第三BF:ステックソン 2
「そう! 隠していて済まなかったが、チームはこのジョブに準じて分けさせて頂いた! まずAチーム!」
大渓さんたちのチームだな。
「君たちは残念ながら冒険者としての適性がない! 一般職の集団だ。それぞれのジョブを読み上げてくれ!」
さらっとひどいこと言うな、この人。
でも、こういう雑な線引きの方が、番組的には分かりやすいのか。
「はいはーい! ハナはジョブ空白なんだけど?」
「それはな舞網ちゃん……」
「ごくり」
「君が神様も匙を投げるほどの、根っからの【無職】だっていうことだ! あっはっは!」
「がーん」
かわいそうだけどしかたないね。
ハナさんだし。
というか、なんでハナさんちょっと嬉しそうなんだ。
まあいいか。
ハナさんだし。
「じゃあ大渓さんから行ってみよう」
「大渓、ジョブは情報屋」
実にそれっぽい。
新聞記者ってだけで説得力あるのに、さらに補強された感じ。
「墨市、ジョブは学者です」
どこかで見た顔……
何度か聞いた声……
ああ、ナンバーツー、生き残ってたんだ。
「新母、ジョブは執事」
旦那さんが奥さんをチラ見しながら答える。
ああいう関係、ちょっと羨ましいと思ったのは内緒だ。
「垂須、同じく執事」
公務員だし納得のジョブだ。
なんかこう、堅実な感じが滲み出てる。
「茂侍……」
「なんだぁ? ちゃんと読み上げろよ茂侍くん? それがあなたの魂の形なんだぜ?」
黄石ニヤつく。
白山ニヤつく。
あ、これきっと居たたまれない不本意なジョブだ。
茂侍ドンマイと先行同情しておこう。
「くっ…… 茂侍…… ジョブは太鼓持ちだ」
従者とか家臣とかじゃなく!?
これはお辛い。
でも本人、悔しいが認めざるを得ないって表情してるのがまた。
「白山紀子はメイドでっす!」
え小悪魔じゃなくて?
「夜の暴れん坊系煩悩僧侶、羽合悟道27歳独身! 職業:遊び人!」
相変わらず謎自己紹介が長い。
が。
今回に関しては完璧だわ。
挑戦者かもスタッフかも肯定の笑いが漏れる。
「笑いが取れて満足だ!」
三方ヨシ!
「次はBチーム。君たちは冒険者としての適性があった! ジョブを順に読み上げてくれ!」
「居権、ジョブは盗賊だよ」
クイ研じゃない学生だな。
昨晩は獣人系コールガールと安モーテルにしけこんでたやつ。
世慣れた雰囲気のナマイキそうな奴だな。
「後、ジョブは戦士」
C級戦士と意気投合してたもんね。
「塩湖、盾騎士」
後さんとシナジーある感じ。
「…………」
「若奥様拗ねてないで、ジョブ読み上げて!」
「新母春香、ジョブは補助魔法使い」
そうなのか。
新婚さんは全然縁がなかったから、それっぽいジョブなのかどうかも分からない。
「港ヶ陸。ジョブは魔法剣士」
オールマイティーじゃないか!
さすが穂積と言わざるを得ない。
あいつはいつも、こういう「ちょうどいい強さ」を引き当てる。
「全兎、魔法使い」
「広水、私も魔法使い」
いつも大体二人でいる女子大生。
いいとこの私大。
お見合いで赤門とセッティングされがちな。
「田婆、魔法使い」
関西ソサエティーの一部らしい。
合宿にはいなかった気がする。
今だニキビの跡がごつごつしてる、じゃがいもみたいな奴。
それにしても魔法使い多いな。
「まあ、クイズなんて知力勝負する連中だから、魔法使い過多もやむなしか」
わりとひどい言いぐさだな、黄石。
「さて、残りの連中が問題児たちだ。ジョブが特殊すぎて冒険者向きとも一般扱いとも判断つかない奴らがCチーム」
問題児とな?
俺って凄く普通の大学生なのでは?
