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空前絶後! 第十一回! 異世界ぐるりウルティモクイズ!  作者: 袴田八峰
第三BF:ステックソン ジョブ別つなひき 一問多答リレークイズ

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45/120

第三BF:ステックソン 4


「我らがTV曲が月曜九時、2クールのドラマを定番化して8年が経ちますが、この枠のドラマのタイトルを列挙せよ」


 よし、綱を引こう。

 眼前の双滝さんもぎゅっと綱を握る手に力を込めたのが見える。


 が。


「無理ー!」


 モーリー、即座の投了宣言。

 早い。

 というか、迷いがない。


 それに合わせて、みんなが力を抜いたせいで体が持ってかれる。

 引こうとしてた力の行き場がなくなって、前にぐらっと揺れる。

 ロープって、思ったよりも正直だ。


「私なら10個は答えれたのに」


 双滝さん、恋愛ドラマ好きそうだからね。

 なんとなくイメージ通りだ。


 俺たち異端児チームが抜けた分、綱引きの支点力点作用点はどうなるの?

 とも要らぬ心配が頭を掠めるが。

 そこは異世界。

 便利な魔道具。

 なんか接合点のリングがぼやぼやーっと淡い光を放つと、なんか120度の角度にての綱引きがそのまま継続していた。


「魔法ってすごい」


「二年に一度は見る光景っす」


「あなた本当にウルティモを知らないで参加したのね」


 俺の感動に誰も共鳴してくれなかった。

 畜生。

 ハナさんが恋しいぜ。


 砂浜を蹴り蹴り戦況に目をやると、優勢なのは冒険職チーム。

 やっぱり筋肉中年タッグは強いな。


「オー、エス! オー、エス!」


 一般職チームのイチニッサンよりずっと声がでかい。

 声の圧が、そのまま力になってる感じ。

 ああいうの、理屈じゃないんだよな。

 そのまま数十秒、じりじりと綱が一般職側に引っ張られ……

 最後尾の穂積が規定位置に達し、決着のフラッグが上がった。


 その穂積の背中。

 迷いのない動き。

 ああいうのを見ると、やっぱり「違う」と思う。

 俺と違うのはもちろんながら。

 荒火ともまた。

 それは牽引力というか、少年性というか。

「我に従え」と「俺についてこい」の違い。


 そんなことに想いを馳せている間に解答者たちにマイクは回り。

 居権、後さんと正答が続き。

 三人目、塩湖さん。


「中秋の塩辛蜻蛉」


 ブー!


「それは他局のドラマだろ! このばかちん!」


 黄石のお叱りに塩湖さんが「そうだったか!?」と理解してない模様。


 あの人、たぶん本気で分かってない。

 自信を持って答えた感ある。

 よくある思い込み。

 勘違い。


 ともあれ、ひとまずの危機は回避された。

 なのに。

 なんかこう、助かったのにすっきりしない。

 他人のミスで命拾いするの、あんまり気分よくないな。


「ドンマイです、塩湖さん」


 憮然とする塩湖さんの肩に、ポンと乗せられた手。

 真っ先に、無自覚に。

 これをするから穂積は強い。


 フォローが速い。

 しかも自然体。

 あれをやられると、チームの空気は崩れない。


「気にすんな」


「俺はむしろ期待もしてなかった」


「なんだとぅ!」


 チームから漏れる和やかな笑い。

 ピリつきかけた空気はもう霧散してる。


 ふーん。

 雰囲気いいじゃん。


 勝つチームの空気って、たぶんこういうやつだ。

 ミスが出ても、崩れない。


 よし、俺も今のうちに問題点を整理しとこう。

 このままだと、ただ流されるだけで終わる。

 それはちょっと、ダサい。


「キング、質問」


「なんだ?」


 視線が一瞬だけ集まる。

 別に大したこと言うつもりはないんだけど、こういう時に口を出すと、妙に緊張する。


「今の問題、俺二個しか答えわからなかったけど、手を上げるべきだった?」


「二個か……」


 しばし黙考。


 キングの思考が、目に見えるみたいに静かに流れる。

 無駄な動きがない。


「継続しよう。解答順を入れ替えて対応する。一個だけなら投了宣言だ」


 合理的に数字で切る。

 従わせる者たちに曖昧さを残さない。


「いい意見だった。感謝する」


 え?

 キングが感謝?

 俺に?


 ちょっと意外で、反応に困る。

 こういうところでちゃんと拾うの、ずるいよな。

 懐の深さも王の資質か。


 ……いや、単に勝つために必要だからやってるだけか。

 どっちにしても、真似できる気はしない。


「次の問題!」


 ホームポジションに。

 ロープを抱え直す。

 手のひらにざらっとした感触。

 綱の感触のみならず、砂と、溶岩と、灰の破片が混ざり合った感触。


「この異世界の魔法はワイズメンズタワーにより12のカテゴリに分類されていますが、この分類を列挙せよ」


 地水火風、あと空間。

 ぱっと思いつくだけで五つ。

 さっきより確信がある。

 これは、行ける。


 綱を引こう。


 体に力を込める。

 開始のホイッスルにタイミングを合わせて――


 ピッ!


「ごめんなさい」


 目の前の双滝さんが手を上げる。

 早い。

 でも、正しい判断だ。


 力が抜ける。

 でも、さっきよりも納得はある。


「私なら全魔術系統諳んじれるのに!」


 モーリーご立腹。

 強いのは魔物だけじゃないのね。

 これからは異世界オタと呼ぼう。


 うちは全員手を綱から離してまたもや離脱。

 さっきよりも泥沼の綱の引き合いを制したのは一般職チーム。


「地」

「水」

「火」

「風」


 テンポよく四人が答えて、五人目。

 解答者はにしし笑いの小悪魔こと白山さん。


「はぁ……はぁ……」


 二度の全力綱引きで息が切れてる。

 肩が上下してるのが、こっちからでも分かる。

 非力そうな女学生だしな。

 思った以上に体力削られてるな、あれ。


「早く、早く」


 白山さんの後ろから、焦りが前面に出た男の声。


「あと五秒」


「あるだろ、ほら、まださぁ!」


 垂須さん……だな。

 なんだあの表情。

 声も裏返りかけてるぞ?


「三、二、」


「毒属性?」


「ざんねーん! それは地の範疇だ!」


 黄石がせせら笑う。

 白山さんがうつむく。

 そして。


「んなこともわかんねーのかよ!」


 垂須さんが吠える。

 完全に裏返った声。

 イライラ爆発の風情。


 あ、思い出したわ。


 転移門ペーパークイズの結果待ちの時、喋りまくってたハナさんに向けて「うるさいぞ!」って余裕なく怒鳴った声。


 あれ、垂須さんの声だったわ。


 ……あー。


 なんだかなぁ。


 昨日飲んでた時は、穏やかな人だと思ったんだけどな。


 なんだかなぁ。




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