第38話
システムメニューから『2人目』を確認する。
より正確に言うなら『新規キャラ追加』と書いてあって、コレ3人目以降もあるだろと察することができた。
「ちなみにSPは全キャラ共有できるっす。正確には余ったギンちゃんのSPをペンちゃんに委譲、って感じで」
「へぇ。なら2人目はSPを節約して1人目につぎ込む、っていうことができるわけか」
「だぉね。あるいは逆に、1人目で稼いでいたSPを2人目のスタートダッシュに使うとか」
なんにせよ使えるSPが増えるわけだ。
SPのホームはどっちのキャラで取っても使いまわせそうだし、2人目はやはりホーム持ちの生産職……
……でもペンペンが居るからウチで取らなくても十分な気もしている。
ただしこれはペンペンに依存した形になるので、ペンペンが引退、しなくてもロストしたらアウトだ。
「アルトはどんな2人目にする?」
「とりあえずストーリー見てから決めるぉ。……うわぁ」
「何、どしたの」
「やっぱストーリーえっぐいぉ。ってか1人目より過酷な状況のが増えてるぉ?」
「トリアちゃん生贄でだいぶ過酷だったよ?」
それよりも過酷なのかね。怖っ。
「人外キャラも増えてるっぽいぉ。獣人や吸血鬼、お、これはモンスター娘かぉ?」
「どれどれ、俺も見てみるか……ほぅ」
ぽぽん、と表示された2人目のストーリー選択画面。
『狂乱の獣』『壊された駿馬』『穢れの巫女』『正しく犯罪者』『極限の信仰』……とりあえず一番上のストーリーでも見てみるか。
―――
『狂乱の獣』
身寄りもなく、幼い頃から一緒だったテイムモンスターのホワイトウルフ。
家族同然のその子を貸せと言われて、断るも、断り切れず貸し出すことに。
三日間だけ、三日間だけと耐えた。
しかし三日後。帰ってきたのは骨だけだった。『毛皮と肉はそれなりに高く売れた』と。
……『分け前だ』といって銀貨1枚が投げ渡された。
復讐してやる、どんな手を使ってでも――
―――
「うっわ。テイマーちゃん可哀そう……」
「ぉっぉっ、ボクはこっちの『穢れの巫女』にするぉ。んじゃお先ー」
そう言って、アルトはメニューをぽちっと押して止まった。……あ。オートモードのアルトちゃんに切り替わったっぽいね。表情スンッってなるから分かりやすい。
そしてこちらのメニューからは『穢れの巫女』が『他の方に選択されました』と消えた。
あ、『狂乱の獣』もだ。どうやら俺達以外の2人目選択者がいるのだろう。テイマーは気になってたんだけど。
あとでWikiもどうなってるか見とくかなぁ。
追加で表示された2件は『実験動物』『日光の下で』……うーん、ストーリーからある程度キャラの性能が推測できるけど、ホント悩むわ。
「ペンペンはギンちゃん選んだ決め手とかあったの?」
「クソ男に天誅食らわしたかったからっすね。あとペンちゃんが生産系なんで、私も戦闘系欲しかったっす!」
なるほどなぁ。となると、やっぱり俺も生産系を取ってみたい。
えーっと、この『壊された駿馬』はなんかレースっぽいな、馬獣人の競走馬だ。
『正しく犯罪者』は……うん、こっちが犯罪者パターンのキャラだ。自分は悪くないよね、って言っちゃうやつ。
この『極限の信仰』は、イカれた宗教の信者っぽいなぁ。
よし、『実験動物』にしてみるかな。スライムっぽいし。なんか錬金術とかできるかもしれん。
「決めた。そんじゃ、俺も2人目いってくるわ」
「お気をつけてー。あ、ちな2人目はVRモードで固定っすよ多分」
「ん? ちょっとまってスライムのVRってどうなるん――」
『2人目の元へ転送します』
はい、というわけでキャラメイク画面になったんだが。