閑君も普通の青年だって言ってたし。
「じゃあキングから行ってみよう!」
「荒火。ジョブはロードだ」
君主かよ!
異世界も認める王様っぷりとか笑えない。
撮影の様子を面白おかしく見物していた現地観光客らも驚いている。
「高貴な血を引いているのかしら」
「あの獣面っぷり。おそらくは獅子王国の血を引いているに違いない」
あるのか獅子王国。
俺はマジで血の繋がりを疑いたくなったぞ。
「椰子泉。ジョブはワイズメンよ」
現地観光客らがまたどよめいた。
「ワイズメンって、【四職】の?」
「ああ、勇者様のお供を最後まで務めた【四職】の魔法使いと同じだ」
「100年くらい出てないジョブだって聞くぞ」
大盛り上がり。
椰子泉さんもなんだかすまし顔。
荒火は意外とぐぬぬ顔。
「なにぼーっとしてるんだ新人類。あなたの番でしょ」
なんて、観察に費やしてたら自分の番来てた。
番組進行滞らせてすみませんねスタッフの皆さん。
「あ、市籠、ジョブはテイマーです」
現地観光客たちはノーリアクション。
まあ、名前からして大したジョブではなさそうだしね。
でも、このジョブの補正が地球にまで適応されるなら……
何か動物絡みの就職先、すげー有利じゃないか?
といっても。
馬主牧場主ならともかく、厩舎の雇われって先は無さそうだし。
動物園やサーカスなんかもキツそうな割に実入り良くなさそうだし。
テンマの動物王国? ナイナイ。
結論。
あんま意味ないわ、このテイマーってジョブ。
「衿衣。ペネトレイター」
観光客たちは揃って「??」な状態。
恐らく知られていないジョブなんだろう。
この子、こういう「説明されない強さ」持ってるよな。
多分意思の強さが関連してる。
「毛利井、ジョブはドリームキャッチャ―でっす!」
「なんだって!?」
観光客の中で唯一、エルフらしき男のみが大きく反応。
「知っているの?」
「ああ、かつて存在したと言われているハイエルフ様の職業だ…… なんでもあらゆる精霊との親和を示すのだとか」
魔物オタはやっぱり魔物オタだった。
……なんか俺の上位互換っぽさが有ってヤだけど。
「李野、ジョブはリドラーです」
謎かけ屋。ここも完璧だな。
それとも謎を追っかけるハンターか?
どっちにしても完璧。
「波名真、ジョブはジョーカーっす」
切り札か、道化か。
なかなか面白いところを突いてるな。
そして大トリはこの方。
「このジョブは嘘です」
「いいから読み上げなさいよ双滝さん」
「みんなで私を担いでるんだ……呪うよ?」
「ほらぁ、ジョブが滲み出ちゃってる!」
「信じて?」
「しょうがないなぁ、僕が代わりに読み上げてあげよう! ナースの双滝さんのジョブはカースメーカー! 呪いで相手の足を引っ張る魔術師だ!」
「いやーー!」
日本人は大ウケ。
現地観光客は引いてる。
文化摩擦だな。
笑い声の温度差が、やけにくっきりしてる。
同じ場にいるのに、見てるものが違う感じ。
「いいか? ここで行われますクイズは綱引き。綱引きの勝利チームが一問多答クイズの回答権を得る。一人ずつ答えて、全員が正答ならそこで勝ち抜けだ。勝ち抜けチームは本土上陸が決定!」
綱引き。
急に体育祭みたいなこと言い出したな。
でも、その後にちゃんとクイズが来るあたり、逃げ場はない。
「なお、このバトルフィールドでの【敗者復活戦はありません】。」
さらっと、とんでもないことを言う。
ここで負けたら終わり。
……そうか。
もし勝ったのだとしても。
ハナさんや大渓さんや垂須さん――この旅で絆を紡いだ人たちか。
穂積――俺の旧来からの親友か。
どっちかとここで、別れることになる。
と。
そういうことか。
……そうか。




