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異世界人育成ゲーム ~生贄の少女たち~  作者: 鬼影スパナ


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第37話



 その少女は、土に埋もれていた。

 銀狐の獣人で、貴族の屋敷の使用人だった。いわゆるメイドで、洗濯(ランドリー)が仕事だった。

 だからだろうか。良い匂いがするな、と、旦那様に好かれた。好かれてしまったのだった。


 当然のように手を付けられた。家族の事を出されては、断れなかった。

 よくある話。


 そして尊厳を弄ばれ、飽きたのか殺された。

 よくある話。そう、よくある話だ。


 ……いや、まだ辛うじて息があった。

 腹は抉られ、汚らしい女だと、口には下腹部にあった内臓をねじ込まれている。

 当然止血などされていない、すぐに死ぬ。洗濯(ランドリー)メイドとして培った体力をもってしてもあと数分の命だ。幸い、痛みはもう感じていなかった。ただ寒かった。


 死にたくなんてなかった。

 心残りがたくさんあった。

 幸せな恋もしてみたかった。


 すべて踏みにじられた。


 そして。


『精霊に全てを捧げますか?』


 その声が聞こえた。

 少女は声を出せない。頷くこともできない。だが、心の中で「はい」と答えた。



  * * *



「というわけで2人目っすー!」


 ペンペンのホームにて、紹介したい()がいると出てきた獣人メイドちゃん。

 短い銀髪で可愛らしい少女だ。そして狐耳とふさふさ尻尾も生えている。

 そして、その頭の上には黄色い光輪(ハイロゥ)が浮かんでいた。


「えぇ……ちょっとまって? なんでペンペンのが俺達より先に2人目確保してんの?」

「かわいいメイドさんだぉー!」

「いやー、実は借金返済した時点で2人目解放されてたんすよー。にししっ」


 イタズラ成功、と言わんばかりに笑うペンペン、いや、ペンペンちゃんが隣にいるので、何と言ったらいいんだろうか。……メイドちゃん?

 光輪(ハイロゥ)については、ペンペンちゃんのが若干暗くて現在メイドちゃんのほうが明るくなっている。


「戦うメイドさんが欲しかったんっすよ!! 名前は銀子(ぎんこ)っす。ギンちゃんって呼んでね!」

「ぉっぉ! ペンちゃんとギンちゃんでペンギンってことだぉね」

「っすよー。あ、ちなみにそのクソ貴族は種もぎして逆に埋め返しといたっす。誰にも見られないようにコッソリ、スニーキング大成功したんでただの失踪扱いっす。ここだけの話でナイショっすよ?」


 尚、ギンちゃんの内臓はSPでスッキリ新品にしてあるとのこと。

 俺からキャラクリでの欠損等がそのまま維持されると聞いて、ちゃんとしといたらしい。


「というわけで私の2人目はVRスニーキングアクションだったっす! いやー、三日ぶりご勘弁! てかこの三日間、お二人と全然連絡付かなかったんでちょっと心細かったっすよぉ」

「……おう、昨日ぶりー」

「だぉね。昨日ぶりだぉー」

「だはー! 薄々そうじゃないかと思ってたんすけど、時空の乱れっすねぇ! ホントどうなってんすかそこー!」


 ぺちーん! とおでこを叩きつつ天を仰ぐギンちゃん。見た目は変わったが中身は間違いなくペンペンだ。

 え? てか普通に仕事しつつなのでペンペン側だとガチリアルで三日ぶりなん? どゆこと……

 もう色々と不可思議すぎてどうしようもない事だけは分かった。ホント謎過ぎるぞこのゲーム。


「アルトさんや。なんか、ペンペンが俺らと違う時代に生きてる可能性まで出てきてない?」

「可能性は無限だぉね。でもそれより重要なことがあるぉ」

「ん? なんっすか?」

「2人目を解禁したことにより、精霊であるボクらをなんと呼べばいいか問題が出てきたぉ!!」


 ハッ、と目を見開く俺とペンペン、もといギンちゃん。


「確かに……今まではトリア氏、アルト氏って呼んでたけど、2人目が出来たらどう呼べばいいんっすか!?」

「ペンペン氏、ギンちゃん氏……うむむ。HNで呼ぶべきかぉ?」

「今普通にペンペンって呼んじゃったけどギンちゃんだしなぁ……というか本来はプレイヤーネームで呼ぶべきなんじゃないか? そういうの特に入力なかったけど」


 そう。そういやなかったのだ。プレイヤーネーム入力が。キャラネーム入力はあったけど。


「……一人目の子の名前を引き継ぐ形でよくないかぉ? 今更ギンちゃん氏って言い換えるのはめどいぉ」

「どっかのアイドルゲームのプレイヤーみたく(ピー)みたいなのつけると良いんじゃないっすかね」

「ペンペン(ピー)……アルト(ピー)ちょっと語呂いいけども」

「精霊だからSかぉ? スピリットのSだぉ」

「ローマ字かと思ったら違った。でも呼びにくさはある。後ろ伸ばし棒になってる1文字がよさげ?」


 うーん、と悩ましく会議する。

 意見を出し、却下、だったら、いやGは黒いアレっぽいからナシ、Uは? うーん。となんやかんや話をし、結局『基本は今までの呼び名である一人目の名前で呼ぶ』と落ち着いた。


「というわけでペンペン氏はギンちゃんに憑いててもペンペン氏だぉ!」

「やっぱ今まで通りが一番ってハッキリわかるんすよね」

「だなー。はっはっは」


 会議はまったくもって意味は無かったが、そういうことになった。

 ……あれ? ペンペンちゃんとギンちゃん(中身ペンペン)が並ぶと呼び方がややこしい点が解決してねぇなコレ。

 誰かがWikiで解決しといてくれることを祈ろう。



 尚。


「ところでペンペン。ギンちゃんの尻尾や耳をモフらせてもらうことはできるか?」

「少しだけならいいっすよ」


 と、触ろうとしたところ、倫理フィルターが発動。残念ながらモフれなかった。

 目の前で銀色のやわらかな毛が揺れる。生殺しか?


「ば、馬鹿な。モフモフはエロくないじゃん! ちがうじゃんそういうのは!」

「あれれ? おかしいっすね。ペンちゃん、ちょっと私モフってみるっすよ!」

「ひゃ、ひゃい! ありがとうございます! 失礼します!」


 ペンペンちゃんはすんなりとギン(ペンペン)の尻尾に触ることができていた。

 同プレイヤーのキャラ同士だからか? むむむ。羨ましいぞ……!


「俺も2人目は獣人のモフモフ系にしちゃおうかなぁ……あー、でもホームも欲しい。獣人で生産職……条件が厳しいか……? やっぱ別の……」

「フフフ、早く昇ってくるがいいっすよ、このステージに……!」

「マジで2ndステージなんだぉなぁ……んじゃ、ボクらも今日から2人目育成開始とするかぉー」

「だな」


 それじゃあ始めようか。2人目を!



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― 新着の感想 ―
モフモフはエロいのか・・・
……コレ、対外的にはお手付きメイドと主人が同時に失踪したことに?
生贄の少女たち とか言うめちゃくちゃ重い文言を笑い話に出来てるの本当に凄い。 救われる話はほっこりして良いね!
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