第31話
ペンペンが爆弾と各種ポーションを作れたので、いざエレメンタリオン……大亀に挑んでみたいと思う。
まぁ挑むと言っても倒す気満々だし、負ける気も一切ない。いざとなればまたすたこらさっさと逃げるだけだ。前に逃げ切れた実績もある上に、そこからLvもアップしている。
トリアちゃんだけなら逃げられないということは無いだろう。
「でも、私だけ留守番ってのは置いてけぼり感あって辛いっす……」
「逃げ足がないから仕方ないんだ、ペンペン……」
「逃げ足かぁ。逃走アイテム作れないか錬金術を深堀りしないとっすねぇ」
「でもボスモンスターからは逃げられなかったりしない?」
「するっすよねぇ。逃走禁止バトルあるあるっす」
まぁ大亀からは逃げられた実績あるわけだけど。
というわけで、爆弾と各種ポーションだけ預かって岩山へと向かった。グレートボアの居た場所とは正反対の方向に、半日走る必要があるようだが……ま、そこはファストトラベルでカットしよう。
「よーし、行くぞアルト!」
「おうだぉ!」
そしてゲーム内で半日、リアルでは5秒かけて、トリアちゃんのスタート地点へとやってきた。夜中出発したので着いたのは昼間だ。
……大亀、居るかな? 居るよな。ドキドキしてきたよ……
「なーに、ボクが普段相手してるクレーマー共に比べたらなんてことねーぉ」
「リアルとゲームを比べられてもなぁ。とりあえず亀を見つけた崖上に行ってみるか」
あの位置が亀の巣で、亀がのんびりしてるなら先制攻撃がやりやすい。
なんなら上から一方的にアルトの銃でいける。
アルトを案内し、崖に向かう……うん。いないね。どこに行ったんだ? 子亀はちらほら居るが……ん、影?
「……! 上だぉ!?」
「何!? ローリング回避ぃ!」
俺とアルトがごろんと前転すると、今立っていた場所に大亀が降ってきた。
ずしぃいいいん!!! と、盛大に土煙と地響き。そして、崖が崩れ始める。
まさかこの亀、飛べるのか!?
「グブモァアアアアアアアア!!!!」
「おいおいおい足場崩してきやがったぉ! トリア、どうするぉ!?」
「アルトは遊撃で援護射撃! 俺はトリアちゃんに交代して引き付ける!」
奇襲する直前まで声を出さないとか、基本抑えてるじゃねぇかよ親亀ぇ!!
俺とアルトは崩れる足場を滑りながら下りつつ、一緒に滑り落ちる親亀を睨む。見れば、その右目はまだ充血していた。
「……今度こそ、精霊様にその目玉差し出させてやる……!」
『トリアちゃんの格闘センスに賭けるぞ!』
「ペンペン連れて来なくて正解だったぉね! オラァ!!」
情けないが、俺が身体を動かすよりトリアちゃんに任せる方が強いからな。
アルトの銃撃、ほとんど投石器の岩のようなそれは的確に大亀の頭に当たっていた。……が、頭を軽く揺らすだけであまりダメージが無い。5とか8とか、一桁だ。全体のHPいくつか知らないけど。
「チッ、あんまダメージ入ってねーぉ!」
『エンチャントサンダー! よし、行くぞオラァアア!!!』
「うん。やります」
ざざざざ、と崖下の浅い池のある広場に無事着地。トリアちゃんがエンチャントをかけたパンチで通りすがりの子亀を一匹仕留め……結構固い! キックも追加して一匹仕留めた。表示ダメージ数値から考えて子亀のHPは50以上150以下といったところか。
……大亀、この何倍だろうな。10か、100か?
「お、こいつらは殺れるぉ! 殻に籠ってんじゃねぇぉ、カタツムリかぉこの野郎ぉー!!」
アルトも頭を引っ込めた甲羅に追いかけて銃を突っ込み連射、撃ち殺している。取り巻きは片付けておくに限る。
「ブルォォオオオオオオアアアアア!!!!」
「ぉっぉっぉ! 子供を殺られて怒り心頭かぉ? ゴラァ!!」
大亀に向かってガォンガォンと銃を撃つアルト。撃った分だけ間違いなく頭に当たっているが、大亀にとってはあまりダメージになっていなさそうだ。
というかどう聞いてもこっちが悪者なセリフなんだが。
「くっそ硬ぇぉ!! 圧縮して貫通力上げるとかできねぇのかぉ!?」
『カートリッジってやつが必要なんだろうよ、そういうのは』
「それは古代遺跡探すしかねぇぉ! 情報が足りないぉッ!」
大亀が頭を引っ込めて、グルンと回転し始めた。
『げ、渦巻きに面制圧してくるヤツか!?』
「いーや、これはこのまま突っ込んでくるやつだぉね! 横に跳べぉ!」
『おうよローリングだトリアちゃん!』
アルトの読み通り、大亀は回転したまま水を噴き出し直進という体当たりをかましてきた、暴走トラックかよお前はぁ!
「っ、ハッ!」
「ぉっぉっぉ、やるぉねぇこの亀公がぁ! 最初の奇襲はそれで空も飛んでたんかぉ!?」
左右、大亀を挟めるように分かれて避けるトリアちゃんとアルト。アルトは避けながらもガォンガォンと銃撃を続けている。弾数無限の古代銃でなかったらここまではしないだろうが……ってか、全弾命中してるんだが。たぶん、大亀の首ひっこめた穴に。エイム力どうなってんだ。これが営業の力か。
『ヘイト稼ぎすぎじゃないか?』
「いや、どうにもソッチずっと見てるぉ? 逆に全然こっちに気を引けねぇぉ」
『……なんだと?』
崩落した崖を滑り降りてきた大亀が、首を少し出してこちらを睨んでくる。後頭部にゴンゴン当たっている岩もお構いなしに。
『目ぇやったの怒ってるってか?』
「そういえば、この装備……亀のですよね、精霊様?」
『あっ、それかぁ』
大亀からしたら、子供の皮を剥いで縫い合わせたような装備をしてるわけだ、俺。ような、っていうかまさにそうか。そりゃこっち睨まれるわ。
「……亀。お前も仲良く装備にしてやる、かかってこい」
これやっぱこっちが悪だよなぁ??




