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空前絶後! 第十一回! 異世界ぐるりウルティモクイズ!  作者: 袴田八峰
第六BF:スピリットフォレスト 精霊さん お願いします 早押しクイズ

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茂侍裁 3


「どうだ、市籠」


 茂侍が立ち上がる。

 手は土で汚れている。

 だがその表情は、変わらない。

 さっきまでと同じ、理を求める顔。


 ――やっぱり、そうか。


 ほんの少しだけ期待していた自分が、どこかにいた。


 この土の感触。

 あの「繋がる」感覚。

 土に協力してもらってるという気づき。

 それが、少しでも伝わっていたらって。


 でも。

 目の前にあるのは、いつもの茂侍だ。


 揺らがない。

 変わらない。

 だからこそ、ここまで来たんだろうけど。


 俺は一度、植えた苗木に目を落とした。

 ……ちゃんと、いる。

 さっきまで「置かれていた」だけの苗が、今は「そこに在る」。

 ただ刺さっているんじゃない。

 この場所に、受け入れられている。

 土に馴染んでる。

 土と苗木の命がつながって、共に生きるを認め合ったんだ。


 感触が、まだ手の中に残っている。

 触れた時の柔らかさ。

 温度。

 土に手を入れたときの、受け入れられる感じ。

 この子をお願いしますねって、苗木を託した感じ。

 苗木が、この場所に「定着した」っていうのが、理屈じゃなく分かる。

 僕これからここで頑張るね、っていう。


 言語外の言語。

 命の共鳴。


「……いい感じだな」


「いい感じ、とは?」


 来た。

 この返し。

 この、ズレ。


「苗木も土も、生きてるって感じ、するだろ?」


「土に命があるはずもなかろう。群生した菌糸が根を張っているのならともかく」


 俺の中にある感性と、茂侍の中にある知識が、ぴったり噛み合わない感じ。

 お互い思ってる。

 あーそういう捉え方するの、と。

 なるほど、わからん! と。


「いや、だから――ほら、ちゃんと根付いたっていうか」


 言葉にしようとした瞬間に、何かがこぼれ落ちる。

 この感覚は、言葉にした途端に薄くなる。

 そんな気がするのに。

 でも言わなきゃ伝わらない。

 そのもどかしさ。


「根巻きは不要なのか?」


「……は?」


 やっぱり、そういう方向に行くのか。


「通常、移植の際には根を保護するための処置が必要だと認識しているが。この工程ではそれが省略されているように見える」


「いや、ここそういう環境じゃないし……」


 知識。


 条件。


 手順。


 そういう話じゃないんだって。

 でも、それが彼の世界なんだ。


「ではこの樹種を選定した理由はなんだ? 成長速度か? 土壌適応性か?」


 うわぁ。

 全然入ってない。

 いい感じの共有、ゼロだ。


 ヤングエルフたちも、露骨に眉をひそめている。

 あの整った顔に、はっきりとした違和感が浮かんでいる。

 森と同調していた彼らの空気が、ほんの少しだけ乱れる。


「もう終わりか?」


「終わりでスね」


 陽だまりの光が、少しだけ傾いている。

 さっきまで斜めに降り注いでいた光が、今では真上から届いている。

 時間はちゃんと流れている。

 俺たちの中身がどうあれ。


「では手を洗いたい。 ツアーコンダクター氏。 生活魔法をお願いする」


「はいはい、わかりまシたよー」


 ぷう、と女神頬を膨らませるサンタフェさん。

 その仕草だけが、この場の空気を少しだけ和らげる。

 マジあざとい。


「あ、やっちゃいまシた♪」


 サンタフェさんの先行てへぺろ。

 続いて生活魔法の水が水鉄砲の様に茂侍の顔にぴゅー!

 光を反射して、きらきらと飛び散る水滴。

 正午の光が、それを金色に染める。


 一瞬だけ、幻想的ですらある光景。


「洗いたいのは顔ではなくて手なのだが」


 だが茂侍! この可愛いイタズラをガンスルー!

 顔に噴出した意図に全く気付いてない!


