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ようこそ!異世界ペンション・アイリスへ~ペンションとともに異世界転移したら、いつの間にか伝説のドラゴンを倒していました~  作者: 西園寺紗夜


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18.晴れて冒険者に

セリさんが立っていたカウンターに、改めてミトさんという女性が立った。


「先程は我が支部の職員が大変な失礼を働いてしまい、申し訳ありませんでした」


セリさんの代わりに私達に深々と頭を下げてくれる姿が非常に気の毒だ。


(この人は全然悪くないのに……後輩の尻拭いをさせられて大変だな)


これまたOL時代の嫌な記憶が蘇ってきそうだったので、無理やり頭から追い出した。


「いえいえ、私は全然気にしていませんから!」


だけどシーヴァ君はまだ腹に据えかねているようで、


「金輪際あの職員を近づけさせないようにして下さい」


憮然とした表情で言い放った。


「もちろんです。今後は二度とお二人の担当はさせませんし、当分はカウンターに立たせることもございませんので」


ミトさんは神妙な顔でもう一度頭を下げた。


「『紅蓮』の皆様も、お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ございませんでした。こちらの方々は私が誠意をもって担当させていただきますので」


今度は、私達を援護してくれた冒険者の皆さんにも頭を下げた。


「あ、あの、先程はありがとうございました!」


赤髪の男性に頭を下げると、シーヴァ君も揃ってお辞儀をした。


「いや、当たり前のことをしただけだ。冒険者が危険に晒されることは仕方がないことだとしても、ギルドが意図的に冒険者を危険に晒すなど許されないからな」


と大人の余裕で返された。


「誠にお恥ずかしい所をお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」


男性職員も額に汗をかきながら何度もペコペコした。


「ところで、早速なのですが例の件について支部長が


「分かっている。行こう」


後ろの3人に声をかけ、一行はカウンター脇にある階段を上がっていった。


「流石は『紅蓮』だぜ!」


「だよなぁ!あれがSランクパーティーの風格ってやつか!」


後には、周りの感嘆の溜め息だけが残された。


「あのさ、シーヴァ君」


コソッと彼に耳打ちした。


「本当に聞きにくいんだけどさ……」


「なんですか?」


一段と声を落とし、


「『紅蓮』ってそんなに凄い冒険者なの?」


「えっ……とッ!」


大声が出そうになった所をシーヴァ君は慌てて自分の口を押さえた。


「いかがなさいましたか?」


シーヴァ君の様子にミトさんが声をかけた。


「な、何でもありません!」


慌てて手を振ると、彼女は再びカウンターデスクの上の書類に目を落とした。


「いや本当にごめんね、知らなくて」


「い、いえいえ!僕こそ、説明が遅くなってしまいすみません!」


ミトさんがカウンターで依頼書を見繕ってくれている間にシーヴァ君が小声で説明してくれた。


「『紅蓮』は剣士・ギルバートをリーダーに据えた、4人組の冒険者パーティーです」


「剣士・ギルバートって、あの赤い髪の男性?」


「はい。このパーティーがなぜ有名なのかというと、全員がSランク冒険者だからなんです」


確かに、さっきからギャラリーが彼らのランクについて何度も話題にしていた。


「Sランク冒険者がいるパーティーはもちろん他にもありますが、大体はSランク冒険者を筆頭に、AランクやBランクの冒険者も混ざって構成されていることが多いんです。『紅蓮』以外にSランク冒険者だけで構成されているパーティーなんて他にはないんです」


「なるほど。だから、いい意味で異色のパーティーなんだ」


私が納得すると、シーヴァ君も頷いた。


「リーダーが赤髪の人間の男性で剣士・ギルバート、ドワーフの男性が重騎士・ヴァルドン、狐の獣人の女性は魔法使い・ミリス、エルフの女性がヒーラー・ルティナです。このパーティーは冒険者としての実力は言うまでもないんですが、これまでの実績からギルドへの発言力も強くて、ギルドマスターからも一目置かれている存在なんです」


「ギルドマスターっていうのは、ギルドで一番偉い人なんだよね?」


「はい。全てのギルドを統括する最高責任者です」


ここまで説明してもらい、ようやく彼らの凄さが理解できた。


「お待たせ致しました」


そこで、ミトさんに声をかけられた。


「シーヴァさんにお渡しした依頼書は内容に大きな問題がないので、このまま受理させて頂きたいと思います。そしてこちらが、アヤメさんへの依頼書です」


手渡された依頼書の内容は、シーヴァ君と同じく近くの森での薬草採取だ。


ただ、採取する薬草の種類が違う。


期限も、私の方は5日後までと非常に良心的だ。


「先程の職員が申し上げたとおり、新人冒険者の初めての依頼はギルドが指定した物となっております。採取場所もこの町の近くの森で、魔物も滅多に現れず、目的の薬草もすぐに見つけられるかと思われます」


どうやら、新人冒険者にふさわしい非常に簡単な依頼内容らしい。


ミトさんは説明を続けた。


「なぜこのようなことをするのかというと、冒険者としてギルドの依頼を期限までにこなす最低限の自己管理ができるかどうかを見極めるためです。言葉を選ばなければ、この程度の簡単な依頼の期日も守れない冒険者には、ギルドは安心して仕事を依頼できないということです。実際、この初めての依頼すらまともに達成しようとしない方が毎年数名いらっしゃいますので」


(なるほど……納期、大事だよね)


「もちろん、依頼の難易度によってはそれに伴う危険も高くなり、不測の事態で依頼が失敗してしまうことも重々承知です。ですが、ギルドへ仕事を依頼する依頼者様は、依頼達成報酬以外にギルドへの仲介料を余分に支払うことで冒険者に仕事を依頼されております。依頼の未達成は、報酬だけでなく、依頼者様からの信頼をも失うということを意味しますので、ぜひ心に留めて頂きたく存じます」


「分かりました」


シーヴァ君が真面目な顔で頷いた。


(ギルドって、この世界の人材派遣会社みたいだな)


「期限までに目的の薬草を採取し、ギルドに持ってきて頂ければ依頼は達成となります。その際に冒険者ライセンスも一緒に提出して頂き、ライセンスに依頼達成の記録ができれば次の依頼を受注することができます」


「念のため確認したいんですけど、もしこの初めての依頼を達成できなければどうなるんですか?」


と質問すると、


「通常の依頼であれば、例え達成できなくてもペナルティーが課せられるだけです。ですが、この初めての依頼においては、達成できなかった場合ライセンスを剥奪させて頂きます」


と厳しく言われてしまった。


要するに、


『こんな簡単な依頼もこなせない奴は冒険者には必要ない』


ということなんだろう。


「その他の注意事項については、お渡しした冊子をご参照下さい。何かご質問等がありましたら、いつでもこちらにお立ち寄り下さい」


そして、


「それでは、お二人のライセンスと依頼書を再度ご提出下さい。こちらで、ライセンスに依頼内容を記録しますので」


ミトさんに依頼書とライセンスを渡し、ライセンスに依頼内容を記録してもらった。


興味本位でカウンターを少し覗くと、水晶玉のようなものにまず依頼書を翳し、次にライセンスを翳すと、ライセンスが一瞬仄かに光った。


「はい、これで依頼の受注が完了しました。ライセンスをお返しします」


返されたライセンスの裏表を見ても、何か追加されたことはないようだ。


(前の世界で磁気カードに記録していたのと同じ感じなのかしら。これだけは随分ハイテクね)


ミトさんは改めて私達に会釈した。


「それでは、お気をつけて行ってらっしゃいませ!」


初っ端から躓きそうになってはいたけど、どうにか私達は冒険者生活の第一歩を始めることが出来たのだった。


読んで下さり、ありがとうございます!

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