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見え始めた自分

魔王の記憶→現状へ

「じゃあ、さっさと死んで!!」


私が「何をすればいい?」と妖精に聞いた直後、後ろの闇の中から聞いたことのある声が響いてきた。

振り返ると例の銀髪の2人、ラズとフィーがこちらに向かって大理石でできた床を歩いてくる。

その姿を見て私の背筋が凍り付いた

フィーのにやけた笑い顔にではない。

ラズが自分に向かって手のひらを向けていることに対するいやな記憶が蘇ってきたからだ。

とっさに両腕を頭の上に回すと同時に、頭上で何か金属をはじいたような音がして火花が散った。


「…防がれた…」

「あー、早速使いこなしてるの?面倒ねぇ。じゃあ」

フィーは手に持っている杖の先端こちらに向けてくる。

「待って!」

私と2人の間に、妖精のエトランドルが割って入った。

「彼は関係ありません。今すぐ元の世界に戻せば、雷の魔力はあなたたちに渡せます。だから」

「嘘つかないで」

フィーはエトランドルの言葉を否定した


「『勇者の盟約』がばれてないと思ってるの?」


そう言いながらフィーは金色のチェーンにつながれた1本の金属の棒を取り出した。

鍵のような大きさのそれは先端が丸くなっており、そこから伸びた金属の板には不思議な模様が刻まれている。

「そこのあなた。元の世界の記憶あるのかしら?」


フィーは私に質問してきた。


そう

彼女の言うとおり、私にはこの世界に来る前の記憶がない。

勇者としてのロールが与えられていたので、それをこなすことだけに集中することにしたのだ。

いつか記憶が戻るだろうと…

だが、結局は世界の現状を少し知っただけだった…


「本人が戻る場所も『覚えてない』のに『どこに返す』のかしら?それに、盟約の内容は書き換えたから本来のロールは終わってないことになった。つまり、逃げることなどできないのよ。しかも、あの『協会』すら、もう魔王の力を回収できない。ざまみろだわ!」