 俺はサンタフェさんと目を合わせる。

 今度は言葉もなく。

 同じものを見て、同じ疲れを感じている。

 それが分かる。


「「はぁ……」」


 ため息が重なる。

 陽だまりに溶けて、すぐに消える。


 シーツ幽霊はひらひらしている。

 ずっと、茂侍の頭上で。

 何も変わらない。

 何も感じていないように。


 ただ、そこに舞っている。



【ツアー2】 虫取り体験で童心に帰りまシょう! 



 次に体験するのはリトルエルフの虫取り講座。


 木々の間を縫うように走る小さな影。

 笑い声。

 葉をかき分ける音。

 湿った土の匂い。

 捕まえた虫を誇らしげに掲げる小さな手。

 その全部が、きらきらしていた。

 思わずカメラを何度かパシャった。


「魔法を使った方が効率的に捕獲できるだろ?」


 茂侍のその一言で、全部が少しだけ遠のく。


 サンタフェさんは頑張った。

 俺も頑張った。



【ツアー3】 美味しい野性料理食べ放題でスよ! 



 今度は虫の幼虫のクリーミーな姿焼きを味わい。

 火にかけられて、じゅう、と音を立てるそれ。

 香ばしい匂い。

 思ったよりも悪くない味。

 むしろ、癖になるようなコク。

 差し出してくれた子供はやっぱり、前歯の抜けた彼。

 リトルエルフ共の厨房担当。

 だからこそ、断れない。


「森の蛋白源として非常に有用だ」


 栄養学って……

 茂侍ホントお前……



【ツアー4】 大トレントのお引越シを見学シまシょう!



 ゆっくりと。

 本当にゆっくりと。

 地面から根を引き抜き、また別の場所に下ろす巨木。

 大地そのものが動いているみたいな光景。


 時間の感覚が狂う。

 焦ることが、どれだけ無意味か思い知らされる。


「時間がかかりすぎるな、もう十分見たろ?」


 短い尺度。

 人の時間。



【ツアー5】 かわいい精霊ちゃんたちによるふわふわレース!



 レース会場は小さな湖畔。

 その周回。

 体つきも種族もバラバラな小精霊たちが、一斉に走り出す。


 風を切る音。

 地面を蹴る力。

 光の尾を引くような走り。

 とてっと転ぶ子。

 ジャンプで飛び越える子。

 手を差し伸べる子。

 みんな最後には笑顔。


 ほっこり。


「で、勝者はどいつなんだ?」


 いやさあ。

 確かにレースって銘打ってたけどさあ。



  *



 そして夕方。

 森の色が変わり始める。

 緑が深くなり。

 影が長くなり。

 空気が少しだけ冷えてきた。


「ツアーはこれにて、終了でス」


 サンタフェさんの投了宣言。


「……? まだ精霊はいう事を聞いてくれないが?」


 シーツ精霊はシーツ精霊のままだった。

 表情無く言葉無く。

 風に吹かれるままにひらひら、ふわふわ。


『頭ガチガチ』


 鳥ちゃんの短い評価が、このツアーでの茂侍の全てを表している。


 十分戦った。

 工夫と配慮を重ねた。

 やるだけのことはやった。

 気付いてほしかった。

 気付いてもらえなかった。


『解り方が分からない』


 茂侍が苦渋を滲ませて独白したその意味を、俺とサンタフェさんは痛感していた。

 途方もない徒労感と共に。


 遠くで二つの夕日が沈もうとしてる。

 木々の隙間から覗くそれは、朝とはまた違う顔をしている。

 ……そういえば朝日はカメラに収められなかったな。


 あの瞬間。

 あの光。

 赤色の大勝利!


 夕日もきっと凄いんだろうな。

 丁度いい時間だな。

 見たいな。

 木々の遮りの無い場所で、思い切り。



 …………………………よし!



「鳥ちゃん。あのでっかい針葉樹の枝の上に、俺と茂侍を飛ばせる?」


『がんばる』


「なあ市籠、俺は……ひょおおおおおお!?」


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