第33話
両眼を潰し、第二形態で赤く黒くなった大亀。
……もしかして最初の目ぇ赤くしてたのも充血してたんじゃなくて第二形態チラ見せだったんかね? それよりも、甲羅が赤く変色するとは……通常の生物であれば有り得ない。
「ぉっぉっぉ! 顔は黒くて甲羅が真っ赤だぉー!」
『やっぱこういうとこはゲームっぽいな! 目ぇ残ってたら赤かったんかな』
顔真っ赤とかになるのは柔らかな肌の下の血流が増えて血管が膨張し、赤色が増えるから。胴体が黒くなったのはタコの擬態のような変色としても、亀の硬い甲羅は盾や鎧でありそういう余計な機能があるはずないのだ。
雨がべっとりへばりついたわけでも、甲羅に血を塗りたくったわけでもない。赤くなるのは、あくまでそういうエフェクトなのだ。しかも甲羅の溝が蛍光色で発光しだした。
「グモォオオオオオオオオオオ!!!!!!」
『やぁカッコいいねぇ君! 殺る気満々だな、お互いにッ!』
「来るぉ!!」
咆哮。アルトは耳を押さえつつ銃撃するが、ダメージが0と1しか出ない。
豪雨の中で狙いつけるのも難しいだろうに、それでも当ててくるあたり流石だ。
「げぇ、防御力上がり過ぎだぉ!? コイツでダメージ通らないとボクはほぼ無力だぉ!?」
『!! 違う、これ雨だ、デバフかかってる!……ローリング!』
「うん!」
ゴロン、ばしゃんとぬかるみ始めた地面に転がると、さっきまでいた場所にブレス、いや、レーザーが放たれていた。一瞬後にズドドドっと爆発が上がる。トリアちゃんの身体が爆風で少しふわっと浮いた。
「ぉぉぉ! 時間差で爆発するアレだぉ! どういう原理かぉ!?」
『最初のレーザーで実は爆弾でも埋め込んでるんじゃないか?』
「リアルで再現してみてーぉ!」
ペンペン謹製デバフ回復の異常状態回復ポーションをかける。パラメータのステータス低下が解除されたが、この雨ではまたデバフにかかるのも時間の問題だろう。アルトの方も同様にポーションを被っていた。
『こりゃさっさと倒せってこったな、ポーションにも限りがあるし』
「ぉっぉっぉ! 回復したけどダメージはさっきまでの半分だぉ、近接も気を付けろぉ! 一撃死ありうるぉ!」
『おっと、子亀もいるぞ気を付けろよ二人とも!』
「! むしろ、これ、です精霊様!」
と、トリアちゃんが子亀を一匹、流れるように仕留める。そして、その小型自動車みたいな死骸を持ち上げて――さすがLv30、力強くなったなぁ――投げた! ごぃん!! と鈍い音がして120ダメージ!
「ぉっぉっぉ! なーるほど、ピンボールだぉね!」
アルトもその死骸を撃ち飛ばす。ばぃんと跳ね飛び、ごぉん! と大亀にぶつかる、83ダメージ!
「ブァアアアアアアッ!!!!」
大亀は首を引っ込め、ぐるんと回転し始めた。
「またかぉ! ワンパターンだぉね……いやレーザー注意!! 子亀を盾にするぉ!」
『うっわやべ! 回転しながらレーザーとかマジかよ! トリアちゃん!』
「はいっ!」
子亀の陰に隠れ、レーザーをやり過ごす。どどど、どどどどど、どどどどどど! と爆発が乱発。子亀の壁がなければ一発で爆死させられるような威力だ。というか、子亀も爆破されて倒れた。この形態だと子亀が居てもお構いなしか!?
