第70話
アルトがやってきたのでホーム接続を見せびらかしてみたところ、ゲートを出たり入ったりして機能を確かめている。
ちゃんとホームの持ち主以外も移動できるようでなによりだ。
「へー。ホームを接続なんてできたのかぉ……これはますますSP稼ぐ必要が出てきたぉね」
「ちゃんとホーム格納後に別の場所に設置しても接続しっぱなしなのも確認したぞ」
「格納中は門が閉まってたっすね」
プレイヤーのキャラが入ってるとホームも格納できないから、収納中のホームにプレイヤーが入ることはない、というわけだね。
「というわけで新しい町を開拓してみようと思うんだけど、どう思う?」
「いいんじゃないかぉ? 現状ボクはホーム習得のためにSP稼いでるわけだけど、毎日でもツードンに帰ってこれるわけだし、慣れた冒険者ギルドに通うのに支障もないぉ」
「ファストトラベルする分には一瞬だから良いんだが、新しい町に行くとなったら旅しないとだしなぁ」
「おっ、ボクに任せるぉ、経験者だからぉ!!」
アルトにはこのツードンまでやってきた実績があるしな。
「でもそれ、VRモードでは旅してないよな」
「あの時はまだ端末操作だったぉね。逆に言えば、旅が詰まらなかったら端末操作でオートモードにしちゃえばいいぉ」
「まぁ街道を進むだけなら特に危険もないだろうしな」
「盗賊とか出たらアルトちゃんが楽しくぶっ飛ばすぉ!」
「可愛い女盗賊ならホームに監禁してペットにするのも吝かではないな」
「ぉ! 可愛い男の娘盗賊でもペットにしていいと思うぉ!」
お前そっちいけるクチか。
「なら、アルトのホームで飼うんだな。俺は女の子盗賊だったら飼う」
「ぉっぉっぉ! ますますホーム取得が待ち遠しいぉね!……ニカちゃんには頑張ってSP依頼をこなしてもらうぉ!」
「が、がんばるね、精霊様……!」
ニカちゃん顔が引きつってるじゃねぇか。ニカちゃんのSP依頼って『穢れ』の浄化系だからな……
「あ、その、わ、私、ひとりでも大丈夫だよ?」
「……いや! ボクも一緒にいくぉ! ニカちゃんだけに苦い思いはさせねぇぉ!」
「せ、精霊様……! ありがとう、とっても嬉しいよ」
ぎゅっとアルトに抱き着くニカちゃん。
ペンペンはそっと蜂蜜と生クリームたっぷりのカロリー爆弾なドリンクを2人に差し出した。
「ってかそもそもそんな可愛い子がいるもんっすかねぇ? 可愛かったら盗賊なんてしてないっすよ!」
「いやゲームなら可愛い盗賊は定番だぉ?」
「そうだそうだ、可愛い盗賊に命乞いさせてぐへへ展開するんだ! ぐへへへ」
「そういやゲームだったっすね。……でももはやどっちが盗賊か分からねぇっすよ?」
「なーに、襲い掛かってこなかったらなにもしないぉ」
「そうそう。犯罪者には容赦しないだけで」
盗賊は襲い掛かってきた時点で殺していいわけだし、むしろ命を助けてあげるだけ優しいよね。
「蹂躙するつもりなら、蹂躙される覚悟があるってことだぉー。銃を撃たれる覚悟があるヤツだけ、銃を撃つぉ!」
「それ言っちゃうと私らも蹂躙される覚悟があるってことっすよ?」
「あるに決まってるぉ?……あ、戦闘判定になったら倫理コード突き抜けてくるんじゃないかぉ?」
「エロ展開は残念ながらスキップされそう」
「じゃあわざと負けて負けイベント回収とかする必要ないぉね」
むしろスキップしたらそのままロストされたりしそうだから、わざと負けたりはしない方が良いな。
「……ハッ! 良いことを思いついたぉ! ペンペン、帽子作ってくれぉ!」
「帽子っすか?」
「それもこの光輪が隠れるヤツ! 光輪って精霊憑きの証だからな、下手したら盗賊も寄り付かねぇやつだぉ?」
冒険者として名前も売れてるし、いくら俺達が可愛い女の子でも光輪で精霊憑きってバレたら襲い掛かってこないか。
「え、光輪って帽子で隠せるんすかね」
「光輪は壁とかすり抜けるからなぁ。かなりデカい帽子なら隠せるかな? コック帽みたいなデカいやつで、さらに太さもあるような……頭に土管でも載せるレベルの」
「相当不自然なことになりそうっすけど……んんん、神官風? 大商人っぽく? とにかく大金持ちの道楽的な感じで、衣装と併せてなら違和感を消せるっすかねぇ」
ペンペンがデザインを紙に書き出す。すごいな、ちゃんと神官風の、頭が上に伸びる感じの豪華な帽子。衣装も金満神官の儀式服っぽくてゴージャスだ。
……これ相当動き悪そうだけど、たしかにこのくらいないと帽子の違和感は消せないなぁ。
「コスプレも楽しそうだぉ。あ、でもすぐ脱げるギミックは欲しいぉね。戦闘入って服で身動き取れなかったらキツイぉ」
「遠目から誤魔化せれば十分かな?」
「むしろ遠目から可愛い女の子に見えないかもしれないっすね。盗賊に対する餌としてはあんまりっすねぇ」
「金持ち商人の方ならむしろ寄ってくるんじゃないかぉ?」
「うーん、この衣装を作るとなると結構面倒っすねぇ」
布に装飾品、すぐ脱げるギミック。色々考える事が山積みになりそうだ。
「……あ。いっそ商人を護衛する依頼受けて、馬車の中に隠れておく、でよくないっすか? 多分それが一番楽だと思うっす!」
「ペンペン、やはり天才か」
「道に詳しい商人についてくなら迷子にもならないぉ! さすがペンペン、そこにシビれる憧れるぉー!」
ついでに依頼をこなせて小銭も稼げる。実にいいアイディアだね!
というわけで俺達は冒険者ギルドで『護衛依頼』を受けることにした。




