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インターバル「魔王の最後の仕事」

よこみち

「あー、逃げられた」


勇魔の『ゼス』が消えた床を見て、フィーは残念そうに悪態をつく。


「油断…」

「っるっさいわねあんたわ!それよりなんで追いかけられないの?こいつで!」

ラズを蹴飛ばすと、フィーはバッグから再び妖精を出してラズの目の前に出した。


「フィー…その妖精の羽を切った…だから無理」


妖精は異世界間を航行する能力を秘めている。

同程度の隣接する世界なら妖精専用の『認識』能力で移動をすることができるのだ。

だが、本部の置かれている世界

人間で言うところの「家の中」に行く感覚の異世界は「封印」がされていて簡単には移動できない。


「まぁいいわ」

「…ごまかした」

「でっ!?次はどの能力にしましょうか」


フィーはそう言いながら、つり下げた妖精の頭に付けた魔法の器具に触れた

妖精の記憶を探るための装置だが、やられた方は脳内を引っかき回される苦痛に苦しむことになる。

同じことは先ほど切り刻んだ「国王」でやった。

勇者の盟約のキーとなる物品を探し当てられたのもこの能力があったからである。


「空間断層の能力『も』面白そうね」

「面白そう…」

「この世界の人間の街も残ってないし…それじゃ、次にいきましょうか。」


ラズが空中に両手で円を描くと、空中に魔方陣が現れた

そこにフィーがつり下げた妖精を近づけると、魔方陣が割れて空間の亀裂が出現した。


「フィー…次は魔王の城…直接行く。約束」

「はいはい悪かったわね。ちょっと寄り道しすぎただけでしょが」


2人の姿は魔方陣の中に消えた。


数分後


静かになった魔王の城に何匹かの魔物が出現した

それぞれが倒れた魔王の近くに集まってくる


「魔王様…」

「魔王様が…」

「お願いですから、目を開けてください」


あの巨体を誇っていた魔王ダルナーは、今や細身の姿で横たわっていた。

雷の力を渡したことで本来の変形が解除され、もとの人間サイズに戻っていた。


「おのれ人間ども!かくなるうえは!」

「やめよ!魔王ダルナー様はそんなことは望んでいなかった」

「そうだ…それに、人間もたくさん死んだ…」

「なんでこんなことに…」

「何も、傷つけあいたかった訳じゃないのにな」


魔王の周辺にはいつしか様々な姿を持つ魔物が集まってきていた。

大柄の魔物が魔王の亡骸を抱きかかえ、勇者のいた石の台座に乗せる


皆一様に、もはや動かなくなってしまった自分たちの希望を前に言葉も出なかった。

すすり泣くような声も所々から聞こえてくる…


「花を…」


魔物たちが声の方向を向くと、そこにはたくさんの人間たちの姿があった。

あの殺戮の中で偶然にも地下室にいたために生き残り、魔王の命令によって魔物たちが助け出した人間たちだった。

他にも、他の都市に警戒を伝令として伝えたために、先んじて脱出して生き残った者たちも含まれていた。


両手に花を抱えた夫人と数名の人間が、魔物たちの垣根に近づく。

最初は人間たちを魔王に近づけようとしなかった魔物たちだが、魔王の側近たちが制止すると、魔物たちは少しずつ垣根を開けて道を作った。


横たわる魔王の傍らに花束を置くと、人間たちは頭を下げてこう言った


「全ての事情は聞きました。魔王ダルナー。あなたは立派でした」


思えば新大陸に来て最初に魔物たちに攻撃を仕掛けたのは人間だった。

攻撃した以上は追い返されるのは当然であったが、あれだけの力を持っているのに魔王は決して人間の最後の砦を、人間の生活圏を攻撃はしなかった。


「何もかも滅ぼせばいいというものではない!!」


そういってあの2人に立ち向かった姿は、何もかも切り刻まれて無力にうちひしがれていた人々の目に、希望として焼き付いて離れなかった。


「勇者を使うことで、そして、勇者に『倒される』ことで人間側も守り、お互いの生存権を決めて共存を調整しようとしていたことを知り、最初は驚かされました」

「…我が王はそのために…我々魔物を守るべく、禁断の力を使ってまで人間を…いや、思えばこちらこそ人間を必要以上に傷つけてしまっていたのかもしれませぬな」


「休戦協定を結べませんか?」

「もちろん、無期限でな」


王族を失って人間代表となった者と

魔王を失って魔王の代行として魔物の代表になった者との間で交わされた交渉により、この世界では人間と魔物の交流が、静かに始まりだしていた。


魔物たちに囲まれて横たわる魔王の顔は、静かにほほえんでいるようだった。

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