6. 店を見つけた夜
「止まれ!」「止まれ、逃げるな!」
シシは、厨房で料理をしていた年配の女たちに散々殴られた末、なんとか逃げ出すことができた。脇には小さな袋をしっかりと抱えている。細い身体に鞭を打ち、力の限り宮殿の入口へ向かって走っていた。
「また逃げられましたね」
走り続けながら、シシは振り返った。頬を涙が伝っているにもかかわらず、笑っていた。
料理をしていた女たちに殴られ、引っ張られたせいで、古びた灰色の服の袖は破れていた。
まだ十五歳の痩せた少女だったが、何十人もの腕利きの料理人たちの中で試験に合格し、氷の宮殿の厨房で働くことになった。
女たちから完全に逃げ切ったことを確かめるため、シシはもう一度後ろを振り返った。逃げ切ったと分かると、深く息を吐き、壁にもたれかかった。
「また食べ物を盗んだのか?」
廊下を通りかかったのは、カステロ司令官だった。
「カステロ!」
シシは彼を見ると、ほっとしたような表情を浮かべた。声も落ち着いた。
「もう一度、私を名前で呼んだら、ただでは済まさんぞ」
司令官は少女の腕を乱暴につかみ、揺さぶった。
「『司令官様』と呼べ!」
カステロは容赦なく少女の腕を握り続けた。
「分かったか?」
鋭い声で言った。
「分かりました、司令官様」
シシの声が一瞬小さくなり、顔から笑みが消えた。
「それを渡せ!」
司令官は怒ったように言った。
殴られたせいで、顔や身体、細い腕にはいくつもの痣ができていた。それでも、脇にしっかりと抱えて隠している袋を渡すつもりはなかった。
「渡せと言ったんだ!」
カステロ司令官も諦めなかった。少女の腕を何度も引っ張り、袋を奪おうとする。
シシはまるで大切な宝物を失うかのように、腕を開かず、必死に耐えていた。
「司令官! その子を放せ!」
司令官のアイマンが、兵士たちの様子を確認して戻ってきたところだった。
二人の司令官は、どちらも十七歳の勇敢な若者だった。二人とも副隊長を務め、どちらも優れた戦士だった。だが、二人は初めから互いに気が合わなかった。
「また誰かに助けてもらえてよかったな!」
カステロは少女を壁に押しつけてから、腕を放した。アイマンに返事をする気さえなかった。しかし、アイマンは自分の邪魔をした。カステロ司令官は、アイマンへの敵意を示すかのように、彼の横を通り過ぎる際、肩を強くぶつけた。
アイマンは、こうして肩をぶつけられることには慣れていた。もう反応することもなかった。
「シシ、どうして食べ物を盗むんだ? 厨房なら好きなだけ食べられるだろう」
アイマンは少女の腕をつかみ、優しく立たせた。
「私のことが嫌いなんです……」
シシは震える声で言った。涙で潤んだ目で、カステロ司令官の後ろ姿を見つめていた。
「違う。お前のことを嫌っているわけじゃない……。あの人はお前の兄で、司令官なんだ、シシ」
アイマンは彼女の顔を見ながら言った。
「ただ、お前の行動があの人を恥ずかしい思いにさせているんだ」
シシは、自分が兄を恥ずかしい思いにさせていると毎日のように聞かされていた。だが、それがどういうことなのか、アイマンに言われて初めて理解した。
「気をつけろよ」
司令官は注意するような、それでいて優しい声で言うと、扉へ向かった。
彼が去ると、シシは自分の姿を見下ろした。破れた古い服の裾には埃がつき、長い黒髪は乱れていた。手には引っかき傷がいくつもある。身につけているもので唯一まともに見えるのは、ブーツだけだった。
氷の宮殿は街からそれほど遠くない場所にあったが、山の麓に建っていた。庭の一部から下へ向かって、薄く雪の積もった緑の斜面が広がっている。
アイマンはカステロの隣に立ち、腕を後ろで組んだ。
二人の司令官が乗るクマは、翼を激しく羽ばたかせながら宮殿へ近づいていた。
幸村隊長とボラ隊長が、森の宮殿から戻ってきたところだった。
「覚悟しておけ。もうすぐ隊長の怒鳴り声が始まるぞ」
アイマンを苛立たせるようなことを言うのは、カステロの趣味の一つだった。アイマンは普段、彼の言葉には反応しなかった。しかし、幸村隊長について間違ったことを言われると、話は別だった。
「正しく言え!」
隊長たちが近づいてくることも気にせず、アイマンは剣を抜き、カステロの喉元に突きつけた。
カステロは、またしても隊長たちの目の前でアイマンを怒らせることに成功していた。喉元に剣を突きつけられても、顔に浮かんだ嘲るような笑みは消えなかった。
「また何を揉めているんだ?」
ボラ隊長はクマから降りると、二人のもとへ歩いてきた。
「アイマン!」
幸村隊長はボラ隊長ほど気が長くなかった。二人の司令官がそんな状態になっているのを見ると、声を荒らげた。
