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セイギノミカタ〜彼女の正義のためならば、俺は騎士にでも怪物にでもなれる気がする〜  作者: 蒲竹等泰
第8話 歴史は廻帰す。汝、天に生を返せ
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第8話 その3

「……今なら撤回を認めよう、この教団には人体に詳しい人間がたくさんいる」

「安全に願望器を腹から摘出することもできるだろう」


祭祈は椅子から立ち上がりながら言う。


「はは、こんな一瞬で撤回すんなら飲み込むわけないだろ?」


それと同時に進もまた、立ち上がる。

剣を引き抜くと同時に椅子を切り裂く。

そんな姿を見て、祭祈は興味深いものを見るように、


「我の計画が気に入らない理由を聞こう」


そう問うが、


「お前が信用できないから」


進は端的な言葉で返す。


「……そうか」

「貴重な意見だ、もう少し話をしたいところだが時間も無い」


『Prologue/Administration』


彼は2枚のプレートを左右に装填する。


「フェイズ2、変身」


その瞬間、周囲のガラクタ達を巻き込む竜巻が彼を包む。

刃物やぬいぐるみ、工具に家具、よく分からない小型の機械から絵画まで。

投げ捨てられていたガラクタが荒れ狂う竜巻は、誰も近づくことはできない、

もはやミキサーのようなものだ。

その中から、


『Perfect Amazing』


機械音声が響く。

ガラクタが空中で止まる。

巻き起こる竜巻をそのままに、

彼の管理下にあるものだけが停止する。

そして、


『さぁ、再開しようか』


竜巻を引き裂いて、怪物は現れた。


その姿は猿のようだった以前のものとは程遠い。

甲虫や植物や絵画など、あらゆるものを手当たり次第に身に纏ったような、

世界の歴史を身に纏ったような、


見る者誰もが恐怖に飲み込まれる、神々しい異形だった。


――しかし、


「鎧戦ッ!」


進は、まったく怯まず、

自らの姿を怪物に変えながら、

すでに祭祈へと挑みかかっていた。


『……フッ』


それを見て、祭祈は周囲に浮かぶガラクタを進に飛ばす。


「ッ!?」


それ1つ1つでは、まったくダメージがないが、

何十何百が同時に飛来しては、踏み出す足を止めざるを得ない。


「……!?」


そして、そのガラクタに紛れて距離を詰めていた祭祈の拳が進の腹にめり込み、

その衝撃で吹き飛びかけた進む体を、浮遊する絵や謎の装置だののガラクタで作られた壁が押し留める。

そしてそれに叩きつけら、前のめりになった進の顔面に、アッパーが決まる。


(くそ……ガラクタが邪魔で動けねぇッ!)


ガラクタに纏わりつかれ、動けない進に何度も何度も拳が打ち込まれる。


『……相変わらず頑丈だな』

『厚さ20ミリの鉄板も貫通した拳なんだがな』


「砲弾かよ……ッ!」


空中に召喚した盾による奇襲、

薄暗い部屋での死角からの攻撃。

しかし、それを祭祈はガラクタで簡単に受け止める。


不意打ちは失敗。

しかし身体にまとわりつくガラクタが減ったことで、進は拘束を筋力任せに振り払って斬りかかる。

しかし、


左から突如、キャスターが異様な音を立てるほどの速度で、巨大な装置が彼を襲った。


「!?」


進は咄嗟に盾を手元に召喚。

4トントラックに轢かれるのに匹敵する衝撃を、盾で吸収するが……しきれない。


「ッ!」


吹き飛ばされた彼は剣を床に突き刺して勢いを殺そうとするも、

人工物を問答無用で塩にする剣では、床は豆腐のように切り裂かれ、勢いは一切殺せず、


「剣じゃだめかッ!」


結局、盾を床に振り下ろし、突き刺して、

床をガリガリと削り取りながら、無理やりブレーキをかける。


『……やはりわからんな』


そんなふうにうまく対処しながらも、明らかにダメージを負う進を、

無傷の祭祈は、ガラクタを総動員して相手をさらに追い詰める。


『何故、全人類の救済を拒否する?』

『貴様の正義はどこにある』


「正義……?」

「俺の正義はなァ……明子だよぉッ!」


進は剣を投げる。


『わからん』

『緑川明子がいつ我の正義を否定した?』


祭祈が操る無数のガラクタを直列に並べ、剣を受け止めた――次の瞬間、


『?』


ガラクタ達は切り刻まれた。

真っ二つどころではなく、何度も、ぶつ切りに。

もはやそれがもとは何だったのか分からないほどバラバラに。


直列に並べたものだけじゃない。

進の周囲に浮遊させていたガラクタ達が、それこそミキサーにかけられたみたいにみるみる切り刻まれる。


白い塩が散るということは、ガラクタを切り刻んだ武器は剣。


だがどうやって?


まさか、自分がガラクタを操るように剣を操れるのか、

そう祭祈は一瞬考えたが……すぐに違うことに気がついた。


『……紐か?』


そう、紐だ。

エレベーターを登る際に、剣を肩からかけようとした進は、下の階にあったものをこっそり持ってきていた。

それを投げた剣の柄に、いつの間にか結びつけ、

それをただ、怪物の筋力に任せて超高速でカウボーイみたいに振り回していたのだ。


『……危ないことをする』

『だが、種がわかってしまえば対処は簡単だ』


祭祈がそう言うと同時に、飛んできた包丁がその紐を切断する。


しかし、そのときにはすでにガラクタ達の七割ほどが、もとは何だったのか分からないほどの残骸へと変わり果てていた。


……いや、祭祈に今はそれを気にしている暇は無い。


今、祭祈が考えるべきことは1つ。


横にすっ飛んでいったあの白銀の剣を、進より先に取り、奪うこと。

そうすれば奴の武器は盾1つ!


そのために祭祈は残ったガラクタ達を進の足止めに使い、駆け出していた。


……が、


ドゴゥォンッ!


突如の轟音と共に大きく床が揺れる。


そして次の瞬間、祭祈の眼の前に進が降ってきた……盾に乗って!


『さっき吸収した衝撃かッ!』


巨大装置に轢かれたときの衝撃を床に放出することによる自身の射出。

周りにあるものを吹き飛ばしつつ、高速で移動できる良い手段ではあるが……


『落下中は……無防備!』


祭祈は自由落下して来る進の顔面目掛けて拳を振るう。

しかし、その時点ですでに進は盾の再構築を開始。


何度も再構築を繰り返した経験から、盾は中心から順に構築されていくことを知っていた進の絶妙な位置設定により、


『チィッ!』


盾、間に合う!


祭祈の拳は盾によって受け止められ、

そして落下しながらも必死に手を伸ばした進は、剣をその手に掴む。


『剣は奪えないか…!』


諦めた祭祈は、着地してすぐ来るであろう進の攻撃に備えてガラクタを呼び寄せる……が、


そっちに気が取られていた故に彼は気がついていなかった。


『――ッ!?』


伸ばした進のもう一方の手が、空中で停止する盾の持ち手を掴んでいたことに。


『下を……くぐって!?』


祭祈の姿勢が大きく崩れる。


腕力に物を言わせて、

落下の勢いも利用しての盾の下をくぐった進による奇襲、

白銀の剣による一撃が、


彼の両足を、容赦なく切り裂いていたのだった。



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