巻き込まれて転がりつつ、無事な子亀の陰に隠れた。
「ぐぼぉっ! ば、爆風掠ったぉ……って、おいおいもうデバフ復活してるぉ、薬、薬っ!」
『こっちもだ。ったく、亀のくせにせっかちなヤツめ……』
「ぅ、ありがとうございます、精霊様」
ライトヒールを使いつつ、再びポーションを空ける。HPより状態異常解除のをもっと作ってもらえばよかったか。
しかしこの状況、フレンドチャットがなかったら爆発音と豪雨の雨音で連絡もままならないぞ。そのままNPCが兵隊集めて挑んでたとしてもまとめて蹴散らされる殲滅力だ。
『壁の子亀もいつまで無事か分からん、一旦退くか?』
「いや、待つぉ。あと少しで倒せそうだぉ」
アルトが子亀の背から岩を撃ち、別の子亀の死骸を弾き飛ばしてぶつける。回転中の大亀にガリっとぶつかり、30ダメージ。子亀の方は弾き飛ばされ吹き飛んだ。
「チッ、回転中は硬いかぉ」
『あと少しで倒せる根拠はあるのか?』
「動きが鈍ってきてる。エネルギー切れ間近じゃないかぉ?」
言われてみれば、爆発音が途切れ途切れだし、雨も弱まってきている気がする。
……雨をどうにかしない事には、耐久できないけど。傘でも買っておけばよかったかもな。
「止まったぉ、攻撃チャンス! 短期決戦、1ターンで決めてやるぉ!!」
『Goトリアちゃん!』
「はいっ!」
ダッシュで距離を詰め、止まった大亀の頭の穴にペンペンの爆弾を直接投下。ドカン! 70ダメージ!
と、頭を出してきた。キック! エンチャントサンダー込みでダメージ124!
『ハハッ、ダメージ表記出るのは便利だなぁ、有効な攻撃かどうかすぐ分かる!』
「噛みつき注意だぉ!」
『噛むならこいつを噛んでもらおうかね! そぉれ追加の爆弾だッ、思いっきり投げてやれ!』
「うん!! ていやっ」
トリアちゃんの手に爆弾を出し、口に向かって投げてもらう。外しようのない距離、爆弾は喉の奥にてドゴンと爆発した。おお、100ダメ出たぞ。タイミングよくさらに連投、102、110、105!!
「ぐるぐる、ぐるぐる……!!!」
ついでにその動きは円の動き。つまり、そのまま溜めモーションに繋がる!
「援護射撃だぉー!」
ドガン、ドガン! と青白い炎を纏った岩が、大亀の手足を牽制する。それぞれ40ダメージ出ている。……その隙に、チャージ完了! 狙うは、左目のあった場所、刺さったままのナイフ!
『いけ、トリア!!』
「はい――キック!!!」
「ギュァアアアアアアアア!!!」
って蹴り!? 溜めたのってそっちでも有効なの!? って3000ダメージ出た!? 目玉に刺さってたナイフをさらに押し込んだか!! これは、致命傷だろ!!
「勝ったな」
『おい! フラグになりそうなこと言うなよ!』
「……だから、倒れてから言ったぉ?」
「む?」
見ると、大亀の甲羅の光が消えて行った。雨も上がり、日が差す。追加で蹴ってもダメージ表示も出ない。……勝った? って、おお、Lvが一気に36まで上がったぞ!?
「はぁ、ぁぁぁ……」
「うひょー、やったぉ! ボス討伐だぉー!!」
『トリアちゃんお疲れー。ライトヒール』
「ふぁ……ありがとうございます……」
ぱちゃん、とぬかるんだ地面にへたり込むトリアちゃん。
大亀の素材回収もあるけど、一旦休むかぁ……と見ていると、なんか大亀の身体からほわほわとした白い光が上がり始めて――ふわっと消えた。
「せ、精霊様!! 大亀が……!?」
『あー。ボスは倒すと消えちゃうタイプかぁ』
「ドロップ品残ってないかぉ? ぉ、あったあった」
「お、落ち着いてますね……トリアはとてもびっくりしました」
大亀が消えた跡に落ちていたのは、濃い青色の大きなクリスタルだった。あんなに赤くなってたのにな。
これが大亀のドロップ品? うーん、いかにも何かのキーアイテムっぽいヤツだ。素材の方が嬉しかったまであるかもしれないが、キーアイテムなら仕方ないとも言える……うん、素材は残った子亀で満足するしかねぇな……
クリスタルを抱えるように持ち上げる。
そのとき、どこからか、多分天から声が聞こえてきた。
【ボス討伐おめでとうございます。『2人目』が解禁されました。システムメニューから追加キャラを選択できます】
どうやら、新たなシステムが解禁されたようだった。




