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ようこそ!異世界ペンション・アイリスへ~ペンションとともに異世界転移したら、いつの間にか伝説のドラゴンを倒していました~  作者: 西園寺紗夜


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19/19

19.初めての依頼と魔物遭遇

一悶着あったギルドを後にし、私達はそのまま森の方に歩いていった。


「まだお昼にもなっていないし、依頼も簡単そうだから、さっさと済ませちゃいましょ!」


「そうですね!」


昨日は夕暮れ時だったけど、太陽が明るく差し込む木陰の中を歩くのは、格別に気持ちよかった。


気分はちょっとしたハイキングだ。


「あっ、アヤメさん!」


不意にシーヴァ君が指を差した。


「あれ、アヤメさんの依頼書に載っていた薬草じゃないですか?!」


慌てて依頼書に描かれている絵と見比べる。


「確かに……もっと近づいてみましょう!」


「はい!」


しゃがみ込んで、葉っぱの形や花のつき方などを注意深く観察した。


「……本当だ!これで間違いないわ!」


「やりましたね、アヤメさん!」


私よりもシーヴァ君の方が喜んでくれた。


「シーヴァ君のお陰よ、本当にありがとう!」


「アヤメさん……!」


なぜかシーヴァ君が感動しているが、彼の努力を無駄にしないように手早く採取した。


「今度はシーヴァ君の番だね。私も一緒に探すから頑張りましょ!」


「ありがとうございます!」


それから歩くこと数分。


「アッ、あれじゃない?」


視線の先に生えていたのは、シーヴァ君の依頼書に載っていたのととてもよく似た植物だ。


シーヴァ君は駆け寄ってしゃがみ込んだ。


「そっくりです、間違いありません!」


「よかった!」


「ありがとうございます!」


見間違いかもしれないと思ったけど、そうでなくてホッとした。


シーヴァ君が採取した所を確認し、


「無事お目当ての薬草も手に入れたことだし、ギルドに戻って依頼達成しちゃおうか」


と声をかけた。


薬草を探し始めて1時間も経っていないだろう。


本当に簡単な依頼だった。


(こんな簡単な依頼もまともにできなければ、確かに冒険者は無理よね)


『初めての依頼を達成できなければライセンス即剥奪』なんて一見厳しく聞こえるけど、これは多分ギルドの温情だ。


本格的に冒険者として活躍するようになれば、より難しくて危険な依頼も受けるだろうに、これしきの依頼を達成できない自己管理能力では無駄死にさせてしまう可能性が高いということだろう。


「今からギルドに戻って、ちょうどお昼くらいでしょうか。ご飯はどうしますか?」


「そうねぇ。メイちゃんが何をしているかも気になるし、一旦ペンションに戻りましょうか。簡単に昼ご飯作るから」


「僕もお手伝いします!」


そんな話をしていた時だった。


―――ガサッ!


「ッ?!」


突然後ろの草むらが揺れ、慌てて振り向くと、


「……これは?」


目の前に現れたのは、バスケットボールくらいの大きさで、大福みたいな形をしたナニカだった。


体は薄ら透き通っていて、全体的に水色っぽい。


その中には、2つの小石みたいなものが目のように埋め込まれていた。


「スライムですね」


シーヴァ君が答えた。


「スライムって……あの、新人冒険者が最初によく倒しているヤツ?」


「その通りです!アヤメさんの世界にもスライムがいたんですか?」


「いや、いなかったけど」


もっと言えば、私の知識なんてゲームやアニメで聞き齧ったくらいだ。


「スライムはEランク冒険者でも倒すことができるくらい弱い魔物ですし、あっちから攻撃してくることも滅多にないですね」


シーヴァ君の言う通りらしく、スライムはゼリーのようにフルフル震えながらピョンピョン跳ねているだけだ。


「こうしてみると……何だか、可愛いわね」


スライムも魔物だけど、ペンションの玄関から見た異形達に比べれば全然怖くない。


和やかな気持ちでほのぼのとスライムをジッと見つめた。


その時だった。


―――ッ!