勝ち誇ったように不気味な笑顔で笑うフィー。


「書き換えなんて…妖精の力を使わないとそんなことできないはず」

「ええ、知ってる。だから『協力』してもらったわ」

「まさか!…ポルトはどこ!」

エトランドルはフィーに向かって聞く


「ああ、これ?」


フィーは腰の横にあるバックの中から銀色のチェーンを引っ張り出した。

その先はエトランドルと同じ大きさの、緑髪の妖精の首にかけられている。

逃げられないようにするためか背中の羽は途中で切り落とされており飛ぶことができない。

そのため、首をつり下げられた状態で苦しみもがいていた。


魔王が言っていた『エトランドルの友人』だ


「ポルト!」

酷い姿にされた友人を見たエトランドルの悲痛な叫び声が響く

その両目と口は糸で縫いふさがれ、簡素な布以外は手足の関節に金属の輪が付けられていた。

何よりひどいのは、何倍にも異様に赤く腫れた右足の先端で、すでに溶けかけていた。


「友人を帰してほしかったら、そっちの勇魔を渡しなさい」

「雷の魔法…わたせ…」

エトランドルが不安そうにこちらを見るが、すぐに顔をフィーに向けた。

「なにしてんの?あんたに交渉の余地なんかないの。早くしなさい!」

「んんんんんんんんんんんんんんんっ!!!!!!」


短気なのか脅しなのか、フィーは声を荒げると同時に、手に持っていた妖精の右膝が赤く腫れ上がってくる。

右膝の関節が倍以上に腫れあがって崩れだし、上下に向かってねじれ始めた。

体中の体液を吹き出しながらも、妖精は気絶することもできず苦しみの声を上げる。

あの金属の輪を使って拷問し、フィーは捕まえた妖精に「なにか」をさせていたのだろう。


「やめろ!」


私は思わず叫んだ。


「なに?死んでくれるの?」

「その妖精を離せ!もう十分だろ」

「十分かどうかはこっちが決めることよ。てか、あんたがさっさと死ねばこっちは力が手に入るし、新しい妖精も手に入る。最高のストーリーじゃない、あはははははははっ!」


「「「 やはりこんな連中は放置してはいけない 」」」

怒りを引き金に、魔王の記憶が脳内でリンクし始めた。

手足に奇妙な感覚が宿り始める。


「「「 離せと言っているんだ!!!!! 」」」


彼らの態度と行為に怒りが沸点を超えた瞬間、私の周囲に雷の槍が出現した。

視界が赤く反転し、ターゲットなる2人だけが異様に強調される。

次の瞬間、無数の雷がラズを襲った。


この世界の魔法に名称はない。


「「「 誰に向かって死ねと言ってる! 」」」


意思が力となり暴風となり魔力を媒介して具現化し、この世界に影響を行使する。

手を翻せば雷が出現しては自在に飛び、前に進めば周囲の雷が威圧となり相手に襲いかかる。


「だからめんどくさいのよ。勇魔を相手すんのは」

「でも…パターン、わかってる」

最初の一撃こそ喰らっていたものの、ラズはすでに防御を展開していた。


常人なら喰らえば一瞬で灰にされるほどの雷でも、この2人の前には無力だ。

だが、私は怒りにまかせてさらに雷をたたき込む。

防御ごと打ち破ろうとするほど、彼らの行為はすでに自分の中では許せなかったのだろう。


だが、それがいけなかった

出現させた雷が急に破裂して消滅し始めたのだ。


「はい、終了ね」


フィーがニヤリと笑う

私は突然、体中の力が抜けて足下から崩れた。

立ち上がろうとしても力が入らない。


「あんただけが『勇魔』だと思ってたの?しかも、突然強くなってがんばっちゃった?」

「容量…考えてない…だめ」


2人の赤と青の目が静かに、かつ、残酷に自分を見下ろしている。


「じゃあそろそろ、あんたの物語、終わらせよっか?」

フィーはそう言うと杖を持ち上げて掲げ、空中に莫大な数の鉄槍を召還した。

「『勇者の盟約』は書き換えたから、もう復活しなくていいんだよ。よかったねぇ」


空中にあるすべての槍がチキチキと音を立てながらこちらに先端を向け始めた。

整然と並ぶ槍の先端は、侵入者を確実に始末するために使う「つり天井」そのものに見えた。

どこにも逃げ場はない。なまじあったとしても、そこまで動くことはもうできない。


「…じゃあな」


重力に任せて、槍が一斉に降り注いだ。


もう避けられない!

そう思った瞬間、紫色の光を放つ魔方陣が自分を包むように展開された。


「「「 開け!ゲート333、私はこの者の崇高なる魂を承認する 」」」

『『『 全ての回答を放棄し受け入れよ!我が名はエトランドル!! 』』』


次の瞬間、地面に向けて落下する感覚が私を包んだ。

魔王の記憶が『転送魔法』と認識させる。


「逃がさない!」


加速した鉄の槍が、地面に消えようとする自分に向かって降り注いだ。

数発が当たり左足に鈍痛が走る


何が起こったかわからなかった

だが、数秒後に降り注ぐはずの無数の鉄の槍が突如消え失せたのはわかった。

倒れ込んでいる私の横で、エトランドルが悲しそうな顔をしながらこう言った


「ごめんなさい。…あなたは…もう…『元の世界に戻れません』」


私はその事実に驚いたが、記憶もない元の世界に戻ってなんになるだろうか?とも思った。

それよりも…

私はうつむく妖精に向かい、やっと動きはじめた手をゆっくりと伸ばして頭の上に置いた


「…友達…助けような。絶対に…」


小さな妖精は震えながら泣いていた…

自我を持って選択を始めた主人公をよろしく!

挟撃の魔王を読めるのは小説になろうだk(<全力殴!

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