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空前絶後! 第十一回! 異世界ぐるりウルティモクイズ!  作者: 袴田八峰
第四BF:ワイズメンズタワー インスピレーションクイズ 賢者様できるかな?

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第四BF:ワイズメンズタワー 7


 勝者席に移ったはずなのに、空気はまったく落ち着かない。


「うーん、3かなあ」


「えー、ここは4行けるでしょ」


 ハナさんとモーリーは、相変わらず楽しそうに次の問題の予想を続けていた。

 もう解答権はないはずなのに、完全に観客目線でゲームを楽しんでいる。

 その様子を見て、周囲のスタッフたちは満面の笑みだ。

 自分たちが用意したクイズを、ここまで純粋に楽しんでくれる存在なんて、そうそういないだろう。


 正直、その気持ちは分かる。

 俺も楽しんだ。

 心の中で何回ツッコんで何回あきれたか数え切れないくらいだ。

 塔の中じゃなくてゲスト四人を選んだスタッフたちは本当に慧眼だ。

 心の中で賛辞を送ろう。

 基本斜に構えたカッコつけの俺を楽しませるなんて大したもんだ。


 ――でも。


「……集団戦を挑んでるのか」


 ――俺にとっては楽しかったイベントも。


「確率論のみで対抗してるわね」


 誰にとっても楽しめるわけじゃないようだ。


 特に、最初から楽しもうとすらしていない連中には。

 楽しませようという心意気すら無意味なものなのだろう。

 恐らく俺と同じ思いを共有している大人知性組。


 大渓さんと椰子泉さん。


 その視線の先にあるのは、言うまでもなくクイ研の六人。

 彼らは、相変わらず一糸乱れぬ動きでシートをめくっていた。


「3、2、1、ホールドアップ!」


 ――全員、2。


 一切の迷いもなく。

 一瞬のズレもなく。

 ただ機械のように。

 これで何問目だ。

 全問連続「2」。

 それで1ポイント取っている。


 設問の内容なんて関係ない。

 賢者たちが見せる魔法も、奇跡も、茶番も。

 何一つ気にしていない。

 ただ、「確率的に最適な数字」を出し続ける。

 それだけ。

 これが、インスピレーションクイズという苦手な問題形式に対する

 ソサエティーのアンサーだった。


 なるほどな、こういう事か。

 俺がクイズ王になる、じゃなくて。

 我がソサエティーがクイズ王になるって。

 荒火。

 お前の事カッコイイとか思って損した気分だ。


「10問で2ポイントの計算か。今のペースなら……勝ち抜けるな」


「もう八問目だし、収束してもおかしくないわね」


 冷静な声。

 理屈は分かる。

 戦術としては、正しい。

 むしろ合理的ですらある。


 でも――


「……気に入らないな」


 気づけば、そんな感想が口をついていた。

 別に誰に聞かせるでもなく。

 ただ、自分の中から自然に出てきた言葉。


 クイズって、こういうものだったか?

 そう問われると、答えには困る。

 俺はこのウルティモに出場するまではまともにクイズに触れてこなかった。

 視聴者としてもクイズ番組なんて好んで見てこなかった。


 概念は分かる。

 設問に答えて正解を当てるゲームだ。


 そのゲームには勝ち負けが存在して。

 参加者がゲームに勝ちたいのならば。

 勝つために最適な行動を取るのは、当然だ。


 でも。

 それでも。


 ――それでも、だ。


「実証三人! 一人反則! よって3番は…… エセ坊主! おめでとう!」


「似非じゃなくてマジ得度済みリアル僧侶、羽合悟道27歳独身!」


「マジで宗派名乗ったら映さないからな?」


「ナムサンポ!」


 軽口と笑いが飛び交う中、また一人、勝者が決まる。

 これで通過者は七名。

 残り半分。


 俺は残る挑戦者たちに視線を巡らせる。


 穂積。

 李野くん。

 ボーイ。

 茂侍。

 そして、キング。

 それぞれに思うところはある。


 あ、あっちにソサメン、もう一人いたわ。

 ナンバーツー。

 墨市氏だったか?

