第15話
ペンペンの案内で人里を目指すことになった。
「んじゃ、ちょっとホーム仕舞うっすねー」
「え?」
二人とも外に出てから、ペンペンが何やら操作をすると……柵に囲まれていた拠点が、しゅばっと消えた。
そこには拠点のあった痕跡はない。先ほどまで無かった木まで生えていた。
いや、一点だけ。赤いピンのような、いわゆるマップの現在地を示すような印が上下に揺れていた。
「え、なにこれどうなってんの?」
「ん? ホームを格納しただけっすよ?」
ペンペンに聞いても、どうやらペンペンにとってはこれが普通の事らしい。
マジどうなってんのか分からんが、詳しいことは聞いても分からないに違いない。多分SPの『ホーム』の機能だからそういうもんってコトだろう。
「あ。大丈夫っす。戻ってくる分には場所分かるっすよ。マップにピン刺さってるし」
「ああ、あれ……マップにも表示されてる目印なんだね」
「そんじゃ、町にれっつごーっす! しゅっぱーつ!」
えいえいおー! と勢いよく手を挙げるペンペン。……何がとは言わないが、ぶるんぶるんである。本人にはボクセルに見えてるんだろうけどなぁ、うーん。こっちもボクセル表示にしておくべきだろうか……しないでいいか。
「……」
「ん?」
「……あ、ど、もです、えへ」
ペンペンがペコリと頭を下げる。どうやらまたペンペンちゃんに替わったようだ。
「えーっと、その。では、ご案内します、ね? 走るので、つっ、ついてきてくだしぃ……あぅ」
「あ、うん」
噛んだペンペンちゃんはそのまま先頭を走って町へと向かう。
途中、スライムが数匹出たが、それはペンペンちゃんが軽く蹴り飛ばしつつ何かを拾って進んだ。
そしてガンガン走ること1時間。ついに人里に――町に着いた。
「からの、町に到着っすー!!」
町に着くや否や、ペンペンが両手を上げて元気にそう言った。
「お、スライムゼリー入手してるっすね。良き良き!」
「道中はペンペンちゃん任せなんだなぁ」
「え? ゲームってそういうモンっすよね。いやー、時間経過がなければ家と町を往復しまくって素材集めたいとこっすけどねー」
なんというか、こう、俺達と違うゲームしてるよなぁペンペン。
それに恐らく何度か行き来はしてるのだろうな、離席から戻ってくるタイミングも完璧だったし。
「ちなみに何て名前の町なん? 初めて人里に来たわ」
「ツードンって町っすね。マップにそう書いてあるっす」
あ、町の名前が分かったからかマップにツードンって追加されたわ。
ちなみにペンペンがホームにしている場所は『魔の森・浅層』らしい。
「それでペンペン。ツードンの町に冒険者ギルドはどこにあるんだ?」
「さぁ? ペンペンちゃんは知ってるかな。どっち? あっち? あっちっすよ!」
そう言って今度はペンペンが案内してくれた。ペンペンちゃんの方に聞いているっぽいけど。
冒険者ギルドは木造の、西部劇に出てきそうな建物だった。
何の意味があるのか分からない両開きドアをキィと潜ると、中は酒場も併設されているのか明るいうちから酒盛りしている人達で賑わっていた。何人かが俺達を見て、そして目を戻した。
なんだよ、冒険者ギルドって言ったら「オイオイここはお嬢ちゃん達がくる場所じゃないぜ」ってイベントがあるもんじゃないの? あ、普通に依頼者の可能性もあるからまだ声がかからないだけかな?
「んじゃペンペン、冒険者登録するかな! で、どこに行けばいいんだ?」
「はっはっは、私も初めて来たんで分からないっすよトリア氏! でもとりあえずカウンターに聞けばいいんじゃないっすかね? どうなんすか?」
「あー、はい。ここで合ってますよー、どうぞー」
カウンターにいた受付の女性がニコッとほほ笑んだ。……耳が長い! エルフだコレ!
エルフも居るんだぁ。やっぱファンタジーよなー。
「えーと、どうも。精霊憑きの方ですねー」
「冒険者登録しにきました!」
「私も!」
「ではこちらをどうぞ。……はい。手続き完了です。えーっと、こちらが冒険者カードになります、無くさないように」
わーい、とカードを受け取ると、ぽしゅんと消えた。え、あれ。早速無くしちゃった!?
「あ、必要な時に出そうとすれば出るそうですよ。あとはめにゅーから表示で確認できます」
「お、ホント?」
携帯端末側に表示されるメニューから、ギルドカードの項目が追加されていた。
タップすればトリアちゃんの顔写真付きのFランクカードが表示された。
「おー、Fランク冒険者だ。これで依頼とか受けれるのかぁ」
「こっちもFっす! さーて、良い感じにチュートリアルになりそうな依頼あるっすかね?」
「でしたら、こちらのゴブリン・コボルト退治などいかがでしょう」
ド定番。だがそれが良い。それでいい。
「よし、受けるか!」
「うーん、素材的にあんまり美味しくないっすね……」
おっとぉ。
早速ペンペンと行動方針の不一致。
「私はこっちの薬草採集がいいっす! 多めにとって自分の分にもするっす!」
「ペンペン。レベル上げするならモンスター討伐しないとじゃないか?」
「え? トリア氏。ベースレベルって生産スキル鍛えてても上がるっすよね?」
「……マジ? え、ペンペンいまレベルいくつ?」
「15っすね。戦闘はスライムくらいしか。累計100匹も狩ってないっすよ。トリアちゃんは?」
「21。亀殴りまくってた」
15かぁ、子亀ガンガン殴って通り過ぎたレベルだわ。
「キャラによるんすかねぇ。ほら、トリアちゃんは戦闘職、ウチは生産職っぽいし」
「うーん、隠しパラメータにジョブでもあるのかな」
「Wikiにそういうの書いてないんすよねぇー」
相変わらず編集作業が迷走しているもんなぁ。というか、ウチとペンペンとで既にほぼ別ゲーな疑惑もある。
Wikiの作成が迷走しまくってるのってこれも原因なんじゃなかろうか。
「ま、そんならここで別れるか。討伐依頼やりたいし」
「そっすね。フレチャもあるし、なんかあったら気軽に声かけてくださいっす! あ、受付嬢さん薬草採集いくんで手続きよろー」
「え!? あ、は、はい。手続きしますねー」
かくして冒険者ギルドで冒険者登録を行った俺達は、それぞれで依頼を受けてみることにした。
……あ、結局冒険者ギルドで絡まれるイベントなかったなぁ。残念。




