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空前絶後! 第十一回! 異世界ぐるりウルティモクイズ!  作者: 袴田八峰
第八BF:ザ・バレー 届け魂の叫び! こだまでしょうか? いいえ、上位存在です

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第八BF:ザ・バレー 8


 クイズ開始から一時間超。

 テンポよく進んだ五人の勝ち抜けは六分程度。

 それからはずっと、ほとんどの時間を、解答者が声を振り絞れど目鼻耳口様が答えないという、虚無の戦況が続いている。


 漂うのは勝負の熱気ではなく、徒労の悲愴。

 見ているのが辛い状況が続いている。

 そういう俯瞰視点なのに、解答台の三人は。


「僕はここにいます!」「クイズ作家になりたい!」「ボーイって呼ぶな!」


 真剣に戦っている。

 魂を謳っている。

 それがとてつもなく…… つらい。


 真剣に戦ってる……?

 魂を謳っている……?

 かどうか、わからない一名も、また。


「みんななかよく」


 レベルの落とされた問題に、回答権争いが出来るようにはなったのだが。


「みんななかよく」


 彼女の彼女らしい裏表無いワードにすら、こだまが返ることは無かった。

 これは恐らくスタッフ陣も誤算だったろう。


「タイムアップ」


「えー!?」


 黄石ももう彼等を煽らない。

 閾値を超えた弄りは画にならないからだろう。


 そんな、大人しく問題読み上げに集中していた黄石が、ふいに優しい声でクイズ戦士たちに語り掛けた。


「さて、これは真面目な提案なんだが」


 ゆっくりと憔悴する三人と、小動物のように小首を傾げてる一匹を見渡した。


「絶叫ワードを変更してみないか?」


 俺や茂侍のヒントを二つ合わせれば。

 奴ら(※除くハナさん)の頭脳なら。

 もう答えなんて、こだまに拾われる条件なんて。

 とっくに得ている筈なのに。


「変えられませんな」

《かえられませんな》


 幸節がせき込みながら宣言する。


「このワードは私の願いであり未来なのですから」


 ああ、そうだな幸節。

 認められないよな。

 自分の願いが間違ってるなんて判定される、そのこと自体を。


「僕もこのままで」

《ぼくもこのままで》


 墨市氏がかすれた声で宣言する。


「僕は誰かの影じゃないんです」

《ぼくはだれかのかげじゃないんです》


 一聴では意味の分からない言葉。

 だが墨市氏の人生や背景が伺い知れる言葉。

 彼はここで己の何かを踏み越えようと、あるいは向き合おうとしている。


「意地張ってる場合じゃないことはわかってるんっすよ」


 ボーイの呟きに、こだまは返らなかった。


「意地! 張ってる場合じゃないことは分かってる!」


 それでもこだまは返らない。


「でも、意地の一つも張れなくてなにが男の子っすか!」

《でもいじのひとつもはれなくてなにがおとこのこっすか》


 でも幼一郎…… てゆーかあえて、ボーイ。

 お前、「男の子」って、英語で「ボーイ」だぞ。

 それに気づけないからお前はボーイなんだ。


 だが……

 思いがけずにこだまに拾われたワードに、何かを感じた様子のボーイは……


「……ワード、変更するっす」


 黄石に、拗ねたような表情で宣言した。


「ちょっと考える時間くださいっす」


「OK2分やろう。……それで舞網ちゃん! 君はどうだい?」


「変えてもいいよ?」

《かえてもいいよ》


 ハナさんはトーンがだいぶ違う。

 深刻さの匂いがしない


「でもでも。ハナ他にワード思いつかないし」

《でもでもはなほかにわーどおもいつかないし》


「それはなぁ…… 困ったなぁ……」


 黄石が頭をぽりぽりと掻く。

 だいぶテカテカが絞れて来てて、普通に額に汗が光ってる。


「あ、そうだ! お友達と相談していいかな?」


「それは流石に認められないな」


「なんでなんで? 最初に5分相談タイムあったよね?」


「あれはクイズ開始前だろう?」


「でもみんな行き詰ってるよね? ずっと誰も神様に想いが届いてないよ?」


「そうではあるんだが……」


 黄石、目線で閑君に頼る。

 閑君は天を仰ぎ……


「あ、やっぱり相談いらない! ハナ思いついた!」


 ピコンっと電球を頭上に灯らせて、ハナさんはボードに汚い丸文字をかきかき。

 誇らしげに裏返した。


「ハナ、これでいきます!」


『ともだちにそうだんしたい!』


 あ、これ勝ったわ。

 次に抜けるのはこの子だわ。

 俺や茂侍のヒントは恐らく通じてないと思うけど、

 直感で…… あるいは強運で引き当てたわ。

 無垢で無敵なハナさんワード。


「お待たせっす、俺はこいつにかけるっす」


 くるっとボーイ…… いや幼一郎がひっくり返したボードには。


『NeverGiveUp』


 意地を張ることを「諦めない」か。

 ……おそらく幼一郎って男の魂が、その結晶が。

 ボードに削り出されていた。


 こいつが勝つなら「ボーイ」を認める方向しかないと思ってたんだけどな。

 男の子の意地でねじ伏せるとは、流石体育会系。

 文科系の俺では絶対届かない境地だわ。



「ネバ!」《ねばーぎぶあっぷ》

「ボーイ!」「カカオっす!」


 ぴんぽん!


「ともだち!」《ともだちとそうだんしたい》

「舞網ちゃん!」「おしょうゆ!」


 ぴんぽん!


「ネバ!」《ねばーぎぶあっぷ》

「ボーイ!」「青コーナー!」


 ぴんぽんぴんぽんぴんぽん!


「ともだち!」《ともだちとそうだんしたい》

「舞網ちゃん!」「20歳?」


 ぴんぽんぴんぽんぴんぽん!


 チャンピオンポーズのボーイ。

 ぴょんぴょん跳ねるハナさん。


 ワード変更の時点で二人は既に勝っていた。

 だからこの勝ち抜けは必然。


 そして――


「僕のワードはこのままで」

《ぼくのわーどはこのままで》


「私のワードも変更しませんぞ」

《わたしのわーどもへんこうしませんぞ》


 最も憔悴している二人が、こう答えるのも必然。


 墨市翔太。

 李野幸節。


 勝者の座席はあと一つ。



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