第1話 その3
「うぉおおッ!オラッ!オラァ!」
進は雄叫びと共に、怪物に銀色の鎧を纏った拳を放つが
『貴様、戦い慣れていないな?』
それを怪物は右手で受け止める。
そして、その拳を握り潰そうとしてくるが…
『硬いな……』
『だが、これが能力ではあるまい!』
怪物は彼の手を離し、その腹を無機質な冷たい左足で蹴り飛ばす。
そして悠々と地面を転がる進に歩み寄る。
「クソッ!」
負けじと立ち上がり、襲いかかる進の拳を躱し、
怪物はそのみぞおちに拳を打ち込む。
「ぐっ……うぉぉッ!」
それでも進は立ち向かう。
『………貴様、その力が何かを理解しているのか?』
「知らねぇ!」
『知りたいと思わないのか?』
「そんなもん、あいつを守れんなら……どうでもいいんだよッ!!」
進は何度も攻撃を仕掛ける……が、
武道も喧嘩もしたことない進の攻撃は、
怪物の技術によって、簡単に防がれてしまう。
『守るための力か……素晴らしい!』
そして、重いカウンターが進に打ち込まれる。
『我と同じだ』
「……どこがだッ!」
「女の子に手を挙げるお前の、どこがだッ!」
『……視野が狭いな』
また、怪物は進を、今度は獣のような右足で蹴り飛ばす。
負けじと立ち上がろうとする進の腹を、さらにボールを扱うように蹴り飛ばす。
『小石のごとく弱き少年よ』
怪物は進の、狛犬を模したその騎士の兜をその獣のような右手で掴み、持ち上げる。
『悪いが我の壮大な計画を……阻害しかねんものは例え路傍の石であろうと粉砕する』
そして空いているもう一方の手を握り込む。
その瞬間空気が揺らめきだし、怪物の枯れ木のような手に青白い炎が灯る。
そしてその拳が、深く進の腹にめり込む。
「ぐっ……か!?」
その衝撃と熱によって、聞いたことのない音を立てながら、
進は数m先へと吹き飛ばされる。
「うぅ……させ、ねぇ……!」
『意思もまた頑強か……』
地面を二度、三度と跳ねて転がされて、
それでも立ち上がろうとする騎士を眺め、
怪物は鼻で笑う。
『我は砕けぬ石を前に、何度も殴り続ける馬鹿ではない』
怪物は地に伏せる進に背を向ける。
『適切な道具を用意する』
「まっ!?」
進の制止など意に介さず、
怪物は呆気にとられる明子を裏拳でどかし、
震える少女の首を掴み、持ち上げる。
『さぁ……黄金の願望器の化身よ、死して我に力を与えてもらおう……』
「いっ……や…わたし、は」
「やめっ!」
もがく少女。
食い下がろうとする明子。
必死に立ち上がる進。
しかし、
『有無は言わせん』
嫌な音が聞こえる。
ゴキリ、という異音。
明子に伸ばした少女の手が力なく落ち、
明子はへたり込む。
『………』
目から光が消えたとき、
突如として少女の体が金色の粒子として崩れだし、その身体の中から金色の、
進が手にしていたあの銀色のプレートそっくりな、
黄金のプレートが現れる。
それは、一目で進に、自分が手にしたものと格が違うと感じさせた。
『……ようやく2枚目か』
『まったく、手間を取らせる……まぁ、いい』
『その手間の分、役に立ってもらおう』
冷徹にプレートを掴み取った怪物はそれを、
金色の粒子を散らして軌跡を描くそれを、
自らの身体に突き刺そうとする……が、
『!?』
怪物の体に触れる瞬間、
金色の粒子が眩しい光と共に弾け、怪物と一体化することを拒絶する。
そして、怪物の手を逃れたプレートはヒラヒラと蝶のように舞って、明子の手に。
『………貴様を既に選んでいたということか』
忌々しげに怪物は手に残る黄金の粒子を払い、明子を睨む。
『……レディ』
怪物は今度は明子の首をその右手で掴む。
その痛みで彼女の手からプレートがこぼれ落ちる……が、怪物はそれに目をやらない。
ただ、もがく明子を睨み続ける。
『苦しいか?痛いか?ならばただひと言、我に告げろ……譲渡すると』
怪物は首に加える力を少し上げる。
『この手にほんの少し力を込めるだけで、願望器の権利は我に移る』
『だが……我は蛮族ではないのだよ』
怪物は首を絞める手の、人差し指の爪で首を軽くなぞる。
『無闇矢鱈に奪うほど、命の価値を低く見てはいない』
怪物は明子を投げて解放する。
しかし、2人の距離は未だ明子から伸びる影を踏めるほど、近い。
『我に譲ると言え』
断れば一瞬で明子の首は飛ぶ距離。
しかし、
「………断る」