 相変わらず俯いてて顔が把握できないな。

 忍者より忍んでる系。


 穂積は親友だ。

 李野くんも、もう友達と呼んでいい。

 ボーイとも最近はよく話す。

 茂侍とナンバーツーは特段縁が無いのでパス。

 キングは――敬意、だな。

 ああいう在り方は、素直にすごいと思う。


 でも。


 この戦い方を見ていると。


「……応援は、できないな」


 ぽつりと、口に出してしまった。


 まあ、彼らは応援なんて求めていないだろう。

 そんなものがなくても勝つ。

 実力で勝つ。

 そういう連中だ。


 だからこそ、余計に。


「寿美子、それ違――」


「椰子泉さん。答えを教えるような真似しちゃだめだ」


 ぴたりと、空気が止まる。

 大渓さんの声は、軽い調子のままなのに、はっきりと線を引いていた。


「……ごめんなさい」


 椰子泉さんが小さく頭を下げる。


 双滝さんはこちらの様子に気づいていない。

 元々白い肌がさらに青みを帯びて白い。

 焦っている。


 4問目で取った1ポイント。

 そこから5問。

 ポイントを取れていない。


 合間合間に賢者たちの様子を伺っても居ない。

 考えている。

 インスピレーションをシンキングで超えようとしている。


 その姿は。

 皮肉なことに、クイ研連中が作戦を立てずに個人として戦っていたらこうなっていたであろうという戦いぶりそのものだった。


 そして――


 掌の絆創膏を弄りながら心を落ち着けようとしている白山さん。

 笑顔が無い。

 あのイジワルで小悪魔な笑顔が、八重歯が見当たらない。

 きょろきょろとせわしなく猫目を動かして。

 黄石を、閑君を、賢者たちを、場の雰囲気から、なにか少しでもヒントを得られないかと、必死に情報を集めている。


 集めて。

 判断の材料にして。

 裏読みしすぎて。

 結局0ポイント。



 そして運命の10問目。


「垂須くん、ラス抜けおめでとう! キングと配下一同! 君らも纏めて通過だぜ!」


 決着。

 あっけないほど、きっぱりと。


 その瞬間。

 双滝さんの肩が、がくりと落ちた。

 悔しさを押し殺すように、ただ俯く。


 椰子泉さんは、奥歯をぎりっと噛みしめていた。


 白山さんはしばらくぼーっとして焦点が合わない感じだったけど。

 俺の視線に気づいたのか。

 力弱い笑みで。

 ひらひらと、さよならを意味する手を振った。


 一方で。


 垂須さんは拳を握りしめて、力強くガッツポーズ。

 そのまま黄石にインタビューを振られて、興奮冷めやらぬ様子で答えている。


 クイ研の面々は、まとまって勝者席へ向かってくる。

 その歩みは、どこまでも淡々としていた。

 達成感も、高揚も、あまり見えない。

 ただ、予定通りに終えた、という顔。


 ――ああ。


 ふと気づく。


 黄石は、彼らに「おめでとう」とは言わなかった。


 軽口は叩く。

 いじりもする。

 でも、その一言だけは、なかった。


 それがどういう意味なのかは、考えすぎかもしれないけど。

 胸の奥に、妙な引っかかりが残る。


 こうして。

 第4バトルフィールド・ワイズメンズタワーで

 俺たちの戦いは、幕を下ろした。


「「「「バンザーイ!」」」」


 クイ研にとっての作業も、幕を下ろした。


「「「「バンザーイ!」」」」


 カースメーカー。

 嫉妬の権化、双滝寿美子。

 小悪魔メイド。

 にししの八重歯、白山紀子。

 無念の内にここに脱落。


 残るは、十四名。


「「「「バンザーイ!」」」」


 そして次なる戦いの舞台(バトルフィールド)は。


 獣人連合の全部族共有自治区。


 絶対休戦地・ストローマン。


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