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異世界人育成ゲーム ~生贄の少女たち~  作者: 鬼影スパナ


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第66話


 崖は切り立ち一見上るのは不可能――だがそれは人であればだ。

 こちらにはスライムクライマーのミーティちゃんがいる! たとえ垂直の壁だろうと、若干程度の返しがついていようと、ミーティちゃんなら登り放題!

 というわけでトリアちゃんを抱っこしたままぺたりぺたりと壁登りしてもらって、余裕の登頂。


「とうちゃーく!」

「お疲れ、ミーティちゃん」

「あはは、なんのなんの。全然疲れてないよー?」


 トリアちゃんが小柄なのもあるけど、そういやトリアちゃんもホームに仕舞っとけばもっと楽だったのでは? と気付いたのは今更になってからだった。


 ……気を取り直してー!


「やってきました崖の上。整いました競技の準備。いざ取り出したるは、大きな子亀の質量弾!」

「精霊様、なになに?」

「ああうん、ナレーション。競技スポーツには定番なのさ。ほらミーティちゃん、スタンバイ、OK?」

「おー!」

「それじゃ、そこらへんに立って。俺が手を挙げたら甲羅を落としてね」

「はーい!」


 はい、それではこの子亀! こちらが今回のボールとなります。

 的ははるか崖下の砦。小さく見えますが上手く当てることはできるのか? 運の要素が非常に大きい競技となっております。


「さぁ始まりました崖の上から甲羅投げ。1投目、ミーティ選手。振りかぶってー」

「あははっ、そいやー!」

「投げたー!」


 振りかぶって投げたというか勢いつけて体当たりで押し出した、だけど。まぁいいか。


 ガンゴンガンガンゴンガンガン! と崖をぶつかりながら、子亀の甲羅が、子亀と言いながらも某冒険映画の転がる岩トラップ並みの大きさのそれが、砦に向かって勢いよく落ちていく。

 子亀の死体(中身)入りなので相当な質量兵器。直撃すればひとたまりもないだろう。

 崖の側面にあたり不規則に跳ねまわり、落ちた場所は開けた場所だったが、その勢いのまま建物に突っ込んで倒壊させていた。


「精霊様、精霊様! 今の何点ー?」

「うーん、50点! 高得点だぞー!」

「やったー高得点!」

『精霊様、次トリア、次トリアもやりたいです!』

「お、じゃあ選手交代だ。ミーティに操作を移して……っと」


 第2投目! 選手交代してトリア選手。その足で甲羅を……蹴り飛ばしたー!


 ガンゴンガンガンゴンガンガンガン! と跳ねまわって、今度は直接建物にドガンと命中!

 おおっと、わらわらと黒い鎧の兵士達が出てきて騒いでいる。


「ふふん、けーさんどおり。どうですか精霊様」

「こっちも50点だ! よーし、次は2個同時にいってみよう。長く跳ねまわってる方が勝ちだぞ」

『やるー!』


 3、4投目ぇ! 3、2、1、ゴーーー、シューーーッ!!


 え、競技が変わってる? 細けぇこたぁいいんだよ!!


  * * *


 はい。

 ちょっと楽しくなっちゃったので、インベントリの中にあった子亀共、ほぼ全部ぶん投げちゃいました。

 いやぁ、だってこの高さから落としても壊れなかったし……後で回収すればいいかなって……

 逆に素手で甲羅破壊できたトリアちゃん何なの? という感じではあるけど、全体にどしんと当たるような衝撃には強いんだろう。多分。大亀にも飛ばされてたしそう。きっとそう。


 流石に何人もの兵士が砦の外に避難して、残った兵士も崖の上を注視している。

 そりゃ崖の上から降ってきたら崖の上になんかある、ってなるよね。上がってこれないみたいだけど。

 こっちはミーティちゃんに抱っこしてもらって上ったからな。


 ただ予想外だったのは、避難した兵士達が落ちてきた子亀を見て、怯え切って逃げ出した事だ。俺達がやってきた村とは反対方向に。

 いや、それ死んでるねんで? なんでそんな怯えてるん? と思わず訛った疑問形を浮かべてしまった。

 耳をすませばなんて言ってるか聞こえるかなぁ……


「あ。ホーム出すか。ヴァレリアさんに依頼状況を確認してもらわないと」

「だね!」


 ホームを出してミーティちゃんにヴァレリアさんを呼んできてもらう。


「……さっきベッドに入ったばかりなのに……ええと? あれ、ここは?」

「崖の上だけど。ほら、あそこが敵の拠点」

「いつの間に上ったんだ、そして、どうみても壊滅・壊走してるんだが?」

「ちょっと遊んでたらつい」


 俺がそう言うと、ヴァレリアさんはこめかみに手を当てて「……そうか」と声を絞り出した。


「全滅はさせられなかったけど、依頼についてはこんなもんでどう?」

「……十分だな。この難攻不落の渓谷砦を……まさかここまで……」

「お、よかった。んじゃ、亀回収してこようかな」

「精霊様! あたしに任せて! とってくるよー!」

「いや普通に降りよう。敵みんな行っちゃったし」

「つまみぐいはしていい?」

「……ほどほどにね?」


 というわけで依頼状況の確認もできたし、改めてヴァレリアさんをホームに入れて、ミーティちゃんに崖をおりてもらう。今度はトリアちゃんも一緒にホームに……と思ったのだが、トリアちゃんが中に入ってるとホームを格納できなかったのでヴァレリアさんだけだ。


「んじゃ、壁降りよろしくー」

「よゆー!」

『よろしくミーティ』


 ミーティちゃんが擬態(人)を解いてトリアちゃんの腰にぷるんと巻き付く。そして垂直に近い岩壁をぺた、ぺたと直接降りていく……ちょ、早い早い早い! 落ちてないこれ!?


「ごめーん、砂で滑ったー」

『やれやれ。精霊様、替わって。あの無事な建物の上に落ちるから、ミーティはこのままトリアに捕まってるといい』

「お、おう!?」

「はーい」


 そして交代し、即座にガンッと壁を蹴り落下軌道を変えるトリアちゃん。宣言通り、無事だった建物の屋根に着地。ギリギリ無事だった建物は着地の衝撃を受けて倒壊。トリアちゃんは即座にジャンプし、倒壊からも免れ再度着地。

 す、すげぇ。アクション映画かよ。


「ふふん、今のトリアはこのくらいの崖、無傷で降りられる。すごい?」

『このゲーム落下ダメージヤバいのに……! すごいぞトリアちゃん!』

「やった、褒められた。鍛えたかいがあった」


 得意げにふんすと鼻を鳴らすトリアちゃん。

 いやまじで、死ぬかと思ったよ。危なぁ……!


『ミーティちゃんはペナルティとしてつまみ食いナシで』

「えええー! ご、ごめんなさい精霊様ぁ!」


 そういうことにしておいた。




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