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空前絶後! 第十一回! 異世界ぐるりウルティモクイズ!  作者: 袴田八峰
第六BF:スピリットフォレスト 精霊さん お願いします 早押しクイズ

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エルフの里 2


「はい、こちらの区画になります」


 長老に導かれた先で待っていたのは、バディ候補の精霊たち。


 モーリーと和合した光の粒とは違って、ここにいる奴らは半透明でありながらも、

 なんらかの生き物の形を持っていた。


 輪郭は確かにそこにあるのに、向こう側の景色がわずかに透けて見える。

 質量があるようでない、不思議な存在感。


 近づいても、風は起きない。

 羽ばたいても音がしない。

 吐息も感じなければ、体温も伝わってこない。


 生き物の形をしているのに、

 生き物の手触りだけがすっぽりと抜け落ちている。


 それでも――視線だけは、確かにあった。


「あなた方にお預けするのは中級精霊。しっかりと自我を持ち、ファッキンヒューマンのクソガキども以上の頭脳を持っておるものです」


 長老今なんて?


 枯れ木みたいな飄々とした語り口の中に、ものすごい毒混ぜ込んでなかった?


「さて、これからこの空間でハーブティーでも飲みながらリラックスして頂き、この子は、と思われる精霊が降りましたら、このリードをつけてお散歩なりもふもふなりして頂き――」


 ドッグカフェじゃん。

 行ったことないけど。


「と、いう流れで進めるつもりだったのですが」


 長老が言葉を区切り、俺を見つめてくる。


「こちらの方に、最初にバディを決めて頂かないと、精霊たちが落ち着かない様子ですね」


 確かに感じていた。

 視線の圧力を。


 ヒッポカンポスやペガサスたちがそうだったように、

 ここの精霊たちもまた、俺のことをじーっと見ている。


 敬意と好奇心に満ちた瞳で。

 俺を、僕を、私を連れてってくれと。

 無言で訴えかけてきている。


 空気が揺れるわけでも、音がするわけでもないのに、

 確かに求められている感覚だけが、肌にまとわりつく。


「天馬くんクール!」


 だからハナさん、クール要素どこよ。


「テイマーって精霊にも影響あるんだね」


 垂須さんは感心した口調。


「テイマーでしたか。その職の括りは広く、対象生物の相性も多様に別れておるものです。あなたさまには精霊、幻獣といった生物に適性が大きいのでしょう」


「ヒッポカンポスもペガサスも幻想種ですよ」


 李野くんが耳打ちしてくる。


「勇者さまもそうでしたな。やたら精霊に好かれておられた」


 長老。

 どでかい爆弾投げ込んでくるのやめてくれませんか?

 ていうか勇者と直接面識ありそうな口調なんですが?


 精霊たちからの圧力が段々強くなってくる。

 数が多いからじゃない。

 一体一体の意思が、静かに、しかし確実にこちらへと伸びてきている。

 触れられもしないのに、触れられているような感覚。


「どの子であってもあなたとは親和するでしょう。直感でお選びください」


 長老に促されて精霊ゾーンを眺める。

 みんな前のめりにこっちを見ている。


 ……あ、皆じゃないな。


 一匹…… 一羽だけ。

 空色の羽の猛禽っぽい鳥型精霊が、真っすぐに俺を睨んでいた。

 背筋をピンと伸ばして。

 その姿は、妙に「重かった」。

 軽いはずの存在なのに。

 周囲のざわめきとも、こちらへの期待とも無関係に。

 凛とした意志だけを目線に乗せて。


 あ、なんか見覚えあるわ。


 ハナさんと並んで精霊を見つめてるおかっぱ頭に目をやる。

 真っすぐに精霊を睨んでる。

 背筋をピンと伸ばして。


「あの子がいいです」


 即断。


 だってイメージが重なっちゃったんだもん。

 仕方ないよね。


 指差された途端にその鳥精霊は真っすぐに俺に向かって飛んできた。

 羽ばたいているはずなのに、音は一切しない。

 風も起きない。

 ただ、距離だけが一瞬で詰まる。

 そして。

 急にサイズを小さくすると、俺の人差し指に乗っかった。


 重さは、ほとんど感じない。

 触れているのかどうかすら曖昧な接触。

 それでも、そこに「いる」ことだけははっきり分かる。

 不動の姿勢で睨んでくる。


 や、睨んでないな。

 見つめてくるだけだ。


 温度も、匂いも、鼓動もないのに。

 視線だけが、やけに強い。


「よろしくね、バディ」


『わかった』


 そのザクっと切り取った返答も衿衣みたい……




 しゃべったぁぁ!?



  *



 衿衣と印象が重なる鳥精霊に名前を尋ねたところ。


『ない』


 不便だから仮の名前つけていいって聞いたら。


『ダメ』


 じゃあどうやって君のことを呼ぼうか、って相談したら。


『本当の名前をつけて』


 と強請られた。


 名づけね。

 名づけ。


 こんな、三日で通り過ぎる旅人に重すぎる要求じゃない?


 古今東西、こうした名づけって魂が結び付けられるとか、運命が定まるとか、

 そういう重い状況発生させちゃうでしょ?


『それがいい』


 良くないって。


 名前の事はあとで長老に相談するということで一旦保留にして、クイズ舞台にそのまま据え置かれてる早押しボタンの実験もしてみた。


「あれ押して」


『わかった』


 ぴんぽん!


 指から飛んで行って約三秒の出来事。


 念のためもう一回。


「俺がゴー!って言ったらあれ押して」


『わかった』


「この問題わかんないなー」


『……』


「待て」


『……』


「伏せ」


 すっと伏せた。


「ガー!」


『……』


「ゴー!」


 シュバッ! そして ぴんぽん!

 鳥ちゃんは即時俺の人差し指に舞い戻る。

 ……これ二日もいらねーじゃん!


『二日要る』


 でも完璧にピンポンできちゃうし。


『じゃあもたつく』


 そんな演技要らんて。


「ボタン。譲ってもらっていいか?」


 低い声。

 響く声。

 振り返ると今日も黒々とした関西の王者が腕を組んでいた。


 足元にはドーベルマンっぽい犬型精霊。

 精霊まで黒いのかよ。


「どうぞ」


「感謝する」


 俺は鳥ちゃんを指に乗せたまま後ろに下がり、切り株にシッダン。

 荒火のやり様を眺める。


「セット」


 荒火の号令に黒犬精霊は身を起こす。


「ゴー」


 荒火の号令に黒犬精霊がボタンまで駆ける。

 ボタンを押す。

 大体三秒。

 鳥ちゃんと同じタイム。


 ……厳しいな。


 クイ研や椰子泉さんは、問題の読み上がりからの反応速度が段違いだ。

 俺が解る問題が出て、鳥ちゃんにゴーを頼んでも、奴らの判断からのゴーに追いつけるかどうか。


『負けない』


 鳥ちゃんの気概は嬉しい。

 でもこれは俺の問題。


『半分の時間で押せる』


 マジで?


『大きくなってもいいなら』


 余裕OK!


 そうしたら鳥ちゃんは肩の上にぴょんと飛び乗って。

 出会った時のサイズにアップして。

 ピュッと風を切ると。

 ぴんぽん!

 本当に一秒強で、ボタンを押して来た。


 大きいことはいいことだ!


『できた』


「すごい!」


『ふふん』


 サンタフェさん味を突然出してくるのやめて。


「ぐむぅ……」


 その唸り声は、荒火から漏れたのか、黒犬精霊から漏れたのか。


 優越感ってわけじゃないけど。

 ちょっと誇らしさを感じてしまった。


 優越感ってわけじゃないよ?



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