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第6話 その6

「いくぞ!」


『来ないでほしいが』


鈴瀬は全身を包む錆色の炎を、自身の右手に集め、

スイカほどの大きさの塊にし、

駆け出す進に投げつける。


「そうはいくかッ!」


進は目の前に盾を再生成するやいなやそれを蹴り飛ばす。

盾と炎が激突し、圧縮していた錆色の炎は弾け、広がる。


『……来る!』


広がって幕のようになった炎を突き破って、進は鈴瀬に蹴りをかます。


『ぐっ……』


錆色の炎が未だに消えない進の左足が、鈴瀬の左半身を打つ。

無論、その白い鎧は今までと同様に蹴りの衝撃を無にする……が、


その白い鎧に錆色の炎が燃え移る。


進の鎧も燃やし、身体に切り刻まれているかのような激痛を与えた地獄の業火は、

あらゆる攻撃を無効化したあの天国の鎧にすら、容赦なく燃え移る。


先程まで全身で炎が燃えていたのがいい証拠。


「あんたの鎧も光線も同じだ」

「人が作ったものからダメージを受けない、そうだろ!」


進は告げる。

それに鈴瀬は、左胸部に燃え盛る炎に、

心臓を焼かれ、

切り刻まれるような痛みを受けながら、


『……そうだ、そうだとも』


毅然と答える。


『あぁ痛い……』


胸で燃え盛る炎に向けて呟く。


『だが』


しかし、


『地獄の力は、この炎を御する』


燃え移った炎を、右手、血色の手が容易く握りつぶし、消す。


『無駄だ』


無慈悲な言葉、


「……なら、かき消す暇もないぐらい打ち込み続けてやるよッ!」


しかし進が、折れることなど……あるはずがない。


「どらッ!」


進は大地を踏み割り、生み出した礫を盾で打つ。


『無駄だ』


馬鹿力で生み出された土の散弾を、鈴瀬は炎で壁を作ることで防ぐが、


『!』


その壁を突き破った掌打に顎を撃ち抜かれる。


『正気じゃない……』


鈴瀬は炎に焼かれる激痛を知っている。

常人なら泣き叫び、数分炙られれば廃人となると知っている。

無論、それは進自身もいやと言うほどわかっているはず。


なのに彼は構わず炎の中へ手を突っ込んで来る。


『何故、そこまで?』


顎に燃え移った炎を握りつぶし、圧縮。

弾丸として撃ち出しながら問う鈴瀬に、


「あんたが俺をここに閉じ込めてるからだろうがッ!」


わざわざまだ炎が燃え移っていない手で弾丸を掴みながら彼は吠える。


「人の幸せな時間を邪魔しやがって!」

「こんな炎燃え盛る場所に明子を閉じ込めて、火傷でもしたらどうしてくれんだッ!」


そして、弾丸から手へ、腕へ燃え移った炎で殴りかかる。


『その少女のことを言っているなら、君の仲間が勝手に連れ込んだのだろう』


「じゃあ、出させろよ俺もろともッ!」


『そうして欲しくば、目の前の不幸を打ち破れ!』

『私と俺に、未来を変えうる力を示せッ!』


「結局そうなんじゃねぇかッ!」


燃える拳と燃える拳が交差する。


互いの拳は敵の頬を容赦なく殴りとばすが、

パンチの威力があまりに違う。

結果、吹き飛んだのは進のみ。


このパワーの違いが差を生んでいく。

何より、鈴瀬は炎を消すことができるのに対して、進は今や全身で燃え盛る錆色の炎を、消す手段を持ち合わせていない。

ただまるでろうそくのように、鎧を蒸発させながら、じりじりと本体へ炎が近づいていく。


(やべぇな……ちょっと意識が朦朧としてきたぞ)

(盾を生成するたびに起こる凄まじい倦怠感)

(殴られるたびに起こる、体内をかき回されたような痛みと吐き気)

(炎の痛みが、むしろ気付けになってるレベルだ……そろそろ決めないとまずい)

