む……? と言うと?」
「私たちは、王都の『大錬金術タワー』および『最高峰の魔導工房』との直接取引、そして王都の地下に眠ると言われる『古代遺物の調査権』を求めております」
公爵は驚いたように眉を上げた。
「古代遺物の調査権……? 容子殿、お前たちは商人であり調合師ではないのか?」
「商人であり、調合師であり――そして『理を解析する機工師』ですわ」
公爵は深く頷き、快く全面的な支援を約束した。
しかし、応接室を出て公爵邸の広大な庭園を散策していた時、容子は王都グランのあちこちに異様な「異変」が存在することに気づいた。
街の至る所、そして公爵邸の庭園の片隅にまで、見たこともない黒い石で造られた不気味な「祠」が設置されていたのだ。
その祠に刻まれているのは、グラン・ルシア王国の神々ではなく――日本の最高神である『天照大神』の神紋と、歪んだ古代文字だった。
「……何かしら、これ」
容子は立ち止まり、不気味な祠に手をかざして『構造解析』を起動させた。
視界に表示された青いデータラインが、即座に異常な数値を弾き出す。
【解析対象:不敬の逆転結界(衰弱の祠)】
【構造:日本の主神『天照大神』を疑似的に祀り上げ、敬う形を取りながら、その尊厳と神威を吸い上げることで、日本側の神威・霊力をサイエス側へ不当にバイパス・ドレインする強奪回路】
【効果:日本の神力を継続的に削ぎ落とし、時間をかけてじわじわと天照大神を衰弱させながら、自称神アーラマンユの神格エネルギーへと変換・吸収する】
「……なるほどね」
容子の目が、氷のように冷たく冷え切った。
「そういうことか。自称神アーラマンユ……奴は日本の最高神である『天照大神』を勝手に祀り上げ、敬うフリをしてその神力をじわじわと削ぎ、自分のエネルギーとして吸い取って追い詰めるという、陰湿極まりない手法を取っているのね」
宥子も祠を見て、白蛇たちを抱きしめながら身震いした。
「えぇっ!? 天照様をお祀りして……神力を吸い取ってるの!? なんでそんな回りくどい嫌がらせみたいなことするの……!?」
「直接攻撃すれば日本の神威の苛烈な反撃を受けるからよ。だから『祀る』という形式を取って結界を貼り、時間をかけて日本の神社や神力を『じわじわと弱体化させる構造』を作り上げたのね。……卑劣で、何より非常に不愉快な手法だわ」
容子は静かに拳を握り締め、胸の中で長期的な撃滅計画のデータフォルダを作成した。
「日本の神様の力を削いで自分の糧にする……? どこまでも不敬で図々しい自称神ね。……構造は完全に理解したわ。アーラマンユ、今はまだあんたの足元で力を蓄えてあげる。……だけど、この『神力吸い上げ回路』の解析は今日から始めるわ。いずれあんたを倒すその時、この回路を逆流させてあんたの神格ごと焼き切る最高の武器にしてやるわ」
『神の使徒』の警告と、長期戦略の幕開け
その日の夜。
シルフィード公爵邸の豪華な客間を与えられた容子と宥子は、翌日からの本格的な王都でのビジネス展開に向けて準備を進めていた。
部屋の壁には、日本から持ち込んだポータブルプロジェクターによって、王都グランの構造図と不敬の祠のネットワークマップが鮮やかに投影されている。
「……容子、王都中にあの不敬な祠が数百個もあるよ」
「ええ。アーラマンユは王都全体を巨大な『神力吸い上げ陣』に仕立て上げ、天照大神の力を数年、数十年単位でじわじわと削ぎながら、自分を唯一神として君臨させようとしているわ」
容子がHK416Cのメカボックスを調整しようとした、その時だった。
フッと、客室内の蝋燭の火が一斉に消え去った。
「……!? 敵襲!?」
容子は即座に右手を腰の『パルス・ブレイカー』へ伸ばし、低姿勢をとった。
部屋の窓枠の上に、月光を浴びて一人の人物が静かに舞い降りていた。
全身を純白のシルクの聖衣で包み、顔には黄金の仮面を着けた謎の人物。その背中からは、光の粒子で形成された『四枚の翼』が揺らめいている。
「……異界の乙女たちよ。よくぞ我が王都へと辿り着いた」
頭の中に直接響く、どこか尊大で高圧的な、エコーの効いた合成音声のような声。
宥子が「あっ……! この声……!」と息を呑んだ。
「そう……あんたを召喚した、あの自称神アーラマンユの声ね」
容子は冷たい視線で窓枠の上の『使徒』を睨みつけた。
「我が名は『唯一神アーラマンユが使徒・ゼロエル』。我が主なる絶対神の意を伝える者なり」
仮面の使徒は、上から目線で宥子に向かって手を差し伸べた。
「琴陵宥子よ。汝に与えた『勇者』の天命を果たす準備をせよ。我が主は東方の神『天照』を祀り、その神力を満たす刻を待っておられる。いずれ訪れる決戦の時まで、我が主の意に従い、力を蓄えるのだ」
容子は静かに一歩前に出た。
「……ちょっと待ちなさい」
「何だ、愚かな伴走者よ。神の使徒の言葉を遮るか?」
容子は胸ポケットからスマートフォンを取り出し、画面を録音モードにしながら、冷酷な笑みを浮かべた。
「いくつか質問があるわ。将来の検証のためにね」
あなたたちの主アーラマンユは、天照大神を祀る形で神力を吸い上げ、じわじわ追い詰めるというコソ泥のような手法を取っているが、直接戦う度量すら存在しないのか?
