表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人育成ゲーム ~生贄の少女たち~  作者: 鬼影スパナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/104

第12話



 大亀から逃げ、山を進んで森の中を進むトリアが、妙な場所を見つけたようだ。


『精霊様、ここは一体……?』

「わー? 人里……ではないよなぁ? 家ではあるみたいだけど」


 確認すると、そこは森の中の開けた空間――というより、個人宅だった。

 中世ヨーロッパっぽい可愛らしい小さな家と、庭が柵に囲われている。

 庭は広く、家庭菜園をしているようだ。少しコミカルなカカシも立っている。まるで箱庭ゲーだ。

 可愛く言えば『森の中のおうち』である。魔女でも住んでいるのだろうか?


 あからさまに怪しく場違いなその場所。柵があるが越えてみようか、と思ったが、見えない壁があるのかゴンと手がぶつかった。

 ……まぁ柵だからね。越えられなくても仕方ないね。門が普通に見えてるし、そっちに回ってみる。

 誰かいるなら道を聞けるかな、と。


「すみませーん」


 声をかけてみるが返事がない。

 最悪この門の向いている方向に歩くしかないか? 明らかに道はなく、森しか広がってないけど。


「すみませーん?」

「あ、はーい」


 諦めずにもう一度声をかけたら返事があった。

 ガチャリと家から出てきたのは、可愛らしい女の子だった。農家らしいデニムのオーバーオール、麦藁帽に素朴な茶髪の三つ編みのそばかす娘。あと胸も牛かと思うくらいあった。

 そして、その後頭部には黄色い光輪(ハイロゥ)が浮いていた。


「おお、もしかして……プレイヤーか!?」

「そういうあなたも!!」


 どうやら『カイト・ア・ルイセ』プレイヤーのようだ。あ、あちらも音声入力のチャットだろうか?


「あ、ウチのホームまだ始めたばかりだけど可愛くないっすか? よければそちらのホームも見せてくださいっす!」

「ホーム?」


 首をかしげる。ホームってなんだ? 家? いやまぁ見たところ家なんだけど。


「ごめん、まだ持ってないと思う」

「え? 『カイト・ア・ルイセ』って箱庭スローライフゲームっすよね? チュートリアルの最初じゃないっすか。終わらせてないんすか?」

「……ウチのチュートリアルと多分違う」

「えええ??」


 はて? どうなってるんだ? と首をかしげる農家娘。


「このボクセルな感じ、間違いなく箱庭スローライフだと思うんすけど」

「ボクセル? え、美麗3Dアクションでしょ?」

「ははは。まぁピクセルリマスターくらいには美麗っすよね」


 うん? なにか話が通じてない気がする。というか表示が違う……?

 表示モードでも切り替えられるのかな、とコンフィグを探す――お、あった。切り替え。


「おー。本当だ、コンフィグ弄ったらボクセルな感じになった。すげー」

「え? うぇいうぇい。じゃあこっちも美麗3Dになるんすか? どれどれ……おおぉぉう、ちょっとまって。なにこの巨乳。ペンちゃん牛獣人か何かだったの?」

「ペンちゃん?」

「あ、こちらのキャラ名です。ペンペンっす」

「あ、ウチはトリアです。よろしく」


 ペンペンって。ペンギンが好きなのかなぁって名前だな。とりあえず表示を見慣れた3Dモードに戻しておく。


「あの、よかったら上がってきます? 内装まだ全然で恥ずかしいんすけど」

「じゃあお言葉に甘えて」


 俺はペンペンのお呼ばれでホームに入れてもらった。

 ……うん、ウチとゲームジャンルがちがーう。まぁ見たところ間違いなく生産職(一次産業)だし、そういうもんなんだろう。

 生産職もいいなぁ。こういう自然に囲まれたスローライフ、いいかも。


「あ、よかったらお近づきの印に子亀の死骸いります?」

「子亀? っすか?」

「何匹も狩ったんで、素材剥ぎ取るなり肉食べるなり?」

「おお、モンスター素材っすね! 子亀ってのもお肉もまだ入手してなかったヤツ! いただけるなら喜んで!」


 チャットからも嬉しそうな感じが伝わってきた。

 やっぱり人の家に上がり込む時は手土産って必須だねー。


  * * *


「へー。トリアさんは『大亀の生贄』ってシナリオだったんですね」

「ペンペンさんは『巨額の借金』ってシナリオですか」


 情報交換したところ、ペンペンは借金返済のためスローライフとは名ばかりの牧場ゲーみたいなことをしているらしい。

 怖い人に脅されつつもなんか猶予は貰えたらしく、借金が返せなければ身体で払え、らしいが。

 ……まぁその身体なら確かに払えそうだよねぇ、うん。


 チュートリアルで『安全な拠点を作ろう』からのSPほぼ全額で『ホーム』を購入、今に至っているそうだ。


「スローライフなのに借金って……世知辛ぁ」

「え? 借金返済スタートはスローライフゲームではわりと基本ですよ? どうぶつシリーズの島を開拓するやつとか見たことありません?」

「……言われてみれば確かに?」


 タヌキが借金押し付けてくるので、まず働かなければいけないのだ。

 スローライフとはお金あっての話……!


「にしても、なんでそんなシナリオを」

「いやぁ、ゲームでくらいすんなり借金返せたら気持ちいいじゃないっすか?」

「あ、うん」


 現実は違うのね、と察してしまうがスルーしておく。


「借金取りの人も『なるべく待ってあげる。ちゃんとお金返してくれれば問題ないから。物品買取するよ、なんでも売ってくれていいから。あ、借金の端数はサービスしとくね頑張って』って、とても優しい感じでしたよ。多重債務だったけど一本化してくれて利子もいらないそうで」

「なるほど、ゲームらしい借金取り」

「ですよね! 現実もこうだったらいいのに。端数サービスがあったら切り上げっすよ切り上げ。けっ」


 やさぐれたモーションをするペンペン。こういうのもあるのか、と感心してしまう。

 で、ゲームスタート直後に借金取りによって森に送られて来たらしい。ここで働けと。

 一週間に一度確認に来てくれるそうだ。まだ2日目なので一度も来てないけど。


「ん? じゃあ人里ってここから近いの?」

「ええ。まだスタートでここに来てから一度も行ってないですけど。種とかも森で拾ってるし」

「よっしゃ! これで人里で冒険者登録できる!」

「ほー。冒険者登録? そう言うのもできるんすね。借金返済の足しになるかなぁ……」


 指を口に当てて「ふーむ」と考えるペンペン。

 一緒に行こうって話になるなら心強い。こちとら山の迷子ちゃんだからね……!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
精霊憑きだからうっすら引かれてた可能性がある 借金一本化も厄ネタ押し付けられただけなんだよねひどくない?
日刊ハイファンタジーで49位でした! アニメ化している異世界のんびり農家が50位ですから素晴らしい!
面白いのでこの調子で続くと嬉しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