第101話
「これはこれは、大変麗しいお嬢さん方だ。精霊ではなく女神かと思ったよ」
白く豪奢な軍服を着たテンプレのような金髪王子様が、俺達を見るなり歯をキラリと光らせそう言った。
なんか背筋がぞわっとした。なんだこれは……悪寒? 何かされたか? いや、単に寒気がしただけだ。
王子の年齢は見たところ20歳くらい。そんな成人が、トリアちゃんに対して麗しいお嬢さんと……おぅふ。幼女性愛者かな?
「……ウチのトリアちゃんたちが可愛いのは確かだが、お前の視線が気に食わない」
「あー、これ帰っていいかぉ? なんかトリハダたったぉ。こっちみんなぉ」
「まぁまぁ2人とも。せっかく来たんだから話くらいは聞いてあげるっすよ」
ちっ、ペンペンがそういうなら話くらいは聞いてやろうじゃねぇか。
「……す、すまない。気分を損ねてしまったか。魅力的な女性を見たら口説くのが貴族の挨拶でな」
「それはそれでアレだが。トリアちゃん全然まだ子供だと思うんだが?」
なにせ酒を飲もうとして止められる外見である。
「……それもすまないが気のせいだ。私のパッシブスキルで『障害物を挟まず私の顔が向いている方向にいる者は、私に見られているように感じる』という効果のスキルがあるのだ」
「ん、そうなのか?……なんというか、役者向けだな。あるいは、政治家向け? 演説とかにすごい効果ありそうだな」
「御慧眼。まさしくその通りだ。王位継承権がなければ役者になりたいと思っているくらいである」
ふむふむ。なかなかに話せる奴じゃないか。
「ぉー。……じゃあ誰を口説いたんだぉ?」
「それはもちろん君――おっと、また全員に向かってしまうな。黒髪の君ではないぞ」
「じゃあ私っすか」
「ぺぇだな」
「ぺぇだぉね」
これは納得せざるをえない。ペンペンは色々と魅力的で魅力的が魅力的なのだ。
それで外見弄ってないってどういうことなの? という話なのである。
「ところで、依頼内容はなんだったっけ?」
「ああ。そう、それだったな。護衛を頼みたい。どうか力を貸してくれないだろうか」
「……なるほどだぉ、このスキルがあるとモンスターも寄って来放題ってことかぉ」
「……うむ。ただでさえダンジョンに潜るのは困難だというのに、このスキルが邪魔をして大変なことになるのだ」
なるほど。モンスターにも見境なく「見られている」とバレるわけだ。
「……思ったんすけど、マスク付けたらいいんじゃないっすか?」
「マスクはダメでな。我が美貌――ああ、スキル名だ。『美貌』はマスクも顔の一部と認識してしまってな。試しにバケツをかぶってみたこともあるのだが、そうしたら全周囲無差別に発動してしまったこともあった」
なるほど検証済み。
……いやマジかよそれ。もう色々通り越して不便だろうなそれ。
「役者か王族が天職だな、ホントに」
「あるいは的か囮だろう。難儀な物だよ。なくせるものならなくしてしまいたいハズレスキルさ」
「そりゃご苦労様だぉね。……で、なんでダンジョンの護衛なんだぉ?」
「ダンジョンの奥にあるらしいのだよ。このスキルを任意に封じる方法が」
お、なるほど話がつながってきたな。
「ただし、ご本人がダンジョンの奥底にまで行かないといけない。と」
「話が早くて助かる」
スキルのせいで、並の護衛では足りず、腕利きの俺達に話が来たのだろう。
ダンジョンともなれば、大勢の兵士を引き連れていくわけにもいかない。大軍は狭い通路では邪魔にしかならないだろう。
「理想はサッといってサッと帰ってくる事。少数精鋭が望ましい。そして麗しの君――ああ、ペンペン殿は、準備を担当していると聞く。十全に働いてもらえるよう、できる限りの協力を惜しまない」
「ほほう」
キラン、とペンペンの目が光った。
「じゅ、準備のためなら多少豪華に素材使っても良いっすよねぇ?」
「構わない。経費だろう」
「ひゅう! 王子様ってば話が分かるっすぅ!」
「あ、俺もミーティちゃん連れてこようかな。ポーション作りとかはむしろミーティちゃんに任せてくれ」
「何? 王都に来たのは3人だけだと聞いていたが……」
「秘密の移動手段があるのさ。ナイショだぜ?」
「そうか。詳しくは聞かない方が良いだろうな、ぷれいやあ特有の手段であろうし」
うんうん、と頷く王子様。
「って、そういやまだ王子様の名前聞いてなかったよ。何て名前なんだ?」
「おお、これはしたり。私としたことが自己紹介を忘れていた。……我が名はレオンハルト。レオンハルト・マジャーク・アウレリアである。よしなに頼む」
へえ? あ。この国、アウレリアっていうん?
初めて知ったわー。




