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第十一話「グリーンベリーはジャムになる」


 ヴィオ王国の森は豊かです。

 実りの季節まではまだ季節を一つ飛び越えないと辿り着きませんが、春は春で収穫できるものがたくさん。

 例えばグリーンベリー。淡い緑色をした豆粒サイズのベリーです。

 木の上に成るこの実は生で食べると酸味が強いのですが、加熱するとだんだんと甘みが出てきてジャムなどに使えるんですよ。

 そんな事を思い出しながら私はグリーンベリーの木を見上げました。そこでは竜のオパールがパタパタと飛行し、木に生ったグリーンベリーを食べています。

 オパールって草食系なんですかね?

 

「キュ(ごはん)」


 何て思っていたら木の幹を這いあがっていた虫をぺろりと食べました。どうやら雑食のようです。

 草食は良いとして、肉食オンリーだったらどうしようかと――私たちが非常食的な意味で――思いましたが、これなら食べ物の方は安心ですね。

 ただ人間とは体のつくりが違いますので、食べてはいけないものもあるかもしれません。その辺りは良く注意しておきましょう。


 さて、私も食料をゲットせねば。

 オパールの様子を見つつ、私も昇りやすそうなグリーンベリーの木に登ります。

 辺境育ちですからね、木登りはお手の物なんですよ。

 王城生活でもあまりのストレスに耐えかねて、木の上に登ってやり過ごすなんて事を何度か行ったところ「野生」などの呼称を頂くようになりました。とりあえず言って来た相手には「箱入りですね」と返しておきましたが、顔を真っ赤にして怒っていたなぁ。

 まぁそれはそれとして、グリーンベリーです。ひょいひょいと採って鞄に詰めて行きます。


「…………ん?」


 しばらくそうしていると、ふと視界の端にキラリと何かが光るのが見えた気がしました。

 グリーンベリーを収穫する手を止め、そちらの方へ顔を向けます。

 数日間で見慣れたヴィオの森。

 そのずっと向こう。

 先ほどは光が見えたきがしたのですが、今は何の変哲もない緑一色。

 ……気のせいでしょうか。

 ただの見間違いで済ませようと思った時に、ふっとマーチの話を思い出しました。

 『大樹を見た』と言っていたマーチ。確か彼が示した方向は、光が見えた方向と同じだったような。

 さすがに、出来過ぎていますかねぇ……?


「キュイ(どうしたの?)」


 腕を組んで考えていると、オパールが不思議そうに私を見て言いました。


「聞いて下さいオパール。いや実はですね、あちらの方で何かが光った気がしたんですよ」

「キュ? (光った?)」

「まぁただの幻覚かもしれませんが。私も年ですかねぇ……」

「キュイ(元気、出す)」


 冗談交じりにそう言ったら、オパールに励まされました。

 混じりけのない純粋な眼差しが心に沁みる。

 とりあえずお礼の意味を込めてオパールを撫でておきます。相変わらずのザリザリとした感触、くせになりそう。

 まぁ、それはそれとして。

 ……しかしやはり、何となく気になりますね。


「お嬢、収穫はどうですかー!」


 どうしてものかと考えていると、同じく食糧探しに来ていたランが木の下から呼びかけてきました。

 ひょいと覗けばランが持ったカゴ――ロイドお手製の――の中にはベタ草やキノコのようなものがこんもりとしていました。

 あのキノコ、何か凄い色をしていますけれど、食べられるのでしょうか。とても不安。

 それにしてもグッドタイミングです。

 私はランに手を振り返すと、木からするすると降ります。

 そしてまず収穫したグリーンベリーをご披露。


「ええ、なかなかのものですよ。これこの通り、グリーンベリーがばっちりです。これで念願の甘いものがゲットできます」

「なんと! 魅惑のティータイムですね!」


 グリーンベリーの調理を大きく通り過ぎ、すでにティータイムを想像しているとは、さすがラン。

 問題はティータイムに使う紅茶の茶葉がない事くらいでしょうか。

 まぁそれは置いておいて。


「ところでラン、ちょっと付き合って頂きたい場所があるのですが」

「なんと、これはデートのお誘い!」

「オパールも合わせて三人なので、散歩に大きく傾きますね」

「こんなに小さな見た目なのに、重いだなんて……!」


 ランはオパールを見上げて驚愕の表情を浮かべています。

 体重を比べるとランの方が重い気がするのですが。


「それでお嬢、どこに行くのですか?」

「あっちの方ですね」

「アバウトですね!」


 ランが良い笑顔でそう言います。


「お嬢、あっちに何かあるのですか?」

「何か光った気がしたのですよ」

「アバウトですね!」


 二度も言った。

 確かに自分でもアバウトだなとは思ったので、その通りなのですが。

 まぁ人生なんて大体アバウトなもんです。戻るべき場所までの道のりを間違わなければ、きっと大丈夫です。たぶん。


「それではお嬢、とりあえず行ってみますか!」

「ええ、行ってみましょう。オパール、ついて来て下さいね」

「キュ(うん)」


 オパールを呼ぶと、背中の翼をパタパタと動かし、私の方へ降りてきます。

 生後まだ数日なのにオパールの成長が目覚ましい。

 込み上げてくる何かを感じながら私はオパールを両手で抱きしめると、光が見えた方向へとランと並んで歩き出しました。

 

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