第56話
トリアでログインすると、昨日ログアウト前に作ったホームに出てきた。
といってもまだデフォルトの置物のような小屋と畑だけ。ペンペンのところような凝った家は遠そうだ。
ホームの畑にはちゃんと昨日のうちに植えたトマトがごろごろ成っていた。
ミーティちゃんがそれを涎垂らしながら見つめてたので一つ与えてみた。豪快に手ごとぱくんと包まれ、トマトだけぷちゅりと食べられた。わー、手をしゃぶられてるぅ。新感覚。
ミーティちゃんがぷはっと離れたあと、手はべちゃべちゃ……ではなく、むしろ手洗いして乾燥機かけたあとくらいスッキリしていた。
「トマト美味しい! 赤いし! ぐちゅってなるし!」
「ミーティちゃん、それは美味しい要素なの?」
「食べてて楽しいよ? あとお姉ちゃんって呼んで? ミー姉でもいいよっ」
「今は中身俺なんだけどね」
「あっ精霊様かぁ! あははっ、なんであたしじゃないの? あたしならみんなで遊べるよ? あたしにしよ? ね? トリアちゃんもその方が良いよね? ね?」
「うーん、おねだりは可愛いけど、今日はトリアの気分なんだよな。人間の感覚を取り戻すためにも」
「……ならしかたないねー? 次はあたしね? ね?」
スライムボディはそれはそれで楽しいけどね。
さて、それじゃあ今日はホームで色々と遊んでみよう。ホーム関連の操作については2人目でホームを取得しても1人目でもできる模様。
まずは小屋をアップグレードするため素材を手に入れてこないといけない模様。
木と石を集め……あ、『作物を収獲しよう』のミッションの報酬で貰えるんだ。なるほど、ペンペンがおススメしてたわけだ。
というわけで小屋をアップグレードすると、物置からログハウスになった。
「精霊様、小屋おっきくなったね!」
「もっとしっかりした家にしたいな。そしたら内装も捗るだろうし」
「あたしは錬金術をすればいいんだよね? 基本をペンちゃんから教わったけど、錬金術用の色々煮込んだりできる壺が欲しいなっ」
「壺は買ってくるか材料を集めて作るか、か」
トリアちゃんの冒険者としての稼ぎもあるので買うのは余裕だが……
「実はここにあらかじめペンペンから貰った壺があります。進呈!」
「わーい! 精霊様ありがと! 好き!」
土をこねて焼くだけでクラフト系の経験値が入るってんで大量に作ってたらしい。こういうの貰えるの、後追いの良いとこだよね。
そしてペンペンは錬金術よりクラフト系が好みのため、錬金術は一通りの回復薬が作れる程度で止めて中級には手を出す予定がないらしい。
つまり! 薬はミーティちゃんに任せろー! ということ。
こちらはお礼にギンちゃんのレベリングを手伝う予定。そしてその素材はペンペンとミーティちゃんの生産スキル上げ素材に……出来上がったものをまたレベル上げに利用。
永久機関が完成しちまったなぁ!!
「というわけでこのペンペンから貰った余った薬草をポーションにしてみようか」
「はーい! ちゃんと習ったよー。……コンロは?」
「無いから焚火だな」
太めの木の枝を重ねる。ライターはないが、ホームの機能で『焚火』をクリエイトすれば火がついた。そこに水を入れた壺を直に置く。
ミーティちゃんはそこに薬草をポイポイ入れて煮込み始め――ると見せかけて、やはり錬金術を発動すると、一瞬でポンッとポーションが完成した。
「おお! あたしのホームでもできた!」
「よっしゃ、ホーム関連のミッションもいくつか達成扱いになってるな」
「えらい? あたしえらい?」
「おー、偉いぞミーティちゃん。よしよし」
「えへへー! やったー!」
ミーティちゃんの頭を撫でる。……そういやミーティちゃんはどこまで触れるんだろう。スライムだよね? 頭も足もその他も大して変わらないのでは?
その他も! そう、その他も――ミーティちゃんの胴体に手を伸ばしてみる。
「うに?」
ずぽん。と、手が埋まった。……服と見せかけて擬態なのである! つまり実はこの子全裸。……ペンペンに服作ってもらおうかな。
「あははっ、くすぐったいよ精霊様ー! んにゅっ、もうちょっと上ぇー」
「お? ここか? ここがええのんか? ん? ちょっと硬い?」
「んっ! そこそこぉ……ふぁぁ」
とろん、と、した表情――というか擬態が半分とけて身体がほんのり溶ける。あ、コアかぁここ。
「精霊様ぁもっとー」
「はいはい、ここまでねー」
「むぅ、もっと作ったらもっと撫でてもらえる……! がんばる!」
『精霊様精霊様。トリアも撫でてください』
「ん?」
『撫でてください!』
「……えーっと、よ、よしよし?」
と、自分の頭を撫でる。良いのかこれで?
『んふふ……えへっ』
良いのかこれで。
さて、それじゃ畑でも耕しますかね。昨日ペンペンから借りた鍬を装備してー、畑の隣に立ってー。えいポチッ。
はい、畑できたー。
「いやー、やっぱゲームの畑仕事って楽でいいなぁ。リアルだとしっかり土掘り返したりしないといけないんだよね、しらんけど。鍬ってどうやって使うんだろ……」
「しらんのか。鍬は振り下ろして使うんだぉー? 形状から想像できるぉ?」
「お、アルトじゃん。いらっしゃーい」
同僚、アルトがホームにやってきた。
さっきログインしてたんだよな。
「ほい、ニカちゃんのレベリングついでに薬草取ってきたからあげるぉ」
「サンキュ。ポーションあげるね」
「使わせてもらうぉー。あとでペンペンち行くぉー」
「そうだな。ホームを一旦格納してペンペンのホームにいくか」
ちなみに今、うちのホームはペンペンのホームとは離れた場所に設置している。ペンペンが牧場の方にホームを移動させて、俺が前までペンペンが使ってた場所を拠点に素材集めをしているからだ。
ならこっちも牧場の近くでいいじゃないかって?
ちっちっち。なんと、『ペンペンのメモ』付きなのだ。この付近、どこで何が取れるかの手書きメモである!
「いやー、ペンペンってこういうのマメだよなホント」
「というか、オートモードでトリアちゃんに集めに行ってもらうのが良いんじゃないかぉ? ミーティちゃんだと分裂してユニット増やせるし実質3人プレイは強いぉ」
「それは……まぁ、確かに?」
というわけでミーティちゃんに移動して分裂。トリアちゃんに素材収集に行ってもらうことになった。
さーて、錬金術してみるかぁ!
「アルト様、アルト様。トマトあげる。お礼」
「ぉ? ありがとだぉミーティちゃん……お礼? なんかしたかぉ?」
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