第55話
『おぉ……体感半年ぶりの仕事だぉ……』
「大丈夫? 支障なさそ?」
『鈍ってはいないから大丈夫だぉ……はぁ、ホントに1日、てか1時間かぉ……』
はぁ、とため息をつく同僚。
『むしろ休日を増やすのに使いたいから定期的に数日分にならないもんかぉ?』
「ははは。それな」
『実質週休4.5日生活とか素敵だと思わん?』
それ毎日仕事上がりに1日時間増やして休む感じだよね。休日も2倍に増やしつつ。
「脳に負担がかからないなら全然アリだと思うよ。むしろ最高じゃね?」
『だぉね。ボクが半年もかかっていたのに廃人になってないところを見るに、完璧に安全な加速システムだぉ』
「2人目クリアしたことでコンフィグ増えてないかな、加速……」
『あ。そういやチェックしてなかったぉ。もしできるならますます違法じみてて最高だぉねー』
完全没入型VRでご飯が美味しくて意識加速……うん、もう最高だな。
現実に戻ってきたくなくなるヤツだ。
「現実ってクソだな」
『完全に同意だぉ。クレーマー対応やってらんねぇ……』
「同僚が頑張ってくれてるからウチはやってけてんだ。ありがとうよ……!」
『けっ! どういたしましてだぉ!』
まぁそれはそれとして。
「ホーム取ったし、これで俺も錬金術とかできちゃうぞ」
『いいなぁ。はぁー、ボクもホームとりたかったぉ。なんやかんやニカちゃんの治療と強化でSP使っちゃったから取れねぇんだぉ』
「ま、そもそもペンペンが持ってるから要らないかもしれんし」
『そのあたりは要検証だぉね。一人一人がホーム取得する利点があれば、ボクも頑張って習得するしかねーぉ』
ホームを取得できるようになったので、昨日は落ちる前に早速ホームを取得した。ペンペンのアドバイスでホームに畑作って種まいてからのログアウトである。
また、SPをトリアちゃんに集約はせず、ミーティちゃんで取得しておいた。
前衛戦闘系のトリアちゃんと比べて、ミーティちゃんは後方支援タイプで育ててみようと思っているのだ。
ミーティちゃん、錬金術とかやれると思うんだよね。スライムだし。スライムだし! 知性があるタイプの味方スライムって、こう、体内で薬生成したりするもんじゃん?
「というわけで、ミーティちゃんは錬金術スライムにしていこうかなって」
『研究所皆殺しにした殺人スライムじゃなかったのかぉ?』
「攻撃スキルとか全然とらなかったから、実は戦闘は弱いんだよ。攻撃手段は体当たりと突き刺し、あと食べるくらいだぞ」
『マジかぉ。よく研究所を殲滅できたぉね?』
「奇襲と奇策で片づけたからな。他の暴走実験体と戦うイベントも発生しなかったんだよね。多分会話で戦闘ルート回避したから大した敵が居なかったんだと推測」
実験体ヒロイン、アネットちゃんがデーモンになってバトルする展開もあったと思うんだよね。実際。……ああ、そういやあの赤い角インベントリに入れて持ってきちゃったけど、どうすっかなー……当面肥やしだな。
『ニカちゃんは前衛格闘系でトリアちゃんとキャラ被ってるぉね。まぁタンクヒーラーだから戦闘スタイルはちょっと違うけど』
「ニカちゃん、あんな可愛い顔してヘイト集めの権化なのかよ」
『半年鍛え切ったからぉ。後衛射撃キャラのアルトちゃんと相性いいのは間違いないぉ?』
前衛でニカちゃんがじっくり耐えながらアルトちゃんが後方から狙い撃ち。確かに良い組み合わせだよな。単純ながら効果的なバディだ。
『早く仕事終わんねーかな。さっさとゲームにインしてぇぉ』
「だな」
『検証したいことが山ほどあるけど、全部やってたらキリがねぇのもあるぉ。何を調べるか計画立てないとだぉねー』
「とりあえず、錬金術あたりか? ミーティちゃんにペンペンちゃんに教わってある程度は勉強してもらってるけど」
オートモードでそう設定しておいたので、ゲームに戻ったらどのくらい成長してるか楽しみだ。トリアちゃんは素材集めで。
『それもだけど、マジャーク共和国ってのも気になるぉ?』
「あー、まぁ改めて国に報復とかしたいよね。ゾルド君……救出成功した獣人奴隷たちがどうなってるか見ときたいし。冒険者ギルドに情報収集しに行くか」
『あーそれなんだけど、Wikiの地図のとこに情報あったけど、国の場所とかも依頼じゃないと教えてくれないらしいぉ。しかも地図とか無くて行き方教えてくれるだけらしいぉ』
「え? マジかよ。なんで?」
『地図って軍事情報だからだぉ』
地形や配置が分かれば、それを元に攻略作戦を立てることができる。有利に戦争できる。つまり『晒したら負け』という情報だ。
『だから地図見せてくれって言うと、プレイヤーが自分で埋めたマップ機能を使う分にはいいけど公開は絶対にするなって話されるらしいぉ。犯罪で捕まるから』
「まじか。この間テーブルに広げてたのもまずかったかな」
『あれはプレイヤーにしか見えないらしいから大丈夫だぉ』
アウトなのは紙に書き写して販売とからしい。へー。
……
研究所で回収した情報に地図あったよな? 結構なレア情報って事かぁ。
『獣人達、ちゃんと脱出できて生きてるといいぉね』
「ああ。場合によってはペンペンに手伝ってもらって新たに手を貸すかだな。……6人いればやれることも多いだろうし」
ゲームの話題に花を咲かせつつ、今日も定時過ぎまで乗り切った。
さーて、ゲームだゲームだ。ゲームの時間だー!




