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空前絶後! 第十一回! 異世界ぐるりウルティモクイズ!  作者: 袴田八峰
第四BF:ワイズメンズタワー インスピレーションクイズ 賢者様できるかな?

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第四BF:ワイズメンズタワー 4



「むふふ……みんな苦戦してるなぁ。僕は君らがそうやって苦戦してる姿を見るのがもう、楽しみで楽しみで。だからこんな過酷な旅に付き合ってるって言っても過言じゃない!」


 黄石が、心底うれしそうな顔で言う。

 つやつやだ。

 顔もスーツも、なんか全部。

 ……これ、冗談っぽく言ってるけど、たぶん本音だろ。

 この人、そういうとこある。


「わかるー」


 ぽそっと、隣から白山さん。


 いや、分からないでほしい。

 ほんとに。

 共感されると余計にしんどい。


「第三問は、超能力から出題だ。この映像、どうぞ!」


 スクリーンが切り替わる。

 出てきたのは、シンプルな図形。

 丸とか、星とか、波線とか。

 カードに描かれたやつ。


 ああ、これ。

 昔、テレビでやってたな。

 向こうが引いたカードを当てるやつ。

 エスパーなんとか。

 名前は忘れたけど、やってることは分かる。


 ……で、これを。

 魔法で再現できるか?


 画面が止まる。


「この魔法、でっきるっかな?」


 考える。

 いや、考えても分からん。

 さっきの雪と違って、こっちは情報だ。

 見えないものを見る。


 透視?


 いや、でもそんな便利なもんあるのか。

 ハナさんの顔色見てた発言を思い出して、ちらっと賢者を見る。


 火は、腕組んで眉間にしわ。

 風も、珍しく静か。

 水は、相変わらず揺れてるだけで読めない。


 で、土。

 あいつだけ、ニヨニヨしてる。

 あからさま。


 ……いや、逆に怪しいか?


「さん、にー」


 時間切れ秒読み。

 ええい、もういい。

 土は行ける。

 水がやるかどうかの勝負。


「ホールドアップ!」


 今度はちゃんと、2。

 紙の感触が指に残る。


「ほー。またしても2に集まってるな……おっ、今度はゼロが一人いるぞ……ここでゼロならもう一人勝ち抜けか……さあ、賢者様、でっきるっかな?」


 ゼロがいる。

 よくもまあそんな極端な選択肢を。

 誰だ。

 勇気あるな。


「儂では無理じゃな」

「てゆーか誰も出来んじゃろ?」


 火と風が、あっさり白旗。

 よし。

 よしよし。

 ここまでは予想通り。


 あとは水と土。

 どっちかがやれば――


「じゃあ実践してもらおうかな?」


 黄石が手を叩く。

 スタッフが動く。

 運ばれたのは丸テーブル。

 そして、でかいカード。


 黄石が背中を向けて座る。

 俺らにカードが丸見え。

 カメラさんも移動してこの方向。


 対面に、水の賢者。

 揺らぎが無い。

 動きも無い。

 うん。

 これ、普通にいける流れだろ。


「水賢者さん。このカードは何ですか?」


「マルですね」


 即答。


「ではこちらのカードは?」


「バツですね」


 淡々と。

 迷いゼロ。


「そこはペケと言って欲しかった……が、実証!」


 会場がざわつく。

 見えてる。

 どう見ても。

 カード、完全に当ててる。


 ……マジかよ。

 どうやって水魔法で透視を実現するんだよ。

 って。

 出来る方に賭けてたのに、いざあっけなく実現できてる様を見ると混乱する。


 じゃあ、土も――


「では次は土のお嬢さんおねが――」


「一つ尋ねたいのじゃが」


 割って入ったのは、火の賢者。

 声のトーンが、さっきまでと違う。

 ちょっとだけ、硬い。


「なんでしょう火の賢者様」


「この設問の核は、見えない図形を当てる。そうじゃな?」


「ええ、ご覧の通り」


「でもな。見とるぞ。水のは」


 空気が、止まる。


 一呼吸。


 二呼吸。


 ……半呼吸。


「………………え?」


 黄石の声が、間の抜けた音になる。

 観客も、静かになる。


「んほぅ?」


 風も首をかしげてる。


「あんたの肩に、ちーちゃな分体をのっけて、そこから意識共有しとるぞい」


 炎の賢者が指さしたのは黄石の右肩。


 分体?

