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空前絶後! 第十一回! 異世界ぐるりウルティモクイズ!  作者: 袴田八峰
第七BF:ヌー マラソンクイズおそろしや

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第七BF:ヌー 6


「左の席が空いてるな」


「膠着状態を打破するために解放したらどうかな?」


 垂須さんの提案に穂積が乗っかるが。


「反対反対!」


 先頭に立ってるモーリーは当然却下する訳で。

 それから数問。


 ぽーん!「波名真くん!」「えっと…… ゲリマルディ?」 ブー!


 異世界問題をまたしてもボーイに阻止されて。


 トン…… ダン!


 ぽーん! 「押し勝ったのは李野くん!」「ネクストヒッピー」ぴんぽん!


 珍しく簡単な時事問題に反応しかけたモーリーだったが、

 そのアクションが大きかったために察せられ、

 続く李野くんに時事問題で1ポイント取られて。


「モーリーは最後尾に映りなさい、さあ、急いで急いで」


「ううーーーっ」


 モーリーが穂積と垂須さんの後ろに回って。


「やっぱり左の列埋めようよ」


「それがいい!」


 不利になったモーリーが一転、同意して。


「俺は反対っすよ」


 戻って来たばかりのボーイが反対した。


「なんでそんなこというの!」


「じゃあ俺が左列を貰うなら賛成に転じるっす」


「なんでそんなこというの!」


 睨み合うモーリーとボーイ。

 一斉に足を止める挑戦者たち。


「僕はレディーファーストに一票かなぁ…… やっぱり男女、体力差あるし」


「ここは公平にシャッフルだろう」


 意見百出、盤面騒然。

 様子を伺っていた黄石が閑君に手を振り、判断を仰ぐ。


「放送中断!」


 馬車が、止まった。


 あれ……

 これ……

 もしかして…… 茶番?


 俺の視線を感じたのか、穂積が明らかにこっちに向けてニヤリと笑った。

 垂須さんは人差し指を唇に立てて、シー、のポーズ。


 やりやがったなこいつら!


 もっともらしい騎士道精神押し出して、進行を止めようと企んだか!

 ソサエティは察して乗っかったのか!

 いや、乗っかったのはソサエティだけではなく……


 相談している筈の黄石と閑君。

 これがもうおかしい。

 俺の知ってる閑君って男はいつだって即断即決。

 撮影中に黄石と相談タイムなんて持った試しはない。

 奴らの表情が「オトコノコ」してるのは気のせいじゃないはずだ。


「ふぅん」


 椰子泉さんがさっきから、何か怖い。

 気付かんふりしとこ。


 そして数分後。


 ともあれ閑君からも席移動は認められ、次は誰が移動するかという話し合いに移った。

 馬車はこの間、ずっと止まっている。

 ダンシングアンデッツもBGMを止めて休憩中。


 そのゾンビの群れを割って。

 男の子たちの待ち人がついに現れた。


 外したバンダナで左足の膝を縛り。

 魔王の王錫が如き禍々しい杖を突き。

 髪を振り乱して。


 並足より速く。

 走行より遅く。

 しかし着実に、荒火は近づいてくる。


「あの杖は一体……?」


 黄石が閑君に尋ねる。


「立ち上がっては崩れる彼を見て、応援に来ていた老紳士が杖を譲ったようです」


「スタッフでも挑戦者でもなく?」


「スタッフでも挑戦者でもなく」


「ならば。見過ごさぬわけにはまいりませんな、閑君プロデューサー?」


「ルールを一切逸脱していませんからね、黄石アナウンサー」


 空席の補填は認められた。

 結果、垂須さんのレディファースト案が認められ。

 その建前でモーリーが左の早押し台を独占した。


 他のメンバーは散らなかった。

 なんか茶番臭い言い争いをした末に、結局だれも動かなかった。

 荒火の顔はもう、肉眼で見えている。

 気高く歪んだ顔だ。


 剥き出しの闘争本能。

 崩れかけの肉体連動。


 その化学反応が、在り得ぬほどの存在感を醸し出している。

 音声さんの「ひっ」という短い悲鳴がマイクに拾われてしまうほどに。

 だが俺はカメラを迷わずパシャリ。

 わかる人にはわかる最高の一枚だ。


「よし! 撮影再開!」


 さらに速度を一段落とした馬車が進みだす。

 無線を受けたチーフスタッフが、ダンサーズに何やら指示を出している。

 おそらくダンサーズ追跡速度を馬車の速度に合わせさせるのだろう。


「いくぞ問題。」


 再開したなお、タイムアップは続く。

 これらを全て答えていたら、とっくにマラソンクイズは終わっていただろう。

 彼等に解答する力は十二分にある。

 でも、誰もそれを選ばなかったし、出し抜かなかった。


 言葉も無く、契約も無く。

 ただ、誇りと意地とが結んだ連帯感。

 俺は一人勝者席。


 正直、羨ましかった。

 あの熱量の中にいたかった。

 それは旅の絆とはまた別な、戦士のシンパシー。


「男の子ね…… 男の子」


 椰子泉さんが口内で消化できない何かを転がしている。


「せっせっせーの」


「よいよいよい」


 退屈になったハナさんは衿衣を巻き込んで手遊んでいる。


 温度差。

 温度差よ。


 クイ研の問題潰しがさらに一周し。

 問題にして13問を消費した頃。

 黒き王は魔王の錫杖を伴い帰還した。


「しぶといなー荒火。とっくに諦めちゃったかとおもったぞ僕ぁ」


 黄石はいつもの黄石で。


「我がソサエティーに敗北はあれども停滞は無し」


 荒火はいつもの荒火で。


「しっかり最後までついてこい。いくぞ問題!」


 戦いが再開された。

 男子協定がここに解除された。


「シンドリッタ・シンドレッタのコレクションで発表された、胸元の――」


 ポーン!


「墨市くん!」


「ローブ・デ・コルテ」


 ピンポンピンポンピンポン!


「勝ち抜けおめでとう!」


 しかし墨市氏は勝者席に移らずに挑戦者に並走する。

 一歩前へ出てきたのは一歩前へ進む男、垂須歩。


「問題。北ポンガン寺の狐囃し――」


 ポーン!


「垂須くん!」


「ジョウジョウ寺!」


 ピンポンピンポンピンポン!


「勝ち抜け! おめでとう!」


「しゃああっ!」


 ひとしきり叫ぶと垂須さんは勝者席に移って来た。


「やりましたね垂須さん!」


「はは……今回も沢山走らされたよ。きっとマメ出来ちゃってる」


 グーパンを重ね合う。

 はしゃいでる。

 俺も、垂須の兄貴も。


「あなたは彼等と走らないのね?」


 すっと差し込まれたのは椰子泉さんの声。

 どこか冷たさがコーティングされている。


「そこまでの絆はないんで」


「でも遅延工作には乗ったでしょ?」


「その程度の絆はあるんで」


「男の子ですからね!」


「男の子だったろう?」


 俺と垂須さん、再びのグーパン重ね。

 一方の椰子泉さんは軽くため息をつくと。


「男女の溝は深いわね」


 そう呟いて、怖い雰囲気を解除した。


 ポーン!


「港ヶ陸くん!」


「スーパーカルロブラザーズ!」


 ピンポンピンポンピンポン!


「勝ち抜け! おめでとう!」


 穂積の勝利。

 気付けば王の配下たちはみな勝ち抜けていた。

 勝ち抜けてなお走っている。

 自らの王に並走している。


 ルールに厳しい閑君も彼等を勝者席に強制移動させないし、

 黄石も彼等をちゃかさない。

 画になるからだ。

 感動を呼ぶからだ。

 彼等が優秀なテレビマンで――

 そして男の子だからだ。


「あー、もう! 異世界問題来てよ異世界問題!」


 残っているのはただ二人。

 落っこちるのはただ一人。


 勝負は最終局面。

 苛立つモーリーに意識朦朧の荒火。


 そして最後の問題が放たれた。


「ワイズメンズタワーが定める魔術分野において――」


 六問ぶりに来た異世界問題。


 モーリーが猛禽の様にボタンを鷲掴む。

 問題の形が明確になり次第、押しの構え。


 対するキングは常の猫握り。

 脂汗塗れのその姿は、しかしどこか、いつかの座禅姿と重なった。


 風が止まる。


 呼吸も止まる。


 チュ、ランラン、デューワーラッ!


「現在け――」


 バン! ドン!


 打釦音は同時。


 しかして感嘆符が起き上がったのはキングの早押し台!


 黄石が息も絶え絶えに王の名を叫ぶ!


「あら、すか、くんっ!」


 王は静かに、勝利を自ずから宣言する!


「時空魔法」


 ピンポンピンポンピンポン!


「君の気概、見せてもらったぜ」


 馬車が止まる。


 モーリーは絶叫しながら後方へ倒れる。


「あ゛~~~~~~~っ゛!!」


 キングは言葉も無く前のめりに崩れる。


「…………」


 が、地面にぶつかる前にソサエティーの面々が王を支えた。


「我が王~~ッ!」


「押し勝ちましたな」


「勝利ですよ」


「お疲れさまっス」


 一方のモーリーは仰向けに寝っ転がって手足をバタバタさせていた。


「もーもーもーもー!」


 駄々っ子の構え。

 黄石はてかてか笑顔で敗者インタビューに向かう。


「モーリー、おっこっちゃったなぁ!」


「くやしいいいいいっっ!」


「お前、集中砲火くらってたもんなぁ」


「そんなのはどうでもいいの! 悔しいのは! 異世界問題で押し負けたこと!」


「僕も最後の問題を読み上げながら、君が勝つだろうなと思っていたよ。でもこれが勝負の世界なんだよなぁ」


「あ゛あ゛ん゛! もーもーもー!」


 感情を整理しきれないまま再びの駄々っ子の構え。

 疲れを見せないアンデッドダンサーズの踊りは揃って「アぉウ!」して終了。

 沿道からは見物客からのあたたかな拍手。


「く゛や゛し゛い゛い゛い゛! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」



 第7バトルフィールド。


 魔物偏愛の異世界オタク・モーリーこと毛利井栞。


 唯一の武器を正面から返り討たれ、悔しさを抱いて敗北。



「ペナ仕置きではなぁ……バンパイアにお前の血をちゅーちゅー吸って貰うぞ?」


「ハイ! 牙の鋭い真祖がいいでっす!」



 ――悔しさどこ行ったよ?



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