第24話
「じゃ、身体洗ってくるぉ」
「いてらー」
と、アルトを見送った。尚、宿にはちゃっかりアルトのシャワー使用料を支払った。当然だね。じゃないと連れ込み放題になっちゃうもんね。
個室にシャワー付きで結構いいお宿なのよここ。このゲーム、そういうとこフレーバーでしっかりしてる。
……
ちょっとまて。
今、俺、宿の固いベッドに座って待ってるんだけど。女の子がシャワーを浴びてるのを。
まぁなんかすごい勢いで洗ってるのか、どたんごたんばたんと激しめの音がしてるけど。
いや落ち着け。アルトちゃん美少女可愛いけど中身は同僚。心を静めろ、ビークール、ビークール。
そもそもそういう目的のために連れ込んだワケじゃないし。
……アイテム整理でもするか。
と、しばらくインベントリのアイテムを整理していたら、シャワーを浴び終えたアルトが出てきた。
……うわぁ、髪つやっつや加減が増してる。
「ちくしょう! お風呂シーンカットなんてあんまりだぉ!」
「え?」
「ん? まぁいいぉ、次はトリアちゃんが入ってくるといいぉ」
「あ、うん」
と、今度は俺の番になった。
……はっ!? ちょっとまて、今俺はトリアちゃん! このままシャワー浴びてもいいのか!?
ぬ、脱いだらその、裸になっちゃうんだぞ!?
……でもシャワーは浴びておきたいよなぁ。リザードマン狩って汗もかいたし。ね? うん。よし、い、いくぞ!
と、服を脱ごうと手をかけた瞬間、視界がホワイトアウトした。
あ、なんかさっぱりしてるー。
これは間違いなく体を洗って身体を拭いてスッキリした所。くんくん、腋も臭くない。くんくん。はぁ。
シャワールームから出ると、アルトちゃんがベッドの上に座って待っていた。
「ちくしょう! お風呂シーンカットとかあんまりだ!!」
「ぉ?」
「ん? あれ?」
『倫理フィルター』、あるいは『チャイルドセーフ』。その言葉を思い出すのに、さほど時間はかからなかった。
「ちょっとまって? 同僚もしかして俺、結構シャワー長く入ってた?」
「5分くらいだぉ。バタバタして慌ただしい感じだったぉ」
「体感5秒だったんだが」
「むしろ意識をスキップさせられたぉ?」
だよねぇ。絶対5分とかかかってないもん。服を脱ぐまでの葛藤含めても30秒、せいぜい1分だ。
「まぁ、電脳接続してるわけでもないのにニオイまで感じるVRとか、どういう技術力なんだぉって考えたら……意識のスキップくらい今更かぉ」
「ほんとそれ。というか……俺、携帯端末でそのままなんだけど?」
「だぉね。HMDすら付けないでVRかぉ……いや、うん。慌ててて同僚がそういうの無いのを忘れて早く来いっていっちまったぉ?」
「えー、エンジニアとして認めたくなーい……技術力ぅ、で説明がつくんですかねぇ?」
携帯端末だけで、今のこの状況を? 無理無理。物理的に無理、な、はず。でも実際起きてる。
夢かコレは? とほほをつねる。……あんまり痛くないけど、そういやこれゲーム内だったわ。
「いやまて、感触再現すごすぎだろ。ちゃんとほっぺた触ってる感覚あるぞ」
「あ。そういや、自分の足で歩くなんて久しぶり過ぎるぉ」
「それは出不精すぎない? あ、いや、そういや接客係だもんな。すまん」
「いーぉ、気にすんな。今のはボクが悪かったぉ」
過酷な仕事だもんな。
と、それはそうと。嗅覚に続いて触覚まである。視覚と聴覚は言う間でもなく……これもしかして味覚も?
ちょっとギルドの食堂行きたくなってきたな。
と、くいっと小さく服を引っ張られた。
「ぉっぉ。ねぇ、トリアちゃん?」
「ん? どうしたアルト」
「……ちょっとおっぱいさわっていい?」
「!? お、お前! 何言ってんだ!」
「ち、ちがうぉ! いやらしい意味ではないぉ! その、セーフティがどのくらいのレベルか測るため、仕方なくだぉ!」
「あ。そういう? おっけ、分かった。触っていいぞ」
「ちょ、ドキドキしてきたぉ! ドキドキしてきたぉ! きゃー!」
と、俺は胸を張って差し出す――ペタン、とアルトの手が1cmくらい離れたところ、何もない透明な壁を触った。
「ま、まな板にもほどがあるぉ。まるで壁だぉ!」
「まさに壁なんだよなぁ。これが倫理フィルターの壁かぁ」
「ぐぬぬ。自分のおっぱいは――がっ! ダメ!! 自分のですらアウトかぉ!? こんなに板なのにかぉ!?」
アルトは自分の胸を揉もうとしてガチンガチンと見えない壁に阻まれていた。
おそるべし、倫理フィルター……あ。
「なぁアルト。俺、ひとつ気付いたんだけど」
「なんだぉ?」
「レベル上げたら、フィルター解除の項目出てくるんじゃね?」
そう。このVR(のような何か)機能だが、これはLv30で解放されたての機能なのだ。
であれば、Lvいくつになるかは分からないが、今後この倫理フィルターも解除されたえっちな世界も解禁される可能性だって、ある!!
「それだぉ!!!! さすがトリア、天才かぉ!」
「あ、でもそういうの解禁してもお前とはしないからな。絶対」
「仕事中に変な感じになるのは勘弁だから、当然だぉね。あれは気まずいからぉ」
その言い方だと経験あるように聞こえるぞ同僚。
「……そういやペンペンが色街に売られるところだった、って言ってたな?」
「……!! ってことは、あるんだぉね!? 色街が!」
「つまりそこでなら……あるいは!」
「ヤッてヤれないことはねーぉ!!……あ、でもトリア。我々、女の子だぉ。ここの色街って女の子が行っても遊べるもんなのかぉ? リアルならそういうお店もあるけどぉ」
それは要調査だなぁ。
「色街がどこにあるかも知らないし、ペンペンに……いや、ペンペンに金貸してる商人に聞いてみるか」
「だぉー! ペンペンに案内してもらうぉ! 装備、そろそろできたかぉね?」
「わからんけど、とりあえずペンペンと合流だな。……ついでにギルドの食堂で飯食べよう」
「飯! 肉食いてぇぉ肉! ハッ!? もしかして味覚も再現されてんのかぉ? でも味覚キャリブレーションもしてねぇぉ?……データベースから勝手に抜かれたのかぉ?」
「検証だ検証! セキュリティ問題は後で考える。腹ぁはち切れるほど食うぞ!」
「了解だぉ!! 検証万歳!」
俺達はダッシュでギルドへと向かった。




