5. 冷えゆく地獄
長い間、地獄の下層で過ごした後、ヴェルヴェクはようやく翼を広げ、太陽の下を自由に飛べるようになった。ヴェヴァリアとともに、白い大地の中でも街から離れた美しい場所へと身を寄せていた。
長い時間を経て、二人の恋人は再び一緒になった。
休暇になるたび、観光をするためではなく、誰からも離れて二人きりになるために街を離れていた。
天使たちは、ほんの一瞬たりとも互いの手を離さずに歩いていた。まずは街の周囲に広がる、ひび割れた砂漠を巡った。昼間は太陽の光を浴び、夜になると乾いた大地に横たわって星を眺めた。
白い大地のほぼ至るところに、小さなものから大きなものまで、時には果てが見えないほど広大な果樹園があった。果物の籠が空になると、ヴェヴァリアはすぐ近くの果樹園へ行き、新鮮な果物を摘んできた。
二人が最も気に入っていた場所は、白い山々だった。天使たちは普段、そこへ来ることはなかった。街からあまりにも遠かったからだ。険しい山頂を持つ巨大な山々には、いくつもの洞窟があった。二人はいつも、まるで習慣のように、休暇の最後の日をこの洞窟で過ごしていた。
「だめ、開かないで」
ヴェヴァリアは、ヴェルヴェクの翼の間から小さな声で言った。
「僕たち、結婚して何年になる?」
ヴェルヴェクは翼を開かないまま、彼女の瞳を見つめた。
「三年」
ヴェヴァリアは、申し訳なさそうに視線を逸らした。
「まだ僕に恥ずかしがってるのか?」
そう言いながら、ヴェルヴェクは手で彼女の首を優しく撫でた。
「あなたのせいよ」
ヴェヴァリアは、夫の触れ方に酔ったように目を閉じ、ゆっくりと頭を横に傾けた。
「いつも私を隠すみたいに、翼の中で愛してくれたもの」
彼女は目を閉じたまま、頬をヴェルヴェクの手に寄せて微笑んでいた。
休暇の最後の日には、観光も、飛ぶことも、果物も、本もなかった。ヴェヴァリアが望んでいたのはただ一つ。裸の身体をヴェルヴェクの肌に寄せ、彼の翼の中に身を隠すことだった。
「目を閉じて」
ヴェヴァリアは、突然勇気が湧いてきたような表情でヴェルヴェクを見つめた。
「何を考えてるんだ?」
ヴェルヴェクは微笑んだ。
「閉じてて。私が開けていいと言うまで、絶対に開けないで」
その声に込められた決意に、ヴェルヴェクは興味をそそられた。
「翼を開いて」とヴェヴァリアが言った。「でも、目は開けないで」
ヴェルヴェクは急がずに、ゆっくりと翼を広げた。
ヴェヴァリアは洞窟の外へ飛び出した。
「もう開けていいわ」
彼女の声が響いた。
ヴェルヴェクが目を開けると、目の前の光景に息をのんだ。
彼は立ち上がり、洞窟の入り口へ向かって歩いた。妻の肌を初めて太陽の光の中で見た瞬間、彼は立ち尽くし、ただ彼女を見つめ続けた。ヴェヴァリアは翼を広げ、空中で待っていた。
それでもヴェルヴェクは見つめ続けていた。彼が見つめる一秒一秒の間に、翼を走る溶岩の筋が広がっていった。溶岩は絶え間なく地面へと流れ落ちていた。
「愛しい人……」
もう見つめ続けることはできなかった。彼は、この美しさに触れたかった。
「とても綺麗だ!」
ヴェルヴェクは周囲に溶岩を撒き散らしながら翼を羽ばたかせ、ヴェヴァリアを抱きしめた。
そして、彼女の身体を優しく撫で始めた。ヴェヴァリアは背を向け、肩を彼に預けた。ヴェルヴェクの腕が天使の腰を抱く中、彼の翼は落ち着くことなく動いていた。翼の先が、ヴェヴァリアの首や肩に触れていた。
「君を焼いてしまうよ」
ヴェルヴェクは囁いた。
彼の翼から流れ落ちた溶岩は、ヴェヴァリアの首を伝い、胸から滴り落ちていた。
しかし、残念ながら、すべての天使が二人のように幸運だったわけではなかった。二人が休暇を過ごしている間、他の天使たちは地獄を救う方法を探し続けていた。
地獄の王族たちは、それぞれが自分に課せられた役目を果たさなければならなかった。
人間との取引に関するすべてのことは、アカンポラ家が担当していた。
アカンポラ家は地獄を救うため、毎晩、北の王国へ向かい続けていた。しかし、開かれた店の数は十分ではなかった。
カスコル・ドイェナルテ王とドルヴェト・ラドゥラス王は、一族全員を連れて、この問題を解決するため、アカンポラ宮殿の大広間に集まっていた。
高い天井の下に置かれた巨大で広い石のテーブルには、果物が所狭しと並べられていた。テーブルを囲む石の椅子には、葉や葡萄の模様が彫り込まれていた。
「陛下、今日だけで十人の遺体が白い谷へ運ばれました」
カスコル王は、ヴォルカンのすぐ左側に座っていた。
