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第5話 その1

「あ、明子大丈夫か!」


田場を花笑さんのところに届けた俺は、

人の姿となって明子のもとに駆けつける。


きっと、トラウマになっている俺の怪人態を見てしまい怖がっているだろう。

一人にして大丈夫だろうか?

そんなことを考え、できる限り早く彼女のもとを訪れた……が、


「あ、進」

「よかった、無事だったんだね」


俺の予想を裏切って、彼女はえらく気の抜けた声色で、寝転んでいたのか上体だけ起こしてこちらに手を振ってきた。


「あ、うん……」


正直、出鼻をくじかれた。


彼女からしたら俺は校舎の屋上から落ちたという認識のはず……いや、助けてって電話したんだから無事なのはわかってたのはそうなんだけど……反応、薄くない?


「どうしたの、やっぱり……怪我とかしてるの?」


「え?あぁ……えっと、うん」

「無事無事、チョー元気」

「明子こそ怪我とか無い?」


「無いよー、謎の騎士さんが私を守ってくれたからね」


「え?」


トラウマになっているはずの存在のことを、微笑みながら言う彼女にさらに思考が混乱する。

何か彼女に言葉を返そうとするが、思考が纏まらないのだから、言葉が上手く纏められるはずもなく。

「あー」とか、「えっと……」なんて言葉を漏らしていると、


校舎からチャイムが聞こえてきた。


「……ありゃ、結局五限まるまるサボっちゃった」

「いやぁ〜、ついに私も不良かぁ」


「いや、別に不良ってほどではなくないか?」


結局、明子が話題を変えたのに合わせて、俺は考えるのをやめた。


「俺と違って先生からも信頼されてるし、一回二回授業をサボったってどうってことないさ」


心配はされるかもだけど。


「ふ〜ん……じゃあさ?」

「ついでに六限も部活もサボっちゃおう」


「……え?」


「一緒にさ、どっか行こうよ」


「は!?」

「いや、なんで急に!?」


「いやだって……ほら」


彼女が突き出したケータイの画面に映るのは、

俺のメール……ではなく、田場の送った怪文書。


「どっちが私と出かけるかって、勝負だったんでしょ?」


「うっ……」


そんなことまで書いていたのかあいつ、

ていうか、この数十行の文字の羅列、全部読んだのか……?


「……どこ行くんだよ、今から」


もうすでに15時過ぎ、今から出かけるところなんて、


「ええっとね、う〜ん……」





「ビバ☆ショッピング!」


飛び降りるようにしてバスから降りた明子に引っ張られるように、俺もバスを降りる。

その瞬間目に飛び込んできたのは……


「うわぁ〜、おっきい!」


神織リオンモールタウン。

神織モールタウンというニュータウンのシンボルとしてついこの間完成した超大型ショッピングセンターだ。


「さすが私達が生まれる前から工事してるだけはあるね」


彼女は興奮したように腕をブンブン振りながらそう言い、


「リオン自体の工事は2年前くらいからだけどね」


俺は離されてしまった手を少し名残惜しく思いながらそう答えた。


「へー、2年でこんなでっかいの作れるんだ」


「それでも今どきにしちゃ、時間がかかった方らしいよ」


「へぇー、よく知ってんね」


「父さんがよく地鎮祭で建設開始前に立ち会うから、そういうのに詳しいんだよ」


「あぁ〜なるほど、確かにお父さんもたまにそういうの立ち会ってた気がするなぁ」

「やっぱり、大事だよねそういうの」


「そうかなぁ……今どきそういうのいらないと思うけど」


俺はたった2年で目の前の巨大建造物を作り上げた技術に思いを馳せながら、父には決して聞かせられない言葉を呟く。


「まぁそこら辺は人それぞれだから、どっちもいいと私は思うけど」


彼女は首をかしげ、う〜んとうなったあとそう結論づけ、

俺の手を引っ張り出した。


「……よし、とりあえずさ?おやつにしない?」

「腹が鳴っては戦はできずって言うじゃん?」


「鳴らすな、減らすだけにしときなさい」


人前でお腹を鳴らしたらと考えてみろ、恥ずかしいったらないぞ。


俺はツッコミとしてそう言うが


「それこそ、どっちでもよくない?」


彼女はめんどくさそうに言う。


「よくない」

「最低限守んなきゃいけないもんが世の中にはあるで……うぉ!?引っ張りすぎだぁッ!?」


その様子に、必要もないのに少しムキになった俺の言葉は、

彼女の手を引く力によって、断ち切られるのだった。




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