第52話
「お疲れー」
「楽しかったー!」
ぱちん、と触手でタッチ。
触手はぽゆんとくっ付いて、俺とミーティちゃんは1匹のスライムに戻った。
お遊び要素として用意しておいた赤い棒、あんまり活躍できなかったなー。
当たった時の「ぐぎゃー」って死んだフリもちょっと練習したんだけどね。
もっと赤い棒をめぐって殺し合いとかになってほしかったが。手にくっつくようにしたのは失敗だったかも。
ちなみに赤い棒のダミーはガラスの破片埋め込んどいて、防護服の手に「握られたら穴開けてくっ付け」とだけしておいたものだ。
操作してないダミーでも「それ食べといて」くらいの簡単な命令と行動はできるんだ。これが限度だけどね。
本物の赤角についてはインベントリの中だ。食べきれないものはインベントリにいれる。ペンペンに教わった基本だぜ。
……早く合流して、美味しい肉くいてぇよな。人肉はもういやだ。
ミッションも無事クリア。
地下の使用人? 食ったよ? 25人ミッション達成したぜぃ。
報酬として、スキル『擬態(人)』を覚えた。
擬態。いいね。お遊び要素として用意しておいた赤い棒のダミーは分離したスライムをこねて細長く伸ばしただけだったし。
というわけで、ミーティちゃん表面の赤い血を「捕食」で綺麗にして、擬態発動!
「おおっ……!? すごい、手が肌色してる!」
先ほどのなんちゃって擬態とは違い、ちゃんと色がついていた。手の感じからしてちゃんと女の子の手、肌触りだ。
だが指を曲げるとぐにぃっと関節を無視して曲げることもでき、腕を強く握るとぷにっと指が沈み込む感じからして、擬態は表面だけなんだろう。
ふんばれば人並みには硬く出来るかな。
青色の髪の毛も一本一本が触手ではあるが細すぎて頑張らないと動かせないやつ。房単位でくっ付ければ触手みたく動かせるな。
『わー、アネットみたいになれたね』
「お、そうなのか? 俺も見たいからオートモードに切り替えて、と」
光輪のTPS視点で見ると、確かに色違いのアネットのようだった。あの赤い角はなく、手足は普通で猫耳が両方揃ってはいるけど。
『アネットそっくりだな』
「うん。アネットの妹のこと忘れないように。アネットが双子っていってたし。ほら、あたしもアネットの妹じゃん?」
なるほどね。いじらしいじゃないかミーティちゃん。
髪の毛の色も好きに変えられそうだが、まぁ人に擬態するときのベースはこれになりそうだ。
「……これならアネットも一緒だよね、精霊様」
『うん、そうだな』
「あとアネットが寂しくないように、あたしも妹いっぱい作らないとね!」
『うん? そうだな?』
「まずはあの獣人の子たちを妹にしよう!」
あれ? ちょっとおかしい事言ったな?
『ねぇミーティちゃん? 妹いっぱい作るってどういう事?』
「あのね? アネットには妹がいるんだよ。だから、あたしがアネットの妹なら、あたしが妹を作れば、アネットの妹が増えるでしょ? 妹の妹は妹だからね! あたし賢い!」
『???』
うーん、ちょっと分からないですね。
「妹がいっぱいいれば、アネットも寂しくなくなるでしょ?」
『あー、そういう? 弔い的な』
「え? 精霊様、アネットはここにいるんだよ? あたしが食べたんだから」
あ、ちょっと情緒育てすぎちゃったかもしれないね。コレは。
「じゃ、ダミー達を回収して獣人の子達を妹にしにいこっか! 妹狩りだね!」
『うん? うん、うん????』
うーん。ちょっと俺バカだからミーティちゃんが何言ってるか分からないかもしれない。ミーティちゃんは賢いなぁ。
あ、ゾルド君困惑しそうだから俺が話するね。
ダミーたちを回収しつつ地下2階、ゾルド君達の獣人達を隠して押し込めてた部屋にやってきた。ゾルド君もこの部屋に移動済みだ。
「ゾルド君お疲れ様ー」
「! アネット!……いや、おまえ、スライムか」
「あれ、一発でバレた。擬態してたのに」
「喋り方と輪っかでな」
あー、なるほど。そこかぁ。まぁ隠す気なかったけど。
「ところで、こいつら本当に大丈夫なんだよな……?」
「あ。うん。ここのスライム回収が最後だよ。いやー、子供たち泣かせちゃったねぇ。ごめんねぇ」
『精霊様! 妹! 妹作ろう! あたしがお姉ちゃんだよ!』
『うん、それはまぁ置いといて』
しゅぽぽぽん、とダミーの赤スライム達を指を伸ばした触手で拾い上げて回収する。ヨーヨーを投げるようなスナップをきかせると指がうにょーんと勢いよく伸びるのだ。
当たった赤スライムはしゅるんっと吸い込まれて消える。ちょっと楽しい。
「うぉ、ちょっとキモいな……」
「それ本人に聞こえないように言った方が良いよ?」
「あ、すまん。いやその、なんていうか、アネットの姿で指が伸びるの違和感がやばくて」
気持ちは分かる。
『精霊様! あの子妹にしよう! あの子も! あの子も! あ、オスはいいや。妹じゃないもん』
『うん、それはまぁ置いといて』
あとミーティちゃんにはあとで「男の娘」という概念を教えてあげようかな。
「それじゃ、研究所の外出ようか。ずっとここに居るわけにもいかないし、レッツ脱走! 外の事は一切分からないけど当たって砕けようぜ!」
「砕けるのは困るけどな?」
「まぁそこは俺が先陣を務めるよ。ほーら分身の術」
ぷりんっと分裂して2人になる。
「とりあえず、研究所の外に行ってみよう。もし罠があってもこいつで踏み抜けるはずだ」
「お、う。うん。ありがとう。……みんな、生き残るチャンスだ。いけるな?」
というわけで。獣人達を連れて、研究所の外へ脱走した。
研究所内に獣人達以外の生き残りはいないし、床下なども調べ済みで罠が無い事も分かってるし、何の障害もなく外壁の外まで出ることができた。