「炎が弱まっています、陛下……子供たちや老人たちは寒さに耐えられません」
ドルヴェト王は、ヴォルカンの方へ顔を向けて言った。
地獄の主はテーブルの上座に座り、その左右には二人の王が座っていた。王たちの隣には、王妃と王子たちが順番に並んでいる。テーブルの反対側、ヴォルカンの真正面にはロルケン王が座っていた。
「アカンポラ家が経営している店だけでは足りません」とロルケン王が言った。「ドイェナルテ王とラドゥラス王も、店を開きたいと考えています」
地獄の主は、何よりも人の話を聞くことを好んでいた。相手が誰であるかは、まったく重要ではなかった。話を聞くことは、彼にとって一つの決まりだった。耳を傾けているうちに、相手が何者で、何を望んでいるのかを理解していくのだった。
ドイェナルテ家とラドゥラス家に課せられた役目は、地獄の各層に必要なものを供給することだった。
彼らにとって、人間の土地で生き延びるのは容易なことではない。
「氷の戦士たちはどこにでもいる。これは非常に危険だ」
ヴォルカンの声に込められた決意は、誰の目にも明らかだった。アカンポラ家の王子たちはそれを理解し、黙っていた。しかし、他の者たちは諦めようとはしなかった。
「氷の戦士たちは店を見つけられていません。彼らにできるのは、森で見張りを続けることだけです」
シルヴェン・ラドゥラス王子は、自信に満ちた様子で言った。
「そうだ。しかし、森の中だけでも、どれほど多くの天使が殺されたことか」
ゼヴィアンが言った。
王族たちが地獄の天使たちを救う方法を探している一方で、人間たちも何もせずにいるわけではなかった。
アイジャン隊長にも、良い計画があった。
「陛下……」
侍従長は頭を下げ、王の部屋の扉を開けた。
「アイジャン隊長がお目にかかりたいと申しております」
その言葉を聞くと、王は手にしていたダイヤモンドを磨くのをやめた。
「隊長を待たせるな」
「かしこまりました、陛下」
侍従長は扉を閉める前に後ろへ下がった。アイジャンは扉の前で待っていた。侍従長から「入ってよい」と言われるよりも前に、彼はすでに王の前に立っていた。
アイジャンが王の部屋に入るのは初めてだった。部屋を暖める大きな暖炉では、乾いた薪が炎に包まれ、ぱちぱちと音を立てていた。左側には部屋のほぼ半分を占める大きなベッドがあり、そこには絹の枕と掛け布が整えられていた。ベッドの周囲は、上から下まで薄いカーテンで覆われていた。暖炉の向かいには、王の赤い木製の机が置かれていた。
「ついに私のハーレムに加わる気になったのか」
王は、玉座のような赤いビロード張りの椅子から立ち上がった。そして、ゆっくりとアイジャンへ歩み寄った。
「入れ」
王はベッドを手で指し示した。
アイジャン隊長には、王の頭の中にあることが一つだけだと分かっていた。だから、その言葉に驚きはしなかった。
「いいえ、陛下。別の用件で参りました」
アイジャンは兵士のように両手を背中で組んで立っていた。
「私は、あの天使を自分の宮殿へ連れて行きたいのです」
アイジャンは、王が自分に向けている関心を利用するために来たのだった。王もそれには気づいていたが、そのことをまったく気にしていなかった。
「そろそろ自分の宮殿へ戻る頃合いだと思っていた」
王は失望を隠そうとしながら、執務机へ戻った。
「誰かが君に逆らうことを恐れているのか?」
王が尋ねた。
「申し訳ありません、陛下。どういう意味でしょうか」
アイジャンは王の顔を見ながら続けた。
「地獄の天使を連れて行くために私のところへ来たということは、隊長の中に、その天使を渡したくない者がいるということだろう。その天使を守っている隊長は誰だ?」
賢明な王の顔に、疑うような表情が浮かんだ。
嫉妬は女を残酷にする。アイジャンは、まさにその残酷さの一歩手前にいた。彼女は毎日のように、幸村隊長が地獄の天使をどのような目で見ているのかを目にしていた。自分が隊長を嫉妬していることを、自分自身でさえ認めないままでは、王に説明することなどできなかった。ただ、地獄の天使を 幸村隊長の目から、その視線から遠ざけたかったのだ。
「地獄の店を見つけるために利用したいのです、陛下」
アイジャンは、十分に説明したと思い、恭しく頭を下げた。
「そういうことにしておこう……。あの者は、もうお前のものだ。宮殿へ連れて行くがいい」
王の答えに、隊長は喜んだ。
これでもう、誰にも彼女を止めることはできなかった。なぜなら、彼女の背後には、ほかでもない信玄王がついているのだから。