(明子を守ってる加護とか言うのだって、あとどれだけ保つか……)


『塩に変われ!』


鈴瀬がふらつく進にあの光を放つが、


「もう効かんッ!」


炎を纏う腕がその光を……砕いた。


『何故!?』


「光に見える粒子の集合体、なんだろ!」

「ならその粒子が入り込む隙間もないくらい、全身を炎で包めば問題解決だ!」


『狂っているッ!』


「あんたのおかげでなッ!」


彼の大振りな拳を、鈴瀬は後ろに飛んで逃げる。


『そんなに燃え尽きたいなら燃やしてやる!』


そして、右手を突き出す。


それを………


(予想通り!)


読んでいた進によって

上空十数メートルに出現する……盾、


もう一度右半身を狙い、重量に任せて一直線に、ギロチンのように振ってきたその金属の塊を、

地面から足を離した鈴瀬は避けられない。


−−−−はずだった


『な、め、る、なぁッ!』


右半身を引き裂いて現れた無数の口が、一斉に炎を吐く。

圧縮された錆色の炎は推進力となって、空中で鈴瀬を回転させる。


結果、盾は鈴瀬の左半身に命中する。

白い鎧は勢い、重量、すべての影響を受けず……弾く。


弾かれた盾は後方へ落ちていき、


そして、回転により勢いが増した血色の拳が、全身全霊を込めた拳が進を襲う。


「――吠えろッ!」


その直前、背後の盾から噴き出した錆色の炎が無防備だった左半身を焼き焦がす。


『ッ……がぁああッ!?』


不意に全身を焼かれ、彼女は激痛に包まれる。


「うゔぉああぁッ!」


狂乱する彼女の右半身に進は拳を打ち込もうとする……が、


「ッ!?」


限界を迎えた体が悲鳴を上げ、一瞬動きが止まる。


その隙を、狂乱しながらも鈴瀬は見逃さず、

高出力の炎で、焼き殺そうと右手を進に向ける。


「させるかァッ!」


しかしその直後、炎が放たれる寸前に、

炎が燃え移ることも厭わない、輝照の拳が彼女の右頬を殴り飛ばす。


だが、足りない。

あの強固な血色の体に、致命傷を与えられるほどの威力が無い。


だが、

彼の拳が作り出した隙が、地獄の業火に焼かれることを厭わない仲間が、


何よりも心から守りたい存在が!


進に、限界を超えさせる。


「――花笑さん、剣を!」


彼の伸ばした、錆色に燃える手に、

花笑は手に持つ銀の剣、

天兵から捧げられた剣を投げ渡す。


「……ッ!」


振り上げた剣から手に伝わる重み。

本来人生で一度たりとも味わうことのない、人を殺すための武器の重み。

それに対する嫌悪感が、進の意識をさらに朦朧とさせるが、


「うおおおッ!!」


彼は明子を思い、剣を振り下ろす。


『ッ!』


左肩から右脇腹への一閃。

切り裂かれ、ズレた身体から、

金色の光と紫の血を噴き出させながら、


『うゔッ、あぁあぁあッ!?』


なお、炎を放とうとする怪物は


「さっさとこっから、出しやがれぇッ!」


頭を剣によって真っ二つに切り裂かれ、

2つの絶叫を上げながら、ついにその場に崩れ落ちる。


その瞬間、この世のものではなかった花畑も、荒野も、炎も、鏡に写った虚像だったかのように砕け散り、

あの屋上の風景が現れるのだった。




お読みくださっている方々、

ブックマークをしてくださった方、

いつもありがとうございます。


今月で完結させること、そして今月中は毎日投稿することを目標にしていたのですが、どうやら達成するのは難しそう……です。

ちょっと卒論の研究に振り回されすぎてしまいました。


今後も毎日投稿は難しいかもしれませんが、引き続き朝9時の投稿を続けていきます。


残り3章ほどを予定していますので、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


大変励みになりますので、ぜひ感想やアドバイス、高評価、ブックマークなどをしていただけると嬉しいです。


最後まで、どうぞよろしくお願いいたします!

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