明子は絞められた首で、必死に吸い込んだ酸素を使って告げた。
『……何?』
「お断りよッ!」
聞き返す怪物に、明子は朦朧とする意識の中でもはっきりと告げる。
「貴方の言ってること、何1つ分かんないけど!」
「貴方みたいな人の望み通りになんて……なってあげるわけないでしょッ!」
『………了解した、レディ』
怪物は手刀を振り上げる。
その手にまた、白い光が、青い空が集い、青白色の炎を纏わせる。
『君が死を選んだのなら』
振り下ろされた手刀。
首を絞められて朦朧としていた意識を手放す明子。
そして………
『!?』
「そうは……ならない!」
怪物が踏みつけた影から、
「俺がいる!」
彼は現れた。
その手に持った銀色の、狛犬の顔を模した盾が、その手刀を受け止め、
その鋼鉄をも噛み潰せそうな巨大な口が、炎を呑み込んだ。
『……不遜だな』
「そうかよッ!」
手刀を盾で受け流し、進は盾で怪物に殴りかかる。
その攻撃が相手に直撃した瞬間、
盾の目が光り、青白色の炎が怪物に放たれる。
『これは……我の攻撃を、返した?』
その衝撃に怪物は数歩下がる。
『不遜だな』
「知るかよッ!」
盾で殴りかかる進、
それを躱しながら攻撃を仕掛ける怪物。
しかし、彼はその攻撃全てを見事に盾で受け止める。
あの青白い炎を纏った拳も、蹴りも、
盾は全てを受け止め、
炎をその口の中へと飲み込み、
その衝撃をも蓄積する。
自身を一撃で地に伏せさせたあの衝撃が、何発もだ。
これを……敵に一気にぶつける。
そうすれば……勝てる!
進の頭にその言葉が浮かんだ瞬間だった。
ーーーーパチン!
突如、眼前で破裂音がした。
思考が一瞬、真っ白に染まる。
怪物が指を鳴らしたのだと理解する。
そのときにはすでに、突然走り出したトラックが進を跳ね飛ばしていた。
「っ……!」
何故、どうやって?
状況が理解できないまま、凄まじいその衝撃に倒れる進。
だが、彼は盾を杖代わりに立ち上がる。
そんな彼が握る盾の口がカタカタと音を立てて震え、歯を鳴らし、あの青白色の炎を漏らし始めた。
『限界が近いようだが』
『存分に溜め込めたか?』
「あぁ、おかげであんたに勝てる」
『なるほど、確かにそうかもしれん』
『……しかし、情けない能力だな』
怪物は進を煽る。
『倒すべき相手から力を得るとは、随分と非力のようだな』
しかし、
「そのとおりだ、実に情けない力だと俺も思う」
進は怪物の言葉に同意する。
「だけどな、俺の守りたい奴は、こんな力無しでもお前に立ち向かえる凄い奴だ」
どこか誇らしげにそう言い、盾を構える。
そのポーズは明らかに守るためのものではない。
「そんな奴の隣に立つためなら……どんな力だって、利用してやるよ!」
盾を地面に打ちつける。
その瞬間、漏れ出した青白の炎がコンクリートを溶かしながら這い、
怪物を囲み、退路を塞ぐ。
『なるほど……まぁ、一興か』
自身の身長より高く上がる火の壁を見上げ、怪物は小さく笑う。
『貴様に免じて願望器は次としよう、そのレディの命もな』
「……いいや、そうはさせない」
「俺が守る!」
進は駆け出す。
盾を槍のように構え、炎の壁を突っ切って。
「何度でもッ!」
怪物の胸に盾が突き刺さる。
「うぅおぉぉッ!!」
盾が輝き、
噴き出した青白色の炎と、衝撃が、
怪物へと還る。
『……フフ、フハハ』
『コレが我の力か、素晴らしい!』
『だが……やはり、やはりまだまだ我の野望には足りんなッ!』
『よい経験をした……感謝するぞ少年!』
全身を青白い炎で焼かれてなお笑いながら、
まるで効いていないかのように感謝を述べ、
全ての衝撃を全身で受けて、
怪物は空の彼方へと吹き飛ばされるのだった。
第1話、読んでくださり、誠ににありがとうございます。
好きな女の子のために非日常へ駆け出す主人公。
王道の中でも王道な始まりですが、「皆のヒーロー」という側面が強い特撮では、なかなか無い始まりな気がしますね。
さて、前作のリベンジを目指し始めた特撮風バトルストーリー第二弾となる本作。
「前作を読んでいなくても楽しく、読んでるとさらに楽しく」を目指し、全力で取り組ませていただきますので、
ぜひ最後までお付き合いいただけますと幸いです。
また、励みや今後の参考になりますので、ぜひ評価やリアクション、感想(ご指摘)よろしくお願い致します。