あー、とりあえずは光輪状態で操作ね。うんうん。で、2人目だけども。ストーリーはこちら。
―――
『実験動物』
違法な実験。魔物の融合。スライムがフラスコの中で漂っている。
かつての姿や記憶はもはや失われ、巨大なフラスコに漂う実験動物でしかなかった。
研究者の思いつきであらゆる薬を投与され、あらゆる毒薬を投与され。
そして苦しみの果て、ようやく用済みとなった。
廃棄処分となることが決定し、崩壊因子が投与される。
薄れた自我で、スライムは思う。自分は何だったのかと。せめて、それが知りたかった。
―――
というわけで、スライムちゃんなわけだが。
これ元、人じゃね? いや、あるいは人が入ってるというか。
手足や頭の項目があるんだよ、ぷるんとした丸い身体なのに。キャラクリに。多分赤く丸いボールのようなコアが脳みそ。
……うーん。でもなぁ。スライムなわけだし? それを生かした構成にしたいよね。
というわけで、SPのスキルでまず『分裂』……こいつで崩壊部分を隔離して無効化するとしよう。
あと『捕食』がやたら安く取得できるっぽいのでとっておく。多分元々目覚めかけの素質とかだと安いんじゃなかろうか。
『毒吸収』はつけておかないと即死しそうなのでこれも取っておく。ストーリーで毒を注入されたりもしてるって書いてあったからね。そこは大事だろ。
で、あとはホーム欲しいんだが……ちょっと足りない。
一旦スキルはこれだけにしておいて、レベル上げてホームとるか。錬金術とかも欲しいけどそれはSP使わず習得する方法を探してもいいな。
さーて、スライムちゃんの色を設定していこうかねー。
ぷるんとした水ようかんみたいな丸い身体。コアは赤色。ここは変えられない。さて、ボディカラーはっと。
定番の青。うーん、ピンクもいいなー。緑は毒っぽさあるねぇ。黄色はなんか心なしか強そう。肌色……だと、なんか冒涜的な肉塊っぽい。
お、メタルなんてのもいけんのか。ゲーミングカラー……は、操作中ずっとチカチカしてたら見てて目が痛そうだからやめとくか。
と、色々試してみたけど、結局身体は透明にした。蒸留水のような透明度だ。
下手に色が付いているより使い勝手が良さそうだからね。透明。弱点は丸見えだけども。
ん? 動作確認モード? なにそれ、こんなのあるのか。
トリアちゃんの時は無かったと思ったけど……さては、いきなり足が無くて動けなかった、みたいな要望が多かったんだろうな。
でも助かる。実際、VRでスライムを動かすってどうなるのか分からんし、試しておこう。下手すれば動けず死ぬしかない。
と、VRモードでスライムになった感覚。あー、なんか身体ピリピリしてる。けど悪い感じではない。低周波マッサージみたいな? 弱い電気でピクピクする感覚。
もしかして毒と毒吸収の効果だろうか。いいね、取得しておいて正解だった。こういうの分かるのは比較的親切だな。
さてさて……と、口が無いから喋れないが、呼吸は特に不要っぽい。スライムだから。
そして触手っぽく手を伸ばせる模様。うーん、手と同じ感覚で伸ばせるな。しかもうにょんとかなり伸びる。ちょっと楽しいぞこれ。なんかこう、伸びをするとその分伸びて、壁まで手が届くような不思議な感覚。
腕を伸ばし、その先っちょを手指の如く5本にばらけさせ、指のように動かす。
できる。できるぞ! ジャンケンもできる!
これはなんかこう、リアルで欲しい腕かもしれんな。便利ではある。見た目が完全にスライムという事を除けば。
透明だから距離感を掴むのに苦労しそうだけど……まぁ慣れれば大丈夫だろう。
それじゃあこれでスタートだ! いくぞー!




