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異世界人育成ゲーム ~生贄の少女たち~  作者: 鬼影スパナ


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62/102

とある研究員の活路



 地下二階に戻ってきたところ、スライムが居るのが見えた。

 あいつらは赤いので、ライトでしか照らされていない薄暗い廊下でもよく見える。


「チッ、さっき閉めた扉も破られているみたいだな」

「そうだな……まぁ、ここの探索をする程度には時間が稼げたんだ、このまま突っ切ろう」


 奴隷共に聞こえないよう小声で相談する。

 逆に奴隷共にはこう説明しておく。


「あの赤いスライムは弱い奴だから、ゆっくり横を通り抜ければ大丈夫だ」


 と。

 実際に襲われたら「そんな馬鹿な!」と驚いてみせればいいだろう。

 そして奴隷共は僕らの言葉を信じて、ゆっくりと横を通り抜けていく……あれ、本当に大丈夫そうだな?


「おい。このスライム、始末してくか?」

「いや、D装備の無駄打ちは避けたい。残りも多くないんだ」


 D装備は僕らの命綱だ。残りが少ないのは困る。


「そうだ。なぁ、さっき拾った赤い棒を試してみたらどうだ? スライムの弱点だって言ってたじゃないか」

「そ、それで俺が襲われたらどうするんだ!?」

「……いや、今のうちに試しておくのは賛成だ。ダメでもD装備で援護できる」

「そそ、そ、そうか。そうだな。よし、ちゃんと守れよ……?」


 そう言って同僚が赤い棒を近づけると、スライムはそれを嫌うようにウニョウニョ這って距離を取る。


「おお! みろよ、やっぱりこの棒はこいつらが苦手とする物体なんだ。ハハッ、ほら、ほらっ!」

「おいおい、あまり調子に乗るなよ」


 スライムを棒で突きまわそうとする同僚。逃げ回るスライム。……と、スライムがぷるんと震えて、同僚に向かっていきなり飛び掛かってきた!?


「うわっ!?」

「」


 だが、同僚に飛びつく前にD装備の薬品が放たれスライムに命中。スライムはそのまま吹き飛ばされて壁にブチ当たり、ジュウジュウと煙を上げて溶けていった。


「はぁ、はぁ、びっくりした。死ぬかと思った」

「危なかったな」

「……チッ、もっと早く助けろよな」


 いや十分早かったと思うよ? と流石に僕でも思う。

 だがこれで赤い棒をスライムが苦手としていることは分かった。


「実際にその棒でスライムを触れたらどうなるかも確認したいが……まぁ、奥の手としておこう」

「っていうか、今1匹倒したならあと2匹ってことだよな!?」

「……増えていなければな」

「増えてるかもしれないのかよ……でもこの棒があれば……!?」


 と、地下1階を覗き込むと、そこには衝撃の光景が広がっていた。

 通路のいたるところに、赤いスライムが転がっている。3匹どころじゃない。少なくとも2桁はいる。

 どうしてこんなに、増えて……ハッ!?


「もしかして、いや、間違いない! 地下のゴーレムを、動力の魔石を食ったのか!」


 そういえば地下1階にはコイツの所属している研究室、通称ゴーレム研があったはずだ。

 地下1階に待機していたゴーレムの動力にも当然魔石が使われているが……


「ま、ま、まさか! ゴーレムの主動力のCランク魔石だけじゃなくて……厳重保管のAランクの魔石も……!?」

「はぁ!? Aランクの魔石!? お前、ゴーレム研にはそんなのが置いてあったのかよ!」

「研究用だってウチの博士が持ち込んでたヤツだよ、俺は関係ない!!」


 Aランク魔石といえば、暴走させればこの研究所を吹き飛ばせるレベルのエネルギー結晶。

 スライムがそれを食べて取り込んだとしたら……そりゃ、増える。増えるだろう。


「ぐ、ど、どうするんだ?」

「……お前の赤い棒を振り回しておけば寄ってこないんじゃないか?」

「やだよ! それだと俺が先頭に立つことになるじゃないか!」

「防護服を交換するか?」

「あ、ああ。そうだな。その手があった……よし、誰かうまい事脱がしてくれ、この棒、手から離れないんだ」


 と、処理班の手伝いを受けて防護服を脱ごうとするが……


「あだだっ、ちょ、ちょっと待て! なんか手が離れないんだけど!?」

「おい、棒を握るのをやめてくれ」

「違う! 握ってない! 手が、手が離れないんだよっ!」

「」

「なんだと?……むむ、防護服の手袋に穴が開いている。……癒着しているようだ。これは何か刃物で切り離さないと……」

「待ってくれよ! 俺の手、俺の手はどうなるんだよ!? ちゃんと治せるよな!?」


 騒ぎ立てる同僚。でもその棒を拾ったのお前だし、自業自得だよね。


「落ち着け。幸い皮1枚だ、回復魔法でなんとかなるレベルだろう。教会に行けばなんとでもなる。が、早く切り離さないとどうなるかはわからないぞ」

「うう……いやだ、切りたくない……あれ?」


 と、同僚がキョロキョロとあたりを見回す。


「な、なぁ。なんか人、足りなくないか?」

「え?」


 言われてみて数えてみると、奴隷はなぜか4人しかいない。そして、処理班も班長ともう1人しかいない。


「え、ちょっとまって? なんで?」

「」

「あ!!」


 見た。見えた。今、赤い触手が。すごいスピードで奴隷を捕えて運んでいった。

 捕まった奴隷は言葉を発する隙も無く、連れていかれた。

 な、なんだあれ。なんだあれ!?


「お、おい! チクショウ、盾がもう3匹しか残ってないぞ!?」

「あ、あ、あ……! なぁ! スライムは弱い奴だから大丈夫って言ってたじゃんか!?」

「チッ……うるさい! さっさと逃げるぞ、走れ! 死にたくなければ走れ!!」


 こうなったら、もう肉盾を先導させて突っ切って逃げるしかない。


「ちょ、ちょっとまって!? 俺の手は!?」

「今ちんたら切除してて捕まったらどうせ死ぬ! 安全な場所に避難できるまで置いとけ!!」

「うえぇえ……取ってくれよぉ……!」


 その時また赤い触手が伸びてきた。狙いは防護服を半端に着なおしている同僚。

 しかし。赤い触手が棒に触れた時。


「えっ」

「あっ!」


 ぱちぃん! と触手が爆ぜた。千切れた側の触手が、うぎゃぁ、と悲鳴を上げるかのように痙攣して床に溶けている。


「! や、やっぱりこの、赤い棒がスライムの弱点なんだ! は、はははっ! さぁ逃げるぞ!」


 先ほどまで早く取ってくれ、と懇願していた赤い棒を、同僚は握りなおす。

 処理班2人に挟まれ、先頭に奴隷の肉盾という布陣で進む――


 って、ちょ、ちょっと待てよ!? 僕だけ何の武器も持ってないんだけど!!





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― 新着の感想 ―
全体的に面白いと感じてますが何か?
とあるを付けるにはちっと弱くないかなその活路。 実際、生き残りのカギというか希望ではあるんだろうけど、その生存ルートは良くて苗床ENDな気がするのよな。
普通に面白いけど?
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