表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人育成ゲーム ~生贄の少女たち~  作者: 鬼影スパナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/104

第25話


 肉。肉。肉。

 俺達の目の前にあるテーブルには、分厚いステーキが山に積まれていた。


「うっわ、VRで見ると壮観だなぁ……ごくり」

「オイオイオイ、肉の脂とソースの暴力的な匂い……ヨダレ出てきたぉ。これリアルどうなってんだぉ? べちょべちょになってる可能性」

「こまけぇこたぁいいんだよ! いただきまーっす!!」


 切って食べるのがマナーとは知りつつも、ナイフで切るのも省き、ステーキ一枚をフォークでずぶっと突き刺してガブッと食らいつく。

 じゅわっ!

 柔らかさに加え、ソースに絡んだ肉汁が口の中に広がった。芳醇で香ばしいタマネギの香りに、肉の味が口いっぱいに広がった。しょっぱい。少し甘い。ちょびっと辛い。そして脂のつるんとした食感、ねっとりとした風味。合成肉にはない複雑すぎる味わいに、舌がビックリする。


「……美味(うみゃ)……ぐ、はぐ……」

「がっ……ぶ……ぉ!」


 というか噛み切れないでもぐもぐしてるだけでも幸せなんだが!?

 ってか柔らかいのに噛み切れない! (スジ)? そうか、これが筋か!! 形成肉だとわざわざ作らないもんなぁ筋!! これぞ高級品の天然肉ゥ!!


「ぷはっ、だ、ダメだ! 噛み切れない! おい、ナイフで小さく切ったほうが良い奴だコレ! 単純に丈夫で食べられない!」

「んぐぉ! んぐぉ!……ぶちぃ!! もぐっもぐっ! ごくん! そんな勿体ないことできねぇぉ!! ボクはこれをまるかじり! するぉ!」

「うわぁ噛み切った。え、どうやったの?」

「歯を横にギリギリして引っ張るんだぉ。トリアならきっとできるぉ!」


 アルトはワイルドに噛んだ肉を首とフォークでぐいぐいーっと引っ張っている。

 改めて自分が放した肉を見る。確かに肉には噛み跡で少し穴が開いている。小さい穴だ。だが穴、つまりこれを何個も繋げれば、理論上は切れる。

 ……いけるか……? いや、いく!!


「はぐっ!!……んんぎぎぎ、ん、ん、ん!」


 ぶち、ぶち、と歯が筋を少しずつ噛み裂いていく。ガジガジと何度か噛んで、引っ張って、そうするとある一点を越えた時点でぶちぃ! と肉がちぎれて口の中に納まった。


「……!!! んぐ、もぐっ! ごくんっ……うぉぉ、喉、喉、今、俺、肉を飲み込んだぞっ! 喉に微妙に引っかかるこの感じ、え、すげぇ、肉だ! 俺今肉を! 俺今肉を!! 勝った感すげぇえええー!!」


 こんなの今までの人生で食べたことがない。脳にドーパミンがどばどばと溢れるのを感じる。


「フッ、トリアちゃん目ぇキラッキラだぉ。そう、それが肉! これこそが肉なんだぉ!!」

「お前、一足先に飲み込んだだけで先輩面すんなよ!」

「残念でしたぉー、ボク昔天然肉食べたことありますぉー! これの半分の半分くらいのぺらっぺらな、せいぜい厚紙みたいなヤツだったけどぉ!」

「マジかぁー。先輩だったかぁー、肉先輩!」


 ラーメンに入ったチャーシューだったらしい。

 あれを天然肉でとか、なんと贅沢な。


「あー、顎が疲れるぅ。そういえばこれって何のお肉なんだ?」

「さぁ? とにかく肉、肉いっぱい山盛りでって言ったら出てきたヤツだぉね」

「聞いた方が早いな。すみませーん。これって何の肉なんですかー?」


 ウェイトレスのNPCに尋ねると、どうやらリザードマンの肉らしい。

 ちょうど先ほど、大量の入荷があったとか。


「……あいつらこんなに美味かったのかぉ。また狩るぉ」

「賛成。いっぱい狩ろう。そういや知ってるか? ペンペンって料理もできるんだぞ」

「マジかぉ。絶対作ってもらうぉ」

「……なぁ、リザードマン以外も美味しい可能性、あるよな? こういう物語だとオークが美味いとか定番だろ。オークは先日狩ったから間違いなく存在する!」

「! 確かにだぉ!! じゃあ次はオークだぉ!!」


 2枚目の肉に手を付ける。無限に食べられる気がした。







「ちーっす、装備できたっすよー!……あ、おふたりともこれからご飯っすか?」

「お、おぉ……ペンペン。いやその、腹がね、いっぱいでね?」

「だぉ……ま、まだ、まだ食えるぉぉ……食うんだぉぉ……」


 気がしただけだった。

 胃袋が満腹サプリを飲んだ後のようにパンパンで、もう入らないと身体が肉を否定する。こんなに美味しい肉なのに、口が、喉が、拒絶する。おにく冷めちゃったペコ……


 3枚くらいはペロリ、4枚目はじっくり、5枚目はナイフで切って小さくしてから食べて、6枚目からはツンツンとつつき始めて、今に至る。

 ……喉から肉が逆流してきそうだ。

 えーっと、あと何枚だ? 9枚ある? まじかぁ。アルトの方も7枚かぁ。


「あれ、もしかしてフリーズしてるんすか? 手が止まってるっすよ?」

「ぐぉっ! 煽られたぉ! うぉおおおーーー!! ボクはまだやれるぉ! モンスターペアレンツの集団襲来に比べたらなんてことねぇお! 根性ぉおお!!!」

「あー、ペンペン、俺の分食べる?」

「いいんすか? んじゃいただくっす」


 とペンペンが席につく。優雅に白いナプキンを首に巻いて、ナイフとフォークを構えペロリと舌なめずり。

 ぐさ、ばくっ! ぐさ、ばくっ! ぐさ、ばくっ!!


 ナイフとフォークでそれぞれ1枚ずつ肉を刺し、大きな一口で頬張り飲み込む。うぉすげぇ。肉がどんどん減っていく。


「ごちそうさまっす!……さすがに満腹っすね!」

「おぉー。助かったよペンペン。いや、気持ち的には食べたかったんだが身体が拒絶しちゃってね……」

『!? 申し訳ありません精霊様! トリアがふがいないばかりに!』

「あ、トリアちゃんが悪いって意味じゃなくてね。後先考えず注文した俺が悪いだけだからね……」


 というか、頭の中に直接声が。こんな感じなのかぁ。


「……うぅぅ」

「そろそろ諦めた方が良いんじゃないか、アルト?」

「ぷぇぇぇ……おにくたべるんだぉぉ……」


 泣いた。突っ伏して泣いた。男泣きである。


「気持ちは分かるけど、泣くなよ。お肉食べきれなかったからって……」

「だって……だっておぉ……!!」

「あ、食べきれなかったらストレージに入れられるっすよ」

「「!?」」


 その手があったか!!!!!!


 アルトは早速食べかけの肉をストレージに仕舞った。あ、こら皿はちゃんと返せよ。あと顔が脂でべっちゃべちゃだぞ拭けって……あ、俺もか。フキフキ。



 ……

 いやうん、今更だけど、ホントこれどうなってんだ? 満腹だぞ俺……味覚再現どころじゃねーな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
> おにく冷めちゃったペコ…… おいばかやめろ
その世界のおにぎりいくらなんですかね。 実は高級品扱いだったりするんじゃありませんか。 サプリメント的な栄養補助剤や、、合成食品みたいなものが主食な世界観で、ちゃんとした食事は安くても何千とするやつみ…
ふんわり現代じゃない感は有ったけどディストピア?かー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