第75話
お留守番組に操作を移し、ペンペンのホームにて寛ぐ。
馬車組の子たちは俺のホームで休憩中だ。屋根はあるから雨風はしのげる小屋があるので野営よりはるかにマシな環境である。
先日の粗末な小屋からは整えて、多少は休めるリビングになっているのだ。中古家具で。サンキューペンペン。
さて、制限解除で1日を3日に引き延ばせることになった。
しかし我々はゲームのキャラではないので、3日活動するなら休養も3日分取らないといけないわけで……結局ゲームの外に戻ってリアルで休憩しないと、疲労がマッハでヤバイ、ということになる。
「ところでVR睡眠って知ってるかぉ?」
「VR睡眠……?」
そしてニカがそう言いだしたのである。
「要は、VR空間に入ったまま寝るだけなんだけど」
「寝落ちってことか」
「ま、しっかりリラックスする環境を整えて、って感じだぉね。ヒーリングミュージックに、大人しく落ち着いた映像で」
なるほど。
でもそれ、疲れとれるのかなぁ? と首をかしげてしまう。
「ヘッドセットとかつけてたら結局余計に肩凝りそうだけど、そもそも現状ヘッドセットとかねぇしぉ」
「なら一応休めはするのかな?」
「脳が加速してるなら休んだところであんまり意味ない気もするっすけど……」
それはそうだ。物理的な話としてリアルの脳は結局1日が1日のままのはず……はずなので。
だから、思考加速については色々と規制されているわけで。
そのはずなのだが……
「いや、ニカちゃんで半年を1日にした経験から言わせてもらうけど、このゲームのゲーム内での休養はガチで疲れが取れるんだぉ。リアルに戻った時にはリアルで疲労してたのがそのまま残ってるけど」
そう。このゲームはなんかおかしいことに、ちゃんと休めるのだ。
しかし戻ったら疲れが復活ってのは凄いけど微妙。ゲーム内で休んでもリアルで疲れは取れない、ってのは、まぁ当然といえば当然なんだけども。
「満腹システムと同じ感じだぉね」
「あ、そういやアレも空腹とかはそのままだもんな」
「そっすね。リアルに戻ると急に空腹になってビックリするっす、あんな感じかぁ」
とはいえつまりだ。
ゲーム内だけでも休んでおけば、ゲームの疲れをリアルに持ち越さないでいい、というわけ。
「ということはホームにしっかりしたベッドを設置して、その中で休もうって話か」
「ぉっぉ。宿でもいいんだけど、この世界って宿が中世レベルにシャワー付いた程度で割と陳腐だからぉ」
「家具のクラフトなら私の出番ってコトっすね!……うん、ボドゲの駒に磁石仕込むのにくらべて大して時間もかからないし、先にベッド作っちゃうっすよー!」
そもそもベッドはクラフトのレシピにあるので、自分で色々調整が必要なゲームの駒への仕込みとは異なり材料さえ集まればパパッと作ることができるそうな。
もちろんレリーフを入れたり追加パーツを、と凝れば調整に時間がどんどんかかるわけだが……
「お二人とも、別に『綺麗なベッド』のデフォルトでいいっすよね?」
「追々は凝るかもだけど、今のとこはそれでいいぉ! ボクは凝るとしたらマットレスとかだぉねー」
「そうだな。どうせ寝たらベッドのレリーフなんて見ないわけだし。機能重視」
「私はそこらへんも睡眠の満足度に関わるんで、まぁ今日はデフォルトで作るっすけど、自分のはしっかり可愛くするっすよ。追々!」
ペンペンってそういうとこ好きだよなぁ。
というわけでシンプルなベッドが3つできた。
「おーし、じゃあさっそくこいつをホームの部屋に置いて寝てくるわ!」
「どっちか部屋貸してくれぉー。ベッドが置ければ倉庫でもいいぉ」
「いいっすよー、ホーム拡張して空いてる部屋あるんでそこ使ってくださいっす。これを機に客間にするのもアリっすねぇ……うひひ、贅沢っす!」
家に客間があるとか、かなりの裕福層の家だもんなぁ。
ちなみにホームだが、外見に比べて中身はやたら広かったりする謎空間だ。
インベントリみたいなもんだから今更気にする程の事でもないけど。
さて、そんで俺は2人と別れて自分のホームに戻ってきたわけだが……
ベッドを持って部屋に入ると、ミーティちゃんが抱き着いてきた。
「精霊様! スライムベッド、スライムベッドしよう!? ね!?」
「その発想はなかった……!」
スライムベッド。つまり、スライムのベッドである!!
なんのこっちゃという話だが、ようはマットレスをミーティちゃんがやってそこに俺が寝るわけだ。
これだとミーティちゃん休めなくない? と思わないでもないが……分裂して操作しないほうのスライムをマットレスにすればいいわけで。
「うっかり食べたり溺れさせたりしないようにはできる?」
「もちろんできるよー」
とのこと。
よし、それじゃあベッドの寝るところを……あ、これ板の上に厚めの布団敷いてあるレベルなのか。布団部分だけ退けて、ミーティちゃんにお布団になってもらって……分裂!
「おー、ぷるんぷるんでひんやりしてて、でも冷たすぎないでいい感じ」
「えへへ、一緒に寝ようね! あたし掛け布団ね!」
スライム掛布団、そういうのもあるのか……あるのか?
そう思いつつベッドに横になると、ぽこんっと枕が生えてきた。スライム枕だ。ナイスミーティちゃん。
さらに、ミーティちゃんが俺の上に載ってきて……とろんととろけて、掛かった。
まるであんかけチャーハンのようである。ま、まぁ身体は外気に晒されなくなったので、布団としては成立しているかな。本物のスライムだとこうはならないだろう。
あ、ちゃんとじんわり体温がこもってほんのり温かい。落ち着くかもコレ……
「えへ、えへへ、精霊様……精霊様が、あたしで包まれてる……っ、ふぁ、好き、好きぃ……」
「よーし、それじゃお休みー……ちょっとくすぐったい」
「あ、ごめん精霊様。あんまり動かないように気を付けるね?」
そして朝までぐっすり寝て、疲労もすっかり取れた感じがした。
色々ベトベトになったけど、ちゃんとミーティちゃんにスライムを回収してもらったらむしろスッキリしたし……総評として、スライムベッドは中々に快適だった。
アルトに自慢してやろーっと。




