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第14話 グラシエ
ルーメンを出て、山をひとつ越えるごとに、雪が深くなった。
最初は、道の脇に残る白い筋だった。
次の峠では、膝まで。
三つ目の谷を抜けるころには、世界のすべてが、ふかふかの白に包まれていた。
音が、吸われる。
足音も、息の音も、雪の中へ、静かに沈んでいく。
峠の途中に、小さな石の小屋があった。
国境の見張り小屋だ。
「ここから先は、ボレア」と、澪が言った。
「AIを、作らない。使わない。持ち込まない。それが、この国の決まり」
「……私は、入れるの?」
「たぶん、頼めば」
小屋の戸が開いて、毛皮の外套を着た老人が出てきた。
白い息を吐きながら、私の顔を、じっと見る。
その目に、敵意はなかった。
ただ、深く、疲れた警戒があった。
「動いているAIは、本来、通せん」




