第5話
ゲームをログアウトし、睡眠、起床、出勤。
適度に仕事をこなしつつ、同僚と『カイト・ア・ルイセ』について情報交換をしようと思う。
「よう、昨日の初日はどうだった?」
『お! こっち昨日は8時間かけてキャラメイクしたから全然進んでないぉー!』
8時間て。キャラメイクに時間かけるタイプだとは思ってたが……
「キャラメイクに時間制限あっただろうに。うちは3時間制限で1時間かけたけど」
『外見に凝るのがマイスタイルだぉ!! 推しキャラを再現できたからヨシ!!』
どこぞの版権キャラを再現したらしい。あれだけキャラメイクできるならそりゃ好きなキャラを真似たくもなる気持ちも分かるが……気合入ってるなぁ。
『ま、おかげでチュートリアル終わるトコまでしかできてないぉ!』
「……マジか、そっちはチュートリアル終わったのか」
『冒険者ギルドまで行ったぉ。ん? そっちの進捗はどうなんだぉ?』
「スタート地点から通路にも出てない。箱壊して筋トレして亀殴らせたところでオートモード放置してる……」
『まじかぉ!www スタート地点から動いてないのは草生えるぉwww』
チャットなのに、同僚のゲラゲラと笑う声が聞こえてくるかのようだ。
『にしても、やっぱり選んだシナリオで色々違うっぽいぉ? 何選んだんだぉ?』
「大亀の生贄ってシナリオだ。そっちは?」
『盗賊の獲物、だぉ。とりま一番上にあったヤツ!』
あれか。俺も選ぼうとしたけど他の人に選択されましたって出たやつ。
お前だったのか同僚。
「シナリオ、どうにも全部ユニークの可能性があるぞ。それ選択肢に出てきたけど選べなかったんだよ」
『みたいだぉね。出来立ての有志Wiki見たけど、全然情報がまとまってなかったぉ。同じシナリオが出てないということは、AIがGMやってるシステムかもしらんぉ』
なんでも、そのWikiにコメントした人は少なくとも誰一人同じシナリオではないらしい。
選択肢に被りはあるが、他の人が選んだ時点で選べなくなる。流石にその量のストーリー作成は手動でやろうってのは無理無茶無謀だ。
『そうそう、これ見てぉ! 昨日の戦闘シーンのスクショだぉ!』
同僚がチャットツールの画像を送ってきた。そこには、黒いツインテールを振り乱した色白の少女が、俺の腰ほどの高さもある巨大な銃を構えている姿だった。その銃口からは青白い光が迸り、画面の向こう側にいるらしき盗賊たちが一斉に吹き飛ばされている。
「うわすげぇな、ほぼ完全再現なキャラで銃使ってるじゃん……っていうか銃とかあるのかよ」
『そうそう! 満足いく再現だぉ! んで、この銃がまーたヤバいんだぉ!』
同僚が興奮気味に銃の詳細画面の切り抜きを送りつけてくる。
『SP使って手に入れた装備なんだけど、古代遺跡の銃って書いてあるぉ。つまり――遥かに進んだ古代文明があったネタバレを食らってしまったんだぉ!』
「は? 古代遺跡の銃? 剣と魔法の世界じゃなかったのかよ……っていうか自分がネタバレ食らったからって俺に被弾させるなよ!?」
『あっはっは! 死なばモロモロだぉ!』
「それを言うなら死なば諸共だろうが……まぁファンタジーにはたまにある設定だけどもさぁ」
『一応設定的には魔力で動く銃だぉ、発射してるのも弾丸じゃなくて多分ストーンバレット的な魔法だぉ。これ説明文』
追加で送られてきた画面を見ると、確かに銃の説明文に「古代遺跡から発掘された魔力銃。魔力を弾丸として発射するため補給不要」と書かれている。
『で、この銃の威力がヤバいんだぉ。盗賊なんて一発で吹っ飛ぶぉ! 近接で殴り合いとかやってる場合じゃないぉ!』
「おいおい、俺の方は素手で亀の甲羅殴ってるんだぞ……」
『あははは! そっちは格闘系かぉ! まぁでも、武器の種類も豊富みたいだし、SPアイテム次第で全然違うプレイスタイルになるっぽいぉ』
「こっちはそのSP,初期段階で手足生やすのにかなり使ったんだが?」
『手足? どして?』
「なんか岩で潰されてたんだよ」
俺はこちらのプレイ開始状況を説明した。亀の生贄にされる設定だった話だ。
『そりゃ御愁傷様だぉ。ウチのは五体満足だっただけマシかぉ。ま、こっちは銃でほとんどのSP使い切っちゃったんだけど』
「何? こっちはまだ半分くらい残してるぞ。何かあった時のために」
『どうせすぐ手に入るぉ、それなら先に使っちゃった方が良いぉ?』
言われてみれば確かに、である。
『スタートダッシュは大事だぉ! Wikiがまだ全然なんだから悩む前に突っ込むんだぉ! ウチらがパイオニアだぉ!!』
「それで致命的なクソビルドしちゃったらどうするんだよ。SPが予想以上に手に入らなかったりさ」
『それはそれで検証が捗るぉー? 様子見してたら名を残す機会を逃がすぉ! 考える前に動けッ!……それに、もしダメでもリセットしてやりなおせばいいぉ? まだスタート初期。再インストールでやりなおしてもリカバリは効くぉ』
「お前のいう事は一々納得せざるを得ないなぁ同僚」
『含蓄あるぉ? 無駄に歳とってねーぉ』
チャット越しに胸を張る同僚を幻視した。まぁ一度も生身では顔を合わせたことすらないヤツだけど。何歳かも知らん。
『まぁ操作感は悪くねーし、格闘は格闘で極めたら凄くなりそうだぉ。それに、手足はSPで用意したんだぉ?』
「ん? そうだな。SPで生やした手足だけども」
『なら、ウチの銃と条件は同じかもしれんぉ! 驚異の性能が隠されている可能性もワンチャンあるかも……ないかも?』
「どっちだよ」
『それを検証するのはキミ自身だ! ということだぉ! ってかウチは銃ビルドの検証で忙しいから聞かれても知らんぉ』
それもそうだ。まだまだゲームは2日目、しかも序盤。なにもかも分からないことだらけなのだ。
『これこそサービス開始ゲームを初日からプレイする醍醐味だぉー。苦難を楽しめ!』
「……おにぎり5個分は楽しまないとなー」
『www その意気だぉー』
その後、情報交換をした。
『基本動作の繰り返しでパラメータが上がる……そりゃ気付かなかったぉ!? こっちも腕立て伏せとかさせてみるかぉ』
「上がらなかったら教えてくれ。チュートリアルの序盤だけの特典かもしれないし」
『あるいは、手足SP製だからという可能性もあるぉ。上がらなくてもそれはそれで教えるぉー』
「というか、腕立て伏せとかどうやるんだ?」
『オートモードの時の自由指定だぉ。アレかなり自由に命令できるから使いこなすと凄そうだぉ。『まず服を脱ぎます』って言ったら脱いだし』
「まじか。あれ、ゲームのレーティングなんだっけ? 18禁?」
『カメラ動かせなくなって謎の光で隠れてたからR15くらいじゃね? まぁ装備外すメリットもねーからすぐ着せたけどぉ』
雑談は盛り上がったので、まぁおにぎり5個分の元はとれているんじゃないかと思う。
今日こそチュートリアル終了まで進められるといいなぁ。




