第30話
「つーわけで、あの亀、エレメンタリオンとかいう奴らしい」
「ほほぉ。そうなのかぉ。特殊エネミーだったぉね」
「レア素材だったってわけっすね。ホーム付属の加工道具がなかったら加工できてなかったかもしれなかったってことっすか」
俺は亀について分かったことを二人に共有した。
ちなみにエルフさんはフリーズして帰ってこなかったので放置している。多分なんかのバグだ。触れない方が良いだろう。
「でもエレメンタリオンには通常武器が効かないって、どうなってんすか?」
「いやそれは多分アレだぉ、プレイヤーしか討伐できないって感じの理由付けだぉ。じゃなかったらなんで現地人が部隊組んで討伐しないんだって話になるぉ?」
「そっか。プレイヤーの関係ないトコでボスが討伐されちゃったら興醒めっすもんねー」
なるほどなー。アルトのいう事は一々納得が深い。
「詳しい設定はきっとアレだぉ、精霊憑きによるフィールド中和でダメージが通るようになるとかだぉ! 知らんけど」
「それなら私も討伐に参加したら戦力になるんすかね? 爆弾とか作るっすか?」
「まてまて。ペンペンは留守番だぞ? でも爆弾は作れるなら作って欲しいが」
「留守番っすかー。じゃ、森でうに拾ってこないとっすねー」
……森でウニって何? アレ海の生物じゃないの? ウニが爆発するのは分かるけど。
「準備が出来たら討伐にいこう。ペンペンは祝勝会の準備でもしといてくれ。……できればアルトの遠距離銃撃だけで倒せるならそれに越したことはないと思ってる」
「ぉっぉっぉ! まかせるぉ! ボクのエイム力をみせてやんよ!」
「でもあの大亀のことだ。それだけで倒せる程安い相手じゃないと思う」
「まー、トリアが近接するまでにできるだけ削るお仕事かぉ。……でも、仕留めてしまっても構わんのだぉ?」
「そうだな、できるもんならな」
今日のところは、ペンペンの準備を手伝うことにした。
店で買える素材は店で買うことで時短しよう。金は経費ってことで俺が出す!
あ、店売りの魔法も買っときたいな。回復魔法を覚えられるなら覚えておきたいぞ。前線における衛生兵、回復の有無は生存率に直結するからな。
「……俺は、ライトヒールを習得した!」
「応急手当レベルだけど無いよりはマシだぉね。万一のときは物陰に隠れて回復だぉ」
トリアちゃん、ヒールは覚えられなかった。ぐぬぬ。ペンペンに横流しよう。
「むしろなんでアルトはヒールを覚えられたんだ?」
「アルトちゃん賢いからぉ! ほら、元が商人の娘だし」
「素のパラメータかぁ。つーか解体とかもペンペンに任せてるからそっち方面ガチで上がってないな……ちょっとは解体もすべきか」
「別に気にしなければいいぉ。特化型のが強いのがゲームだぉ」
「それはそう」
もし魔法を覚えることにお金以外のデメリットがあるなら魔法も覚えない方が良いくらいだ。が、このゲームでは普通の魔法は新しい技術を覚えるようなもの。SPのような不可逆なポイントを消費するようなものではない。
覚え得要素だ。
「というか、VRモードで使う魔法地味に楽しいな。ホントに魔法使えてて」
「だぉねー。でも今は温存しとくぉ。というか、戦闘はオートモードに任すぉ?」
「うーん、そう、そこなんだよな。地味に戦闘センスがいいんだよね、トリアちゃん。でもそうすると俺が暇」
「そういやまだトリアちゃんとも話してなかったぉねー。折角だから話させるぉ」
「VRでオートモードするとどうなるかも試してなかったな」
「ぉ? ならこっちもアルトちゃん出すぉ! お見合いだぉ!」
「言い方ぁ! まぁいいや、オートモード切り替えて……っとぉ?」
ぐぉん、と浮遊感、からの身体が裏返るかのような感覚と共に、俺はトリアちゃんの後頭部に浮かんでいた。
『なにこれ、TPS視点じゃん。……あ、アルト、聞こえるー?』
「……えっと、その、精霊様が聞こえるかと聞いて、ます」
「うん。こちらも聞こえるか、とのことよ」
と、トリアちゃんとアルトちゃんが俺達の伝言を伝えあっている。
あ、これプレイヤー同士の声は聞こえてないな。そうか。……と思っていたのだが、同僚口調の『だぉー!』というアルトちゃんの声が聞こえてきた。
『何!? 何かしたのかアルト!』
「な、なにをしたのかと聞いています」
『フレチャをオンにするぉ!』
「ふれちゃをおんにしろ? と言ってるわ」
『フレチャ……これか! おーい』
『おおー、聞こえるぉー』
「あ。どうやら精霊様同士で会話できるようになったみたい?」
「そうね」
頭の中に直接……! という感じの会話だ。いや俺達は今光輪になってるのか。頭の外だったな。
『視界が自在で楽しいぉー。……これ、このまま魔法撃てるのかぉ?』
『それはちょっと試してみたいなー。無理じゃね? とは思うけど』
『よーし、魔法屋の試射場いくぉー!』
『いえーい!』
「……あ、うん。はい。移動します」
「ええ、わかった」
おぅ、地味にちょっとひと手間あるな。自分で歩かない分は少し楽だけど。
というわけで、試射場へとやってきた。的があったりするが、あまり大きい魔法は撃たないで欲しいらしい。
とりあえず構えておいてもらう。俺達が光輪から魔法を撃てるなら、光輪から飛ぶはずだが。
『そーれ、サンダー!』
『アイスボルトだぉー!』
ばちぃ!! トリアちゃんの手から1mくらい雷が走った。
一方でアルトのアイスボルトはビューンと的まで飛んで行った。手から。
『……うん、手から出たな』
『でもそもそもなんで手から出てるんだぉ? VRモード的に考えて、手以外から出ても良いはずだぉ』
『ん、じゃあ手を構えていたからか? じゃあ足を構えてみてくれトリアちゃん』
「え、あ、足を構える???」
さすがに無茶ぶりが過ぎたか。じゃあ一旦オートモードを解除して、っと……
「……足の裏から出たらブーツに穴ぁ開くかもしれないか。じゃあこう!」
『膝蹴りだぉね』
「このタイミングで膝から魔法を発動したら、サンダーキックとかにならんか?」
『な、なるほど!』
『なったらかっこいいぉね』
「というわけでバトンタッチ!」
オートモードに切り替え直して、と。
『じゃあタイミングを合わせるから……いつでもいいぞー』
「う、うん。え、えーいっ!」
膝蹴りを放つのに合わせ、サンダーを発動――おお! 膝からバリッとでででであばばばっ。
……魔法は膝から出たけど、膝から手に当たって痺れて頭の方、つまり俺まで突き抜けて行った。……し、痺れたぁ。痛くはなかったけど……!
『……あ、トリアちゃんなんかごめんね。実験は成功はしたけど』
「い、え、だいじょうぶ、です」
まだ痺れた感じのトリアちゃん。というかダメージもあるんだなぁこのVRモード……
『あ。でもトリア氏。よく考えたら手から魔法出てたらグローブとかに穴ぁ空くぉ? それがないってことは実は数センチくらい離れたところから出てるんじゃないかぉ?』
『……そう言われてみれば、そうなのかも?』
手甲装備を見たけど、穴が空いていたりはしない。ゲーム的に考えて、そりゃ一々装備に穴開けてるようじゃ問題だもんな。
……じゃあ足から撃ってもブーツは無事ってコトかな?
そもそも足から出せるか……って、膝から出せて足から出せない道理はないな。
『失敗したらペンペン氏に直してもらえばいいぉ! ぶっつけ本番で試すよりいいぉ!』
『それはそう。よーし、やってみるぞトリアちゃん!』
「う、うん、精霊様っ」
そして俺達は新必殺技、サンダーキックを手に入れた。
エンチャントサンダーよりちょっとダメージありそう!
『……次の段階だぉ! 頭突きでもいけないかぉ?』
『スパルタだなぁ……やるぞトリアちゃん!』
「うんっ!……じゃなかった、はい!」
ついでにサンダー頭突きも手に入れた! 尚、ミスると俺が痺れる自爆技である。




