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第3話 その4

(まずいまずいまずい……!)


俺はカードを取り出しそれを口に近づけようとする……が、

火傷……だろうか、体に走る痛みで思うように体が動かない。


なすすべが無い。


(死ぬ……?)


そう思った時だった。


「!」


太陽の中から急降下してきた人物が、美しい白い翼を広げて俺を受け止め、

そして軽やかに空へと飛び上がる。


「え、花笑さん!?なんでッ!?」


「輝照から怪物らしき人がいると連絡が来てたんです」


俺をお姫様のように抱きかかえて飛翔しながら、彼女はそう説明する。


「ありがとうございます、危うく死ぬとこ……って、花笑さん後ろ!」


「!」


感謝を告げようとした俺は、空を飛ぶ俺たちへと飛んでくるさっきと同じ飛翔物体に気が付き、叫ぶ。


「狙いは緑川明子さんではなく、貴方のようですね……なら、彼女から距離を取りますよ!」


花笑さんは加速する。

体に痛いほどの風が吹き付けられ、

つい、目を閉じてしまい気がついたときには


「……まぁ、ここならいいでしょう」


学校周辺のにぎやかさとは比べるべくもない、廃ビルが並ぶ、人気のない場所。

そこにひっそりとあった、公園に着地していた。


「……ここ、明らかに学校からめちゃ遠いですよね?」


「そうですね……とにかく攻撃から逃れることを優先したので正確にどこなのかと聞かれたら、私にも分からないんですけれど……十数キロは離れているかと」


「離れ過ぎじゃぁないですかね!?」


というか、速すぎだろ。


「……いえ、私としてはこの選択が最善だと思いますよ」

「狙われているのが貴方である以上、緑川明子さんを守るためにも距離は取るべきでしょう……あ、火傷、直しますね」


花笑さんは明子を治療したのと同じようにして俺の傷を癒してくれる。


「さっきの爆発……やっぱり、猿の野郎なんですかね?」


俺は大人しく治療を受けながらそう尋ねると


「いえ、違うと思いますよ?」

「もしそうなら真っ先に緑川明子さんを狙うはず……似たような別の契約者でしょうね」


「いやでも、俺を追い払うことを優先したとは考えられません?」


「そうですねぇ……もしそうなら」


彼女は突如俺を地面に伏せさせ立ち上がる。

そして翼を広げ……風を起こす。


次の瞬間、振り注いだあのミサイル達は、爆発することなくまるで崩れていくかのように白い砂へと姿を変えていった。


「追い払ってなお、攻撃が続いてるのは不自然じゃありませんか?」


「なるほど……確かにねッ!」


俺は懐から取り出した銀色のカードを噛む。

次の瞬間、カードは光り出し、複雑な模様が浮かび上がる。


刻まれた模様は騎士の兜を模した【K】


「開け神門!」


俺はそう告げ、カードを投げる。

するとカードは昨日のあの門へと姿を変える。


「うおおぉッ、鎧戦(がいせん)!」


その門をくぐり抜けると、

俺の身体は猛獣へと変わり、

それを銀の鎧が包み込む。

そして、ミサイルを盾で受け止める。


「ッ!」


連続する数十の爆発。

それを後退りしながらも、なんとか受けきったときだった、


ゾクリ


空からどんどんとこちらに距離を詰めてくる嫌な気配を感じ取った。

そのすぐ後だった、


ズドヴァンッ!


――凄まじい音がしたのは。


ビルに囲まれているせいで日当たりが悪く、

忘れられたかのように手入れも行き届いていない公園に、土煙が巻き起こり、衝撃波がそれを吹き飛ばす。


『な、なんだ……て、テメェ…』


機械音声が聞こえる。


緑の目の鷲。

金属製の装甲を身に纏い、肩に砲門、腕に先程までのとは比べ物にならない大きさのミサイルを、左右に2基ずつ取り付けた人鳥。

戦艦を思わせる装備、

さっきの小型ミサイルの雨を思えば、おそらく隠し武器も多数あるだろう。

そんな奴が空も飛べる……勝てる気がしない。


そう思ってしまった……が、


『お、屋上から、お…落としてやったのに、突然す、すごい速度で離れていくから……な、なんだって思ったら……』


「……ん?」


そう思った矢先に怪物から発された声に、俺は首を捻った。


『き、君も…ぼ、ボクと同じ、の…能力を持ってたんだな』


聞き覚えのある、途切れ途切れで聞き取りにくい声。


「お前……田場か?」


『あ、あぁ…そ、そうさ』

『ぼ、ボクはねッ!彼女のことをずっと思ってるんだ!き、君とは違ってねッ…!』

『ボクと彼女はこの力でつ、繋がっているのさ!』

『う、運命の赤い糸さ、この姿はッ!!』


繋がっている……?

あいつの能力はミサイルそのものではなく別にあるのか?


『……そんな、そんな…つ、繋がっているボクらを……お前は!お前はッ!!』

『あのコを脅したなッ!』

『メールに何を書いたッ!』


「……?」


『そ、そうでなければこんなことは、君に、き、君に会いに行くなんてあるはずが……ッ!』

『ぼ、ボクが負けるはず……な、ないんだ』

『ぼ、ボクらはァ、愛し合ってるんだからッ!』

『ボクは彼女を愛して愛され愛し合って思い思われ思い合って、好きで好きで好きで好きでぇッ!!』


鳴き声を上げるように吠える怪鳥、


「………なるほど」


その声を聞いて俺は理解した、

ようやく理解した。


こいつは歪んでいる。


相手の立場になって考えることをしない、

自分に不都合なことがあれば、相手が何か卑怯なことをしたに違いないとしか、考えない。


結局は、自分のためにしか行動できない人間。


明子が、

正義に身を賭し、

人びとに尽くすあの明子が、こんな奴を好きになるか


「……ハハッ、ありえねー」


「本郷君?」


「……花笑さん、明子を治療しに行ってもらえますか」


「1人で大丈夫ですか?」


「大丈夫……ではないかもしれないけど」


それでもだ、


「こいつは俺が倒したい」

「こんな奴には、明子は任せられないッ!」


俺は盾を構える。

目の前の怪鳥を倒すために。




お読みくださり、誠にありがとうございました。


怪人化の際に掛け声がほしいと思い、直前で第2話にエピソードを追加した結果、

第3話その3にミスがあることが判明しました。


大変励みとなりますので、

ぜひ、感想やアドバイス、高評価などよろしくお願いいたします。

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