アイマンは剣を背中の鞘に収めた。顔には不安の色が浮かんでいた。アイジャン隊長がルーナを自分の宮殿へ連れて行ってしまったことを、できるだけ早く隊長に伝えなければならなかった。
「隊長……」
アイマンが話し始めた。
「アイジャン隊長が、地獄の天使を連れて行きました」
「何? なぜ許した?」
隊長は怒ったように言った。
「国王陛下ご自身の命令だと言っていました、隊長」
カステロがアイマンの言葉を遮るように説明した。
「なぜ連れて行ったんだ?」
ボラ隊長が、いつもの落ち着いた口調で尋ねた。
「夜になったら、ヘル・ショップを探すために彼女を街へ連れて行くそうです」
国王の命令に対しては、隊長たちでさえ逆らうことはできなかった。
夜を待つしかない隊長たちは宮殿へ戻り、準備を始めた。
氷の戦士たちは、北の王国にカエデの木々に囲まれた謎の土地が現れるより、ずっと前から存在していた。地獄の天使たちが現れる以前、彼らの役目は他の王国と戦い、自分たちの王国を守ることだった。
しかし、カエデの木々の向こうに隠された土地が姿を現してから、王国同士の戦いは止まった。すべての注意が、その謎の土地へと向けられた。
他の王国がただ軍隊を準備して待っている一方で、北の王国はすでに戦いを始めていた。
氷の戦士たちは、店を見つけるために毎晩、巨大な街の上空を何度も飛び回っていた。
しかし、身体に氷の結晶を宿す戦士たちは、店から漂ってくる暖かさを感じることができなかった。
夜が訪れた。
隊長たちと司令官たちは、兵士たちとともに石の宮殿の前で、いつでも飛び立てるよう待機していた。
「隊長、天使の準備ができました」
カイ司令官はホッキョクグマの手綱を握っていた。
石の宮殿の屋根には、ホッキョクグマたちが一列に並んでいた。
しかし今日は、その先頭にいるクマの一頭が、戦士でも人間でもなく、地獄の天使を背に乗せることになっていた。
ルーナの腕と足は、クマの背中に取り付けられた重い金属製の鎧に鎖でつながれていた。さらに翼も背中で鎖によってきつく縛られていたが、溶岩は流れていなかった。ルーナはクマを焼かないよう、翼から流れ出る溶岩を止めていた。
「隊長、たとえ店を見つけても、場所を教えてくれるとは限りませんよ」
司令官カイは黒い革のベストの両脇をきつく締め、白いシャツの袖を金の腕輪の中へ押し込んだ。
「あれは天使だ、カイ。口が言わないことでも、身体が教えてくれる」
隊長は言った。
ホッキョクグマの翼から降り注ぐ雪と、その大きな身体から放たれる冷気は、ルーナをひどく疲れさせていた。地獄の天使の目は、今にも閉じそうだった。
アイジャン隊長は天使のすぐそばを飛んでいた。一瞬たりとも目を離さず、ルーナを見つめている。
もし店が近くにあるのなら、天使は何か反応を示すはずだった。
――あるいは、それは隊長がそう思っているだけなのかもしれない。
幸村隊長はルーナを守ることができなかった。彼は無力感を抱えながら、後ろから彼女を追っていた。
二人の隊長が地獄の天使に目を向けている中、まともに自分の仕事をしていたのはボラだけだった。彼は周囲を警戒し、兵士たちにどの方向へ進むべきか指示を出していた。
「隊長、心臓が……」
カイは他の司令官仲間とは違い、興味深そうにルーナを見つめていた。
ルーナの胸に光が現れた。
まるで皮膚の下で小さな炎が燃え、その光が外へ漏れ出しているかのようだった。
「店は近い。通りを探せ!」
まだ戦いは始まっていなかったが、アイジャン隊長はまるで勝利を手にしたかのような声で叫んだ。
戦士たちとホッキョクグマたちが運んできた冷気は、すでに店へと届いていた。
「ゼヴィアン、お客さんたちだ」
ラドゥラス家の末の王子、アルヴェスにとって、この国での初めての日だった。
ゼヴィアンと同じ店で客たちへの対応を学ぼうとしていたところ、彼らは戦士たちに見つかってしまった。
「みんな、落ち着いて」
上から降りてきたゼヴィアンが声をかけた。
「全員、僕が外へ出す」
客たちは、店のカウンターの前で待っていることしかできなかった。
「俺はもう罰を受けた」
客の中にいた中年の男が、ゼヴィアンを見ながら言った。
「もし戦士たちに殺されたら、地獄には落ちないんだろう?」
人々を救う方法を探していた地獄の天使は、その男の自分勝手な質問に腹を立てた。
「地獄は、お前みたいな奴のせいで息をすることさえ苦しんでいるんだ!」
ゼヴィアンは、視線にも声にも隠しきれない怒りを抱えたまま、男の前に立ちはだかった。
「お前さえ死ねばいい! 地獄だって、お前を受け入れはしない!」