 意識共有?


 頭の中で、同じ音が反響する。


 え?


「………………え?」


 黄石が、もう一回言う。

 俺もたぶん同じ顔してる。

 周りも、たぶん全員。


 これ、かなりレアというか、凄いことなんだろう。

 魔法に満ち溢れた異世界においてすら。

 だって。

 絶句の沈黙してるのは俺ら地球人側だけじゃなくて。

 現地の野次馬観客や露店の店主たちまで含めてだもん。


「そういえば水賢者様は登場の時に『腰をイワしたから分体で失礼』とか言ってたね……」


 大渓さんの呟きが、静まり返った広場に染み渡る。

 伏線はしっかりあった。

 それを為せるだけの土壌が。

 そういうことか。


 黄石の視線が泳ぐ。

 助けを求めるみたいに。

 で、閑君。

 無言。

 でも両腕で、ばつ印。


「水賢者さん、ごめんなさい! それは反則です!」


 黄石は最高責任者の判定を取り入れ、即座に切り替え。

 両手を合わせて、水の賢者を拝む。


「失礼。少々勘違いをしておりました」


 水は、あっさり引く。

 波打つ体が、すっと元の位置に戻る。

 すたっと立ち上がってゲスト席に水平ムーブ。


 今の、完全にアウトだろ。

 でも本人、全然悪びれてない。

 ルールの外から殴ってきた感じ。


「……あのー。儂もプチゴーレムを後ろに回してサイン送ってもらうつもりなのじゃが」


 土が、手を挙げる。

 さらっと言うな。


「それも反則ですね」


 即答。

 そりゃそうだ。


「設問が見えないものを見るじゃからな。しかたあるまいよ」


 火がまとめる。

 ああ、なるほど。

 つまり。

 賢者たちは、こっちの意図とルールに乗ってくれると。

 正面突破だけで進めますよ。

 抜け道は禁止ですよ。

 そういう確認と合意が、ここで為された訳か。


「と、いうことは?」


 黄石が振り返る。

 ざわざわと、空気が動く。


「ゼロを選んだのは?」


 誰だ。

 ゼロを選んだやつ。


「椰子泉さんおめでとう!」


 納得感が強い人だった。

 やっぱりあなたはワイズメン。


「楽しいクイズだったわ」


 いつもの調子で言う。

 淡々と。

 でも、ちゃんと抜けてる。


「しかしゼロ人なんてよく当てたねー」


「私の持ってる魔道知識だと、達成できる方法が見いだせなかったから」


 魔道知識。

 地球では聞かないワードをさらっと言う。

 この人、いつの間にそんなもん仕入れてたんだ?


「まあ、私が適性を知ってから調べ始めただけの、付け焼刃なんだけどね」


 ステックソンのジョブ判明から3日。

 謙遜なくマジで付け焼刃。

 それなのにこれ。

 なんか、世界が違う。


「付け焼刃で勝ち抜けできるんだから大したもんだよー。いよっ! 流石ワイズメン!」


 黄石が持ち上げる。

 観客も沸く。

 その中心で、椰子泉さんは特に変わらない顔してる。


 ……ああ。

 こういうのが、差なんだろうな。

 知識とか、勘とかじゃなくて。

 前提。

 視座の高さが違う。

 見える広さが違う。


 もしかして。

 ひょっとして。


 この人、荒火や穂積なんかより、ずっとクイズが強いんじゃないか?


「ぐむぅ」


 解答席の向こう端から聞こえる荒火の唸り声。


 第三問終了。

 勝ち抜け、十四人。

 残り、十一席。


 で。


 俺たちは、まだゼロ。

 横一列。

 誰もまだ、何も掴んでない。


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