宥子を不法に拉致しておいて『天命を果たせ』とはどういう論理構成か? 法的・倫理的な根拠を示しなさい。
吸い上げた神力のエネルギー転換効率と、次元崩壊の不具合に対する賠償責任は誰が負うのか?
「……な、何をごちゃごちゃと不敬な戯言を……!」
使徒ゼロエルの光の翼が、怒りで激しく揺れた。
「アーラマンユ様の計画は絶対である! 凡愚な人間が口を差し挟む領域ではない! 琴陵宥子よ、我が主の威光を刻み込み、その時まで平伏しているがいい!」
使徒が右手を掲げ、威嚇のために強烈な光の圧力を放とうとした瞬間――
「『構造解析・構成原子・弱点固定』」
容子の瞳が青く光り輝いた。
「威嚇のつもり? 青いわね」
ババババッ!!
『HK416C・魔導極』から放たれた超音速の真空波弾が、使徒の光の翼の根元を正確に穿った。
「グアァァァァァッ!?」
使徒ゼロエルは絶叫し、窓枠から転げ落ちてテラスへと激しく落下した。神の加護であるはずの光の防壁が、魔導銀の超音速弾の前にあっさりと貫通されたのだ。
「な……なぜ……神の使徒たる私の防壁が……!?」
容子は静かに歩み寄り、パルス・ブレイカーの先端を使徒の黄金の仮面の眉間へ深々と突きつけた。
「これは『挨拶』よ。私たちはあんたたちの思い通りに動く人形でも、勇者(笑)でもないわ。……アーラマンユに伝えなさい。『天照大神の力を削ぐ不敬な祠の構造は、すべて私がスキャンした。……将来、私たちが準備を終えたその時、あんたのその首と神格を叩き潰しに来てあげる』ってね」
バチチチチッ!
パルス・ブレイカーから三百万ボルトの衝撃波が放たれ、使徒ゼロエルは白目を剥いて倒れ込み、光の粒子となって夜空へと逃走していった。
長期決戦への誓いと、王都『次元間交易センター』の始動
静けさを取り戻した客間。
容子はHK416Cの残弾を点検し、冷静にノートパソコンへ新しいフォルダーを生成した。
フォルダー名:『プロジェクト・アーラマンユ解体計画』
「容子……あんな強い使徒を追い払っちゃったけど……大丈夫なの?」
宥子が白蛇たちを撫でながら、ドキドキした様子で尋ねた。
「大丈夫よ。奴らは天照大神の神力をじわじわ削ぎ落とすのに膨大な時間をかけるつもりだわ。なら、私たちにも数年、数十年単位の準備期間がたっぷりあるということよ」
容子は不敵に微笑み、窓の外に広がる王都グランの夜景を見つめた。
「焦る必要はどこにもないわ。まずはこの王都グランで『次元間交易センター』を正式にオープンさせ、王都の貴族や商人、冒険者たちから莫大な資金と権力を吸い上げるの。そして、日本の現代科学とサイエスの魔導技術を融合させた『対神格用・最終兵装』を少しずつクラフトしていくわ」
「うん! 私ももっとハーブ石鹸とか、神様に捧げる特製キャンドル作っていっぱい応援するよ!」
「ええ。あんたの『縁結び』で王都中の強力な味方と資金を引き寄せなさい。……そしていつか、完璧な準備が整ったその時に――」
容子は夜空に浮かぶ不気味な神力の流れを見上げ、冷酷な瞳を光らせた。
「自称神アーラマンユ……あんたの不敬と理不尽のツケを、利息も含めて完璧に清算させてあげるわ」
敵の全貌と、敵が企む陰湿な計画の構造を完全に把握した琴陵容子と宥子。
アーラマンユ討伐という遥か未来の決戦を見据えながら、二人の少女の王都グランにおける圧倒的なビジネスと開拓の物語は、今まさに確かな第一歩を踏み出したのだった。
東京の下町、築四十年・木造アパート『若草荘』の二階。
帰還した二人は、畳の上でほっと一息ついていた。
「ふぅ……王都での拠点作りも順調に行きそうだねぇ、容子!」
「ええ。明日は秋葉原で追加の大型3Dプリンターと、高精度な化学分析装置を仕入れてくるわ。サイエスでの王都グラン店舗のオープンに備えないとね」
「はーい! 私、特製カレー作って準備……」
「台所に立とうとするんじゃないわよ! あんたはハーブの小分けだけしてなさい!」
「も〜! 容子のイジワル〜!」
理不尽な神の企みすらも冷静に構造解析し、遠い未来の勝利を確信しながら歩む二人の双子。
現代科学と異世界魔導を手に、彼女たちの楽しく、逞しく、そして圧倒的な次元超越ライフは、これからもどこまでも続いていくのだった。




