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異世界人育成ゲーム ~生贄の少女たち~  作者: 鬼影スパナ


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マハリク社長の経営




 Wikiネーム:アルルこと、マハリクは社長だった。

 リアルでの役職はもちろんもっと低い物なのだが、この世界においては小さな会社の社長であり、経営方針はすべて自分で決めることができた。


 なので、この異世界ファンタジーの世界観において冒険会社『何でも屋』を設立したのである。仕事はなんでも。食事処のプロデュース、引っ越しのお手伝い、そして冒険者ギルドの依頼もだ。

 ……冒険者ギルドからしてみれば、ただのいちクラン――冒険者たちの相互協力組織の通称――に過ぎないが、マハリク率いる『何でも屋』はそれなりに一目置かれている。


 その理由の一つが、頭の上に浮かぶ輪っかである。

 どうやらこの世界、そして冒険者界隈では頭の上に浮かぶ輪は『精霊憑きの証』で、アンタッチャブルな存在として扱われるらしい。


 部下に指示して依頼をこなし、レベルを上げさせる。上げたレベルと共に稼いだSPを使って、次の部下を『スカウト』する。そうしてマハリクの『何でも屋』はマハリクを含めて2人から3人、3人から4人、そして5人に増えたのだ。

 可愛くも優秀な部下たちに囲まれ、マハリクは冒険者ギルド内での地位を、この町での地位を確固たるものにしていった。


「うーん、順調ね。順調すぎて怖いくらい」

「あはっ、社長ってば、そんな事言っちゃって」

「……」


 最初の部下、イチの発言に対して不意に選択肢が現れた。


 1.『このまま何もなければ良いのに』

 2.『気を引き締めなさい。最悪は、いつだって順調の側にあるものよ』

 3.『そんなことよりおうどん食べたい』


 ……おうどんは食べたかったが、今はそういうタイミングではないだろう。もちろんマハリクが選んだのは2番である。


「気を引き締めなさい。最悪は、いつだって順調の側にあるものよ」

「! そうだね、ごめん! 油断してたかも」


 好感度が上がるピロリという効果音が聞こえた。

 うん、やっぱり選択肢の中のカッコいい奴を選べば良いみたいね、と満足げに窓の外を眺める。

 先日ようやく溜まったお金で買った2階建てビルの上階フロア。ここが、『何でも屋』の社屋であり拠点だった。


「それにしてもこのゲーム……ヤバいわよねぇ……」


 ふぅ、とため息をつくマハリク。その理由はVRモードにあった。


 Wikiを見て、VRモードの存在を知り、とりあえず試してみたところ……超高精度の感覚エミュレータが働いていたのだ。

 明らかに軍用レベルであり、民生品とは思えない設定値。普通のプレイヤーが持つ程度の機器ではここまでリアルな設定は無意味だろうに、とんでもない作り込みであった。


 それだけなら、いや、それでも十分ヤバいのだが……それでいて、『ログが残らなかった』のである。


 VRモードを開始して、終了するまで、VRデバイスに一切のログが残っていなかった。

 マハリクの現実の身体は『ただ寝ていた』という扱いになっていたのである。


 明らかに、怪しい。怪しすぎる。

 そんなゲーム、本来なら即座に辞めて通報するべきだ。……しかし。マハリクは部下達に愛着を持ってしまっていた。


 とんでもなくリアルなVRにおける、とてもリアルに動き、笑う部下たち。

 現実でマハリクが部下の笑顔を見たのは果たして何年前だろう。そもそもあっただろうか……

 いやそもそも無かったかも……だってあいつらとは基本チャットで会話だし……ボイスチャットする時も仕事中の情報共有でしかしないし……情報整理しやすいようにAI補正されてるし……


 話が逸れたが、要するに、マハリクはこのゲームにすっかりハマってしまっていたのである。

 なので見なかったことにした。いや、見逃すことにした。見なかったことにはできなかったので。

 ……多分バレたら懲戒免職を食らうに違いない。が、ログも残らないので……多分バレないハズ……


「大きい組織だとギスギスしてて色々大変だけど、少数精鋭だと平和な人間関係でいいわぁ……」


 せいぜい誰が一番活躍して、社長(じぶん)に褒められるかを競う程度の争いしかない。

 とても微笑ましいし、実際に褒めて頭を撫でると嬉しそうに照れるのが本当に可愛い。

 リアルの部下にも見習ってほしい。

 同業他社から妨害があった時に勝手に報復しないし。いやまぁ、あれは相手の方が悪いんだけれど。尻拭いはいつだって上司の仕事なのだ。


 ……まぁこっちの部下達も報復はしてくるけど、ちゃんと一言確認してくれるだけ良い。

 その時の選択肢にカッコいいのを選ぶと当然報復する方向になるわけだけど。カッコいいから良し。

 結局尻拭いすることにはかわりないんだけど、あのかわいい子達のお尻ならいくらでも拭ってあげたくなるというものだ。


「社長、大変、大変だよ!」


 おっと。2人目の部下が駆け込んできた。なんだろう。


「あわただしいわね、ニィ。何があったの?」

「サンちゃんが捕まっちゃった!」

「サンが担当してたのは盗賊団の潜入調査よね? 正体がバレたのかしら」

「相手に返り討ちにされて、盗賊として捕まって、今詰所に居るの!」


 つまり依頼に失敗したらしい。

 流石の『何でも屋』でも万能ではない。たまにはそういう事もあるものだ。


「なら、迎えに行ってあげないとね」

「しかも、揉めた相手も精霊憑きらしいの!」

「……へぇ、私達以外の精霊憑き? それって、本物かしらね?」


 本物ならとっても話をしたいところだけど、まずは襲っちゃったお詫びをしないといけない。手土産の菓子折りを用意しておくべきだろうな。と思考を巡らせるマハリク。


「ッ! そうか、相手が偽物で、卑怯な手を使ってサンちゃんを……!?」

「精霊様を騙るなんて許せない! 分かった、戦争準備だね! ヨンちゃんも呼びださなきゃ!」

「……」


 待ちなさい、と声を掛けようとして、選択肢が表示された。


 1.『最悪に備えなさい、それが勝利の秘訣よ』

 2.『菓子折りってどこで買えるのかしら。屋台メシでも買ってく?』

 3.『まみむめも! まみむめも!』


「最悪に備えなさい、それが勝利の秘訣よ」

「「了解ッ!」」


 ピロリロリン、と好感度の上がる効果音。

 まぁこの選択肢しかないわよね。と、そうなった。




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― 新着の感想 ―
ログが残らない△ 使ってない◯
マハリク・マハリタ・ヤンパラヤンヤンヤン? 魔法使いサリーちゃんかw
どっかの便利屋さんの社長と同じような沼にハマってて草。 そのうち場のノリでとんでもない無茶に飛び込んで行きそうやな。 え? 今がそう? そうかもね〜…
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