第76話
スライムベッドを自慢しようと思ったらニカちゃんの子守歌を自慢されたんだが?
「ええ! いいっすねぇ2人とも……ちなみにウチはギンちゃんのしっぽ抱き枕だったっす!」
ふわふわの狐尻尾を抱っこして寝た……だと?
「……う、羨ましくなんかあるもんね!?」
「……くっ、ニカちゃんの翼を解禁して羽毛布団で対抗するしかねぇお!」
「お2人のも羨ましいっすよ。今度キングベッドサイズの箱つくるんで、みんなで一緒に寝るのはどうっすか? あ、ギンちゃんの尻尾が足りないっすね」
「ミーティちゃんに擬態してもらえるかなぁ。猫獣人に擬態できるんだし、狐獣の尻尾だけとかいけるか……?」
「スライムってさすが便利だぉね」
というかニカちゃん、実は人ではなかったらしい。
翼生えてんのかよ君ぃ。天使じゃん。だから『穢れ』を浄化できんのかな?
「腰のとこにオデキがあったんだけど、実は翼だったんだぉ。『穢れ』を浄化したら育つっぽいんだぉ」
「へー」
というわけでベッド対決はドローとなった。
さて、というわけで馬車旅の方を再出発するわけだが……
まずは夜中に襲撃してきたモンスターがホームの外で死んでいたので、片付けておく。
小型の虫系が非常に多かったが、鳥系も多かった。ペンペンに焼き鳥にでもしてもらおうかな。
「ひぇ……こ、こんなにモンスターが襲ってきてたんですか。全然気づきませんでした」
「あー、大丈夫大丈夫。ホームはこのくらいのザコならビクともしないよ」
「これ虫をエサとして食べに来た鳥がバチッと喰らって死んだ感じかぉね?」
「鳥はまだ新鮮だしその流れっぽいっすねー」
むしろバチッと反撃するようにしてある。それで仕留められた分がホームの外で死んでいた分だ。
バチッで生き残った分は逃げていっただろう。無駄な殺生は好まない、と言いたいところだが、経験値になり無駄ではないため「チッ逃がしたか」と言わざるを得ない。
「これ放置してたら次は鳥をエサにする中型のモンスターが着そうだぉね」
「そんで中型をエサにする大型まできたら流石にホームの防衛機能だとキツイね。MPも使うし」
「その前に簡易攻性結界だと死なないで突破されるっすよ。逃げてくれたらいいんすけどね」
逆にイナゴの大群の真っただ中にホーム置いたら経験値荒稼ぎし放題だったり?
……流石にMPが尽きるか。それに多分普通にモンスター倒した方が効率よさそうだ。
「じゃ、出発しようか。昨日と同じ配置でいいよね?」
「今日には着くっすかねー」
「御者よろしくだぉー」
「……あ、はい」
ホームを格納して出発進行。ミーティちゃん商人さんのこと守ってあげてねー。
* * *
「精霊様達ー。盗賊だよー」
「ぉー。ちょっとまつぉ、今いいとこ……」
「おいおいアルト。敵が迫ってるんだから出撃だぞ」
「どうせザコだし可愛い子いねぇお。任せるぉ……うむむ、これ詰んでるかぉ?」
「どうすかねー? フフフ」
マグネットを仕込んで馬車揺れ対策が整ったボドゲで対戦中の2人は置いといて、俺は馬車の外に出た。
「それにしても、結構出るもんだね盗賊」
「え、ええと、はいスライム様。そういうルートを選んでますので」
なるほど、治安の悪い命知らず最短ルートということか。
……お!?
「おいアルト、ペンペン、可愛い子いるぞ!」
「マジかぉ! ボドゲってる場合じゃねぇぉ!」
「あ! 自分が負けそうだからって逃げるのはずるいっすよ!」
そいつは可愛い女の子だった。男の娘でなければ。
そして、しかしながら。頭の上に輪っかが浮いていた。シンプルな輪っかだ。
「ぉ? 頭の上に輪が浮いてるぉねぇ……」
「プレイヤーっすか! PKっすか!……ん?」
「げぇ!? せ、精霊憑きが3人!? ま、待って! 話を聞いて!」
「うーん、問答無用、ヒャッハー!!」
とりあえず殲滅した。プレイヤーだろうと盗賊死すべし容赦はない、ただし可愛い子は捕獲。
というわけなので、可愛かったプレイヤーの子は無事捕獲された。
……うん、こちとら3人だぞ3人! 勝てるわけないだろ! 相手が1人目だとしてもこちらにも戦闘系1人目がいるのだよ!
「ちがうんです、依頼なんです! 誤解です!」
「ぉっぉっぉ! プレイヤーだとしてもPKする奴は犯罪者だぉ、人権は無いぉ!」
「冒険者ギルドに問い合わせてくださいお願いします……!」
ふとその顔に見覚えがある気がした俺は、ちょっと名前を聞いてみることにした。
「もしかして、Wikiでアルルって名乗ってる?」
「あるる?……え、えっと。精霊様、マハリク様のお知り合いですか?」
「あ。この子、アルル氏の『3人目』の子だぉ! スクショ上がってた子だぉ!」
「え!? そのプレイヤー、もう『3人目』なんすか!?」
「いや。実は『1人目』なのかもって話だったぉ」
「どゆことっすか?」
確か、アルル氏は会社経営タイプのゲーム進行になっていて、部下が増えているらしいのだ。
そして、このキャラがその『部下3人目』ちゃんである。
「Wikiに参加してるプレイヤーの子だったってことっすね、把握っす!」
「ですので、その、解放していただけませんかね……? ダメ?」
「ダメだぉ?」
「ぼ、冒険者ギルドに問い合わせてくれれば依頼だってわかりますからぁぁ……」
「ま、だとしても問い合わせが確認できる町までは捕虜扱いだな」
「そんなぁ……とほほ」
かくして、新たなプレイヤーの部下を捕まえ、その日の夕方にスリアドの町へ到着するのであった。