一瞬硬直したように動きを止めたかと思ったら、いきなりチリのように消えてしまい、


「えッ?!」


いつの間にか、スライムが飛び跳ねていた場所には混濁した紫色の小さな石が落ちていた。


「えっと……これは……どういうこと?」


何が何だか分からなくて呆然としていると、シーヴァ君がサッとスライムがいた場所に駆け寄った。


「これは、魔石ですね」


落ちていた結晶を手に取り、私に見せた。


「魔石って、魔物を倒した後に落ちる石だっけ?」


「はい。だけど、どうしていきなりスライムが倒れたんでしょうか……」


シーヴァ君も魔石を見ながら首を傾げる。


「そうだよね。私達は特に何もしていないのに」


私もウーンと首を捻るが、シーヴァ君が分からないのであれば、この世界の右も左も分からない私に分かる訳がない。


「その魔石もギルドに持っていけば、お金になるんだっけ?」


「はい。といっても、スライムはとても弱い魔物で魔石もとても小さいですから、大したお金にはならないと思いますけど」


「でもまあ、一応持っていこうよ。私も換金するのってどんな様子なのか見てみたいし」


「そうですね。せっかくですから、持ち帰りましょうか」


そう言って、シーヴァ君は自分の手荷物に魔石を入れた。


「今思ったんだけどさ、そう言えば私達武器とか持っていないなぁって」


スライムを見てからこんなことを考えるなんて、我ながら危機回避能力が無さすぎる。


確かにここは非常に安全な森の中なのだろうけど、スライム以上に強い魔物が出てこないという保証はどこにもないのだ。


「確かに……すみません、僕もうっかりしていました!」


シーヴァ君も途端に焦り出した。


「まあ、仕方ないよ。私も今気づいたんだし」


とシーヴァ君を慰めた。


「ギルドで報告と換金したら、ペンションに戻る前に武器屋に行ってみよう。これからもっと依頼を受けていくなら、武器は絶対にないと困るから」


「そうですね……」


まだ少し元気が戻っていないようだけど、シーヴァ君も気を取り直して歩き出した。



「はい、お二人とも依頼達成です。お疲れさまでした!」


ギルドに戻るとミトさんが目敏く私達を見つけてくれたので、そのまま依頼書の薬草とライセンスを彼女に渡した。


「今後の依頼については、あちらの掲示板に掲載されている依頼書をご自分で選んで、こちらのカウンターにお持ち下さい。ただし、お二人はEランク冒険者ですので、基本的にダンジョンに入場する依頼を選ぶことはできません。また、依頼書には難易度がEからSまでつけられています。これは御自分のランクと相関するものだと思って下さい」


「そうすると、私達は難易度Eの依頼しか受けることができないんですか?」


と尋ねると、


「そう言うわけではありません。例えば難易度Eは、『この難易度であればEランク冒険者でも達成可能だろう』という目安ですが、冒険者の中にはEランクでも実力がある方もいらっしゃいます。ですから、ダンジョンが関係なければ、極端な話、難易度Sの依頼も受けることは可能です。ですが、難易度が上がれば当然危険も増えますし、一度受けた依頼は余程の事情がない限りキャンセルはできません。また、依頼を失敗すれば当然ペナルティーが課せられ、最悪ライセンス剥奪となる場合もあります。ですから、御自分の実力に見合った依頼を受けることを強くお勧めします」


と説明された。


フンフンと納得していると、シーヴァ君が先程のスライムの魔石取り出した。


「あの、先程森で遭遇したスライムの魔石なんですけど、どこで換金すればよろしいでしょうか?」


するとミトさんが、


「魔石もこちらで回収させていただきます」


と手を差し出したので、シーヴァ君は手のひらに石を載せた。


「これでいくらくらいになるんですか?」


ちなみに、魔石はアーモンドチョコくらいの大きさだ。


「そうですね、この大きさですと……10Gですね」


10G……たった10円か。


子供のお小遣いにもならないな。


「スライムは冒険者でなくても倒せますからね。最も、魔石を換金するためにも冒険者登録が必要なのですが」


銅貨10枚がスッとカウンターに置かれた。


「魔物が強ければ強いほど得られる魔石の質も高くなり、当然換金した際のお値段も高くなります。また、ご自分のランクをあげる際にも魔石の提出が必要となります」


「えっ、そうなんですか?」


思わず声を上げると、ミトさんが頷いた。


「冒険者の主な役割はダンジョンの探索と魔物の討伐です。魔物討伐は魔物による被害を抑えると同時に、魔石という魔力源を得られます。そして、魔物を討伐したその証がこの魔石となりますので、より多くの、より大きな魔石を提出できる冒険者はランクを上げていくことができるのです」


ミトさんが先程手渡された冊子を手に取り目的のページを開いた。


「ご自身のランクを上げるためには、今のランクと同ランクの魔石を50個、一つ以上上のランクの魔石を1個提出する必要があります。採取できる魔石の質によってランクづけられておりますが、そのベースとなっているのがスライムです。Eランクの魔物はスライムだけであり、採取できる魔石もEランク。お二人がランクアップするためには、最低でもスライムの魔石50個、スライム以外の魔物から採取した魔石を1個提出していただく必要があります」


要は、スライムの強さや魔石をベースに他の魔物のランク付けがされている訳か。


そもそも冒険者の始まりが魔物から村を守る自警団だったのだから、より多くの魔物を倒せばランクが上がるというのは、確かに理にかなっている。


「提出した魔石の種類や個数もライセンスに登録しますので、提出の際はご提示をお願いします」


「それでしたら、アヤメさんの方で登録を


「いいよいいよ。スライムならまた倒す機会ありそうだから。シーヴァ君の方で登録してもらって」


シーヴァ君が譲ろうとしてくれたが、魔石を提出したのは彼なので、今回は彼のライセンスに登録してもらった。

読んで下さり、ありがとうございます!

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