第16話
ゴブリン・コボルト退治。そういえば同僚もゴブリン狩りをしていたと言っていたな。
オートモードで行ったらしい。
というか地味に今まで遭遇したモンスターが亀と通りすがりに蹴り殺されたスライムのみ。二足歩行のヤツは初である。(岩山に足をかけて立ち上がってる大亀は除く)
いやぁ楽しみだね。トリアちゃんの格闘術がどれくらい通用するか……
というわけで草原にて第一ゴブリン発見! こちらを見て逃げ出した!
……あれー?
緑色肌タイプのゴブリンだが、なんでだ。こちらはまだ何もしていないというのに。
遠距離攻撃とかないし、追いかけるか。と、ダッシュ移動するとあっという間に追いついた。追い越した。振り向くとゴブリンが恐怖に顔を歪めているのが分かった。
「……なんだよ、こっちが悪者みたいじゃん!? いやまぁ、平和に暮らしてるゴブリンに対してカチコミ仕掛けてるから確かにこっちが悪いっちゃ悪いんだけどさぁ!?」
怯えて腰を抜かすゴブリン。ちなみに腰に布を巻いているが、その中身はつるんつるんだった。モザイクが必要じゃなくてよかった、需要ないし。
生殖器がなくてどうやって生まれてるんだろうか、という疑問はあるが……まぁゲームだしそういうもんだろう。むしろ表示を省略してるだけかな。ゲームだし。
というわけで少し可哀そうにも思ったけどトリアちゃんのキック! ボッ。ゴブリンは消し飛んだ! 南無。
ゴブリンを蹴り飛ばしたあとは、びちゃあと地面に血だけが巻き散らされていた。
……一撃かぁ。まぁ子亀だって殺せるLv21のトリアちゃんだ。そこから足にSP全振りしたら攻撃力的にそうもなろう。というか今見たら筋力が352になっていた。3桁だぞ3桁。初期値の30倍以上だ。格闘スキルは7まで育っている。
そりゃあこうもなるな! なるって! ゴブリンって言えば初期に倒す魔物の代表格だもん。やっぱり子亀たちはボーナスエネミーだったんだろう。運が良かったなぁ。
というかアイテムドロップないのかなぁ。ま、ゴブリン肉とかあっても食べたくないし良いんだけど……
ちなみに討伐部位とかの回収をしなくても討伐カウントされるようで、冒険者ギルドカードの依頼データにゴブリン討伐数が+1されていた。便利だなーギルドカード。
で、この草原にはコボルトも出るらしいので、そっちも狩っていこう。
コボルトはゲームによっては可愛らしい犬になるわけだが……と、見つけた。毛むくじゃらなのでゴブリンではない、コボルトだ。……洗ってないやさぐれ犬が二足歩行してる感じ!! よし、蹴り飛ばせー!!
ダッシュで近づいて、ハッとしたコボルトをガツンと蹴り飛ばす。
ひき逃げする感覚で、コボルトはやはりはじけ飛んだ。あ、当たり所が良かったのか下半身が残ってるね……うん、断面がモザイク。使い物になるかどうか分からないけど、とりあえずストレージに回収しておこうかなぁ。もしかしたらお金になるかもしれないし……
あ。そういえばまだお金持ってないんだった。宿とかも取れないじゃん。
この討伐依頼でお金稼いで宿代くらいは稼がないとだね!! がんばるぞー、えいえい、おー!
* * *
エルフの受付嬢は、その日精霊憑きの受付を行った。
精霊憑きは取り扱いに注意しなければならない。そのため、ベテランが対応することが多い。
まさかいきなり2人セットで精霊憑きがやってくるとは思わなかったが……
しかもそれぞれで異なる依頼を受けていったし……
と、夕方になると討伐依頼を受けた方の精霊憑きが帰ってきた。
血しぶきを浴びまくって洗っていない姿に、嫌な予感がする。
「というわけでキリよく100匹ずつ狩ってきました!」
「……わぁ、お疲れ様です。えーっと、あ、ギルドカード確認しますねー?」
「はーい」
虚空から取り出したギルドカードを渡される。精霊憑きのギルドカードは特別製で、依頼に関わる討伐記録が裏面に記載されるのだ。どういう原理かは分からないが、そうなっている。このため、討伐証明部位の提出が必要ない。
そして、その討伐部位提出の必要がない点がこれほどうれしい物だとは思わなかった。
だって本当に100匹分ずつ狩ってきていたのだ。あわせて200匹。それだけのコボルトの尻尾とゴブリンの鼻があったら焼却処分するのにお金がかかる程だし、カウンターが埋まる。
「……はい、依頼達成40回分を確認しました。えーっと、Eランクに昇格ですね」
「お、やったー」
カウンターに報酬の銀貨5枚を置くと、チャリーンという金属を叩いたような音と共にお金が消失した。
……精霊憑きは、見えない場所にお金を仕舞うらしい。ギルドカードもそうだが。
「あ、ついでに何匹か下半身残ってたんでもってきたんですけど、買取ってできます?」
「申し訳ありません、コボルトとゴブリンの買取は行ってません」
「残念。それじゃコレはただのゴミかー」
「! 捨てるなら草原でお願いしますね!? ここで捨てないでくださいね!」
「……はーい!」
はるか以前、別の場所での話だが。そう言った途端にギルド内が『買い取りできない死骸』で埋め尽くされた事例があったらしい。焼却炉でも燃やし切れず、放置された死骸による腐敗臭で阿鼻叫喚になったとか。
まったくもって精霊憑きとは度し難い連中である。
「ところで、その、身体は洗った方が良いですよ」
「あ。これエフェクトだけじゃなくてちゃんと汚れてるんだ……わかりましたー。えーっと、どこで洗えます?」
「近くに井戸もありますし、おすすめの宿も教えますので」
「わーい、ありがとうございます」
臭いが気にならないのだろうか。いやまぁ、慣れてしまえば気にならないのだろうけど。
「ただいまっすー!」
そう言って、もう一人の精霊憑きも戻ってきた。こちらは返り血などは浴びていないようだ。
手は草の汁で緑色に染まっていたが。
「お、トリア氏もちょうど終わったトコだったっすか!」
「ペンペンお疲れー。どうだった?」
「きちんと依頼達成分集めてきたっすよー。あ、受付さん、はいこれ」
そう言って薬草を5束、カウンターに置く精霊憑き。
こちらはもしかしてマトモなのでは? と思いつつ、5回分の依頼達成の手続きをして報酬を渡す。チャリーンと音が鳴り銀貨が消えた。
「おー。結構な収入! 今週の支払い目標額ゲットっす!」
「やったなペンペン。ところで俺は今夜まだ時間あるし別の依頼受けようと思ってるんだけど、ペンペンはどうする?」
「じゃあ私も次の依頼受けようかな? 受付嬢さん、よろしくお願いするっす! 採取系で!」
「あ、こっちは討伐系で」
「え? 今からですか?」
もう夕方で、日が暮れてきているのに?
どうやら精霊憑きにとって、夜は休む時間ではないらしい。
「そっか、夜は依頼受けられないのか……」
「あー。じゃあウチは適当なトコでホーム出してスキル上げでもやっとこうかなぁ」
「そうだペンペン、ゴブリンとコボルトの下半身っている? 買取できないゴミだから捨てる予定なんだけど、そっちで使い道あるならあげるよ」
「お! 生産系スキルで適当な素材で適当な生成して適当に失敗しまくるのに使えると思うんで貰うっす!」
「……それ、何か意味があるの? スキル上げ?」
「失敗でできる『有機廃棄物』が肥料の素材になるんすよ! 畑仕事が捗るっす!」
……受け渡しは外でやってくださいね? と、受付嬢のエルフは不安げに二人の精霊憑きを見つめることしかできなかった。




