↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空前絶後! 第十一回! 異世界ぐるりウルティモクイズ!  作者: 袴田八峰
第三BF:ステックソン ジョブ別つなひき 一問多答リレークイズ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/121

第三BF:ステックソン 6


 メダルプレゼンターの腹筋の割れたビキニメイルお姉さんから

 首に手荒くメダルを掛けられた俺たちが、勝者席に腰を下ろす。

 

 背中をバンと叩かれて、みんな背中にモミジが咲いてる。

 李野くんが叩かれたとき異音がしたので、今、随行医の診察中。

 恐ろしいぜ女冒険者。

 全然悪びれてない。


 で、湿布を張って貰った震える李野くんに肩を貸して、勝者席に腰を下ろす。

 さっきまで握っていた綱の感触がまだ手のひらに残っているのに気づく。

 ザラザラして、ちょっと焼けたみたいに熱い。

 こういうの、体育の授業以来だなと思う。

 あの頃は、勝っても負けても大して気にしなかったはずなのに。

 今はなんか、妙に身体の奥に残る。

 勝利の余韻。


 目の前には、さっき黄石が指さしていた看板。


 ――ワイズメンズタワー。


 なんかこう。

 遊園地の展望台みたいな軽い名前なのに、たぶん中身は全然軽くない。

 あの男たちが用意したものが、ただの景色見物で済むわけがない。


「楽しい作戦だったわ、キング」


 椰子泉さんが、あっさりと言う。

 さっきまで綱を引いてたとは思えない落ち着きっぷり。

 汗ひとつ見せないのがまた腹立つくらい様になってる。


「俺の如き目下の指図に従ってくれた度量、感謝する」


 キング――荒火は、相変わらずの調子で応じる。

 が、年上に敬意を払うとは意外。

 黄石にはわりとタメ口っていうか、呑んでかかろうとするとこあるのに。


「貴様とは良い勝負ができそうだ」


 キングとクイーンの握手。

 なんだその絵面。少年漫画か。

 ボーイと双滝さんが思わず拍手。


「お手柔らかにね」


 軽く言ってるけど、あの二人、たぶん本気でやり合う気だ。


 おい穂積。

 本家ライバルたるお前を差し置いて、キングが新たなライバルに浮気してるぞ?

 いいのか穂積。

 お前はそんなところで足踏みしてて。


 頑張れほつ――


「うんしょ、うんしょ」


 聞き慣れた声に、俺は思わず、視線を一般職チームへとスライドさせる。


 そこには、懸命に綱を引くハナさんの姿が。

 さっきまで「わーい」とか言ってた人が、今は歯を食いしばってる。

 顔を真っ赤にして、足を踏ん張って、必死に引いてる。


 いつもの余裕が消えて、汗水たらしている大渓さん。

 あの常時余裕の人ですら、肩で息してる。

 ネクタイなんかとっくに外して、シャツもぐしゃぐしゃで。

 完全に現場の人って感じだ。


 笑顔ではなく奮闘の為に八重歯をむき出しにしてる白山さん。

 小悪魔だって真面目やひたむきと共存できる。

 だって、彼女の手が握ってる綱、赤く滲んでる。

 柔であろう掌を擦って、切って。

 痛みを堪えてチームの為に頑張ってる。


 闘争本能むき出しで全力を出してる垂須さん。

 昨日、サシ飲みで「楽しい旅になると思うよ」とか肩の力が抜けたこと言ってた人と同一人物とは思えない。

 顔つきが違う。

 完全にスイッチ入ってる。


 旅に出て知り合った友人たち。


 ――友人、か。

 なんか、そう言うのまだ照れるな。

 いいところばかりじゃない。

 駄目なところも困るところもある。


 垂須さんみたいに、急に余裕なくなる人もいるし。

 白山さんのからかい癖はちょっとなんとかして欲しい。


 でも。


 勝って欲しいのは穂積でも。

 この先、一緒に旅をしたいのは彼等だ。


 ……なんか、面倒くさいこと考えてるな、俺。


 贅沢な悩みだな。

 勝者の余裕あればこその僭越だ。

 自分でそう思って、ちょっと苦笑い。


「市籠」


 いつの間にか隣にいた衿衣。


「一緒に応援する」


「だれを?」


 わざと聞く。

 分かってるのに。


「友達を」


 当たり前だという顔をして。

 意思の籠った目をハナさんに真っすぐ向けて。

 衿衣は俺に声援を促す。


 この子、ほんとに変わったよな。

 最初に会った時、こんなこと言うタイプじゃなかったはずなのに。

 だから、さ。

 そんな友達の想いに、誠意を以って答えないと、な。


「衿衣、俺さ」


「何?」


「冒険者チームの最後尾、高校時代からの親友なんだよね」


 一瞬、間。


「えっ……」


 ほんの少しだけ、目が揺れる。


「だから、ゴメン。ハナさんだけを応援できない」


 自分で言ってて、なんか言い訳くさいなと思う。

 でも、他に言い方も思いつかない。


「……うん」


 衿衣がとことこと離れていく。

 体育すわり。

 砂の上にちょこんと座って、膝を抱えてる。

 一人ではハナさんを応援できないらしい。


 頼ってくれたんだな。

 断っちゃったな。

 傷つけちゃったかな。


 でも……

 どうだろ。


 ここで旗色を鮮明にしないのも逃げだって気もするし。

 選べないって答えに従ってるんだから逃げてない気もするし。


 どっちだ。


 どっちでもない気もする。

 なんか、はっきりしない。


「辛いっスよね」


 今度はボーイが寄って来た。

 砂を蹴りながら、ひょいっと隣に座る。

 距離感が近い。

 こいつも大概だな。


「俺もどっちも応援できないんっすよ。田婆は同期。茂侍さんは先輩」


「ああ、なるほど」


 分かりやすい。

 同サークル対決。

 そりゃ迷うわ。


「ですな。仲間が多いというのも、こういう時は良し悪しですぞ」


 李野くん。

 いつの間にか合流してる。

 そういえば君も関西クイズソサエティのメンバーだったね。

 ここんとこよくつるんでたから、素で忘れてたわ。


「まあ、考えてもしょうが無いんで、モーリーのおっぱいでも鑑賞してましょ」


「葛藤どこ行ったよ」


 反射で突っ込む。


「男の子ですから!」


「だからお前はボーイなんだ」


「ボーイって呼ぶな!」


 くだらないやり取り。

 でも、そのくだらなさが、妙にありがたい。

 さっきまでのもやっとした感じが、少しだけ軽くなる。


 いいじゃん、仲間。

 分かり合えるじゃん、クイ研。


 ……いや、分かり合えてるかどうかは怪しいか。

 でも、同じことで悩んでるやつがいるってだけで、だいぶ違う。


 そして。

 そんなクイ研の絶対王者は――

 泥沼の戦いを繰り広げている臣下たちに、号令を下した。


「茂侍! 墨市! 田婆! 全力で奮起せよ!」


 声が、砂浜に響く。

 低くて、通る声。


 勝ち負けではない。

 戦えと。

 姿勢で応えよと、発奮を促した。


 ああいうの、反則だろ。

 あれ言われて、力抜けるやついないって。

 俺でさえ心の奥のどっかに熱が灯ったもん。


 なので成果は明白だった。

 声をかけられた三名は、目に見えて元気を取り戻した。

 特に、この男が。


「キングに励ましのお言葉をいただいた! なんたる光栄! どうか玉座にてこの臣下の精励をご覧くださいませ! うおおおおおお!」


 李野くんほどではないけど、ひょろいガタイの茂侍が。

 まるで覚醒したかの如く、火事場の馬鹿力を発揮した!

 さっきまで理屈こねてた人と同一人物とは思えない爆発力。


 人って、スイッチ入ると変わるな。


「うおおおおおお!」


 自分で設定したイチニッサンは無視!

 額に無数の血管を浮き立たせて綱を引く!

 そして。


 ピッ!


 一般職チームのフラッグが上がる!


「回答権は一般職チーム」


 この問題にて、勝者が決まった。

 戦後日本の歴代外務大臣の名前。

 総理でないところが嫌らしいが全員正解。


「勝ち残ったのは一般職チーム! おめでとう!」


 気勢を上げるチーム一同。

 倒れ込みながらも歓声は上がった。


 その陰で。


「白山さん、本当にごめんね。僕、勝負事、熱くなっちゃう性質で……」


 マジ謝りのイラち公務員。


 さっきのあれ、ちゃんと引きずってたんだな。

 雰囲気も平時と同じ穏やかな空気。

 戻るの、早いな。


「まーいいですけど。私が足を引っ張ったのは事実ですし」


「だとしても言い方とか配慮とか足りてなかった。少なくとも大人の取る態度じゃなかったから。改めてごめん」


「誠意受け取りました。でも! ここぞって言うときにこのネタで引っ掻き回してやりますから恨まないでくださいね!」


「キツいの来たこれ」


「にしし」


 よし、和解成功!

 うん。

 根は良い子なんだよ白山さんは。

 枝葉が小悪魔なだけで。


 で、垂須さん。

 なんだかなーはなんだかなーなんだけど。

 そうでない時のあなたはそうでないから。

 明日からもしばらくは一緒に旅をするんだから。

 時間をかけてあなたがそういうキャラだって飲み込むよ。


「やったよー天馬君!」


 駆け寄って来たハナさんがハイタッチを強請る。

 汗だくで、息切らして、それでも笑ってる。

 この人、ほんとあらゆることを全力で楽しんでるな。

 笑顔が力になるってきっとこういうこと。


「ともだち?」


「「ともだち」」


 衿衣と並んでハイタッチ。

 さっきまで体育すわりしてた子が、すすっと寄って来てた。

 既に衿衣はハナさんに陥落済みだった。

 この子がノリを合わせるなんてただ事じゃない。


「やれやれ、体力の無さを痛感したよ。帰ったらジムにでも通おうかな」


 大渓さんはいつもの大渓さん。

 体力を消耗しても大渓さん。

 この人、どこまでいっても崩れないな。


 そして、ぽつんと。

 勝者席に移動しないで、敗者を見つめて立ち竦む男が一人。


 新母《あらも》達也《たつや》。

 通称、新母夫。


 見つめる先は、冒険職チーム。

 その真ん中で泣きじゃくる妻。

 さっきまで一緒に戦ってたのに、今は向こう側。

 たった一問で、線が引かれる。


 ウルティモはクイズ《《バラエティ》》。

 そしてクイズ《《サバイバル》》。


 勝者と敗者。

 笑顔と涙。


 挑戦者って素材を燃料に変えて弛まず進む蒸気機関車。

 燃え尽きた燃料は灰と崩れるが定め。


「今日はいい夢見れそうね♪」


 だからさぁ、双滝さん。

 あなたそういうところがカースメーカーなんよ?